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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第三部

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638/917

その635 武闘大会7

2021/9/5 本日二話目の投稿です。ご注意ください。

 アリスの価値は聖加護だけではないと示した初戦から、早数時間。アリスとキッカは順調に白星を重ねていった。

 魔帝グラムスを師に付けた指導が功を奏したのか、二人の努力の結果と言えるのか、(ある)いはそのどちらもか。まぁ、両方なければアリスはまだしも、キッカがここまで残る事は出来なかっただろう。

 さて、予選も残すところ一試合ずつ。

 まずはキッカからか。

 澄ました顔で試合場にやってきたキッカ。

 俺たちの声援は届いているのだろうが、あの顔から察するに、それを気にしてる場合じゃないようだ。

 対戦相手の【バートン】はここまで無難な試合運びで堅実な勝ちをもぎ取ってきた技巧派。タイプとしてはキッカに似ている。そして魔力もまた……。

 本来であれば本戦クラスの対戦(カード)だが、これはトーナメント。そこに文句を言っても仕方ないのだ。

 バートンは白髭をたくわえる程の高齢ながら、並みの戦士より体幹は良さそうだ。


「始め!」


 最初、試合は長引くかと思った。

 バートンの魔力はキッカと拮抗していたし、火魔法しか使えないバートンだったが、それ故にキッカ以上に巧みに扱えた。光魔法との合わせ技で窮地をしのぐも試合は一進一退。


「やはり使うか」


 そんな言葉が聞こえたのは俺の隣からだった。


「え?」


 俺がリィたんに聞くと、試合場で戦局に変化が見られた。掲げられた杖、発動する魔法。


「【金剛斬】」

「ちっ、水魔法か!」


 バートンが驚くのも無理はない。

 キッカが使える魔法は光魔法と火魔法。それ以上のデータはなかったのだから。

 リィたんの口ぶりから察するに、もしかしてキッカは魔導書(グリモワール)を……?

 そんな疑問を察したのか、リィたんはラッツとハンに視線を向け俺に合図した。

 すると、彼らは少し恥ずかしそうに言った。


「俺とラッツでプレゼントしたんすよ」

「まさかリィたん殿に魔法を込めてもらうとは思いませんでしたが」


 ラッツの言葉を受け、俺はリィたんに視線を戻す。


「大した女だよキッカは」


 貴方様がそこまで仰りますか。


「目を丸くする私を前に、キッカはこう言った『龍族とのコネクションという実力を使わない手はない』とな」

「なるほど、コネクションも実力の内、か。キッカらしいね」


 こういう回答が出せるのは、オリハルコンズの中でもそう多くはないだろう。キッカ以外だと、ナタリーと……シェルフ族長の孫メアリィくらいか。

 使える手は何でも使う。非難する者もいるだろうが、それに見合う以上の結果さえあれば、俺もそれでいいと思っている。

 水魔法の【金剛斬】は文字通り珍しい斬撃タイプの魔法である。相手が火魔法の使い手ならばこれ程有効なものはない。フレイムボールだろうが、フレイムウォールだろうが全て切り裂いてくれる。


「くそっ! ぬかったわ!」


 バートンも武闘大会前からキッカの事は警戒していただろう。ただ、この奇襲は想定していなかった。そういう事だ。

 エメリーもそうだが、以前、奇襲についての授業を行ったが、キッカもしっかり取り入れているという事か。本来であれば本選で使いたかっただろうが、本選クラスの相手となれば、キッカも使わざるを得ない。

 キッカの【金剛斬】により、身体の傷が目立ってきたバートン。審判の判断次第だが、これはおそらく――、


「それまで!」


 TKOテクニカルノックアウトというやつである。

 審判がこれ以上の試合続行は危険であると判断し、キッカの勝利が確定した。

 試合終了の合図を聞いたキッカは、そのままバートンの下へ走って行った。


「どうしたんだろ?」


 ナタリーが俺に聞く。


「怪我の治療を申し出てるんだろう」

「怒られちゃうんじゃない?」

「いや、ここまで残る選手だしそれはないだろう」

「あ、ほんとだ」


 最後にはキッカはバートンの手を取り、握手を交わして終わる。

 魔法の試合は戦士の試合以上に不安要素が多い。バートンが大事に至らなかったのは、優勢に回ったキッカが上手く試合をコントロールした結果と言えるだろう。

 それに、これが予選最終戦だからこそキッカも回復を申し出たのだろう。まぁ予選が残っていればこうはならなかった。だが、この行動は結果的にオリハルコンズや聖騎士学校の名声に良い意味で影響する事だろう。ま、こんな事を考えてるから咬王改め狡王とか言われちゃうんだよな、俺も。

 さて、次はアリスか…………アリスか……アリスねぇ……。


「プロテクションッ! やぁあああああああっ!!」


 予選の最後ともなると、体術も鍛えているランクA冒険者が多い。

 だが――、


「スピードアップ!」


 あの戦車アリスは、ギアチェンジする事が可能なのだ。

 体術だけで見てもランクA戦士に引けをとらないアリスである。

 彼女は、この武闘大会魔法使い部門において台風の目と言えるだろう。


「決まったな」


 リィたんの言葉通り、プロテクションタックルは予選のアリスの代名詞となった。

 古今東西、色んな作品に出て来る聖女を思い浮かべてみるが、やはりというかなんというか、あんな聖女は初めて見ました。


「アリスちゃんって、ミックの影響一番受けてると思うのは私だけ……?」


 ナタリーの言葉は虚空に消えて欲しいと思った俺だった。

次回:「その636 武闘大会8」

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