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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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その61 大事件

「た、大変ですぅうううううううううう!!」


 ネムのヤツ。あそこまで驚かなくてもいいのに。

 まぁ、それも仕方ないのかもしれないな。

 今回俺が売りに出した商品は、冒険者ギルドでも扱っている収集品だ。

 たとえば、ここで売った【聖薬草】。冒険者ギルドでは五枚で金貨三十枚の報酬である。

 この店の価格は金貨十五枚だから、冒険者ギルドに持って行けば、金貨が倍になる。

 更に、冒険者ギルドでは何よりも代え難い【実績】というおまけ(、、、)まで付いて来る。しばらく俺の店に通う冒険者は増えるだろう。

 しかし、俺なりの予防策も当然ある。それがこの整理券である。

 店の前に並んだお客様たちが、ウチの商品を独占しないために、一人各商品一品まで。そうする事で、実績を上手く等分する事が出来る。

 これにより、不正で実績を積む者の数は抑制出来る。

 しかし、並ぶ者は絶対にいる。ただでさえ金貨が倍になるのだ。並ばない手はない。

 俺がこれをする事で何が得られるか。

 まぁ、まずは明日のギルドの動きを見てからだな。

 ギルド内のシステム上、今日出されている依頼は変更する事が出来ない。

 つまり、少なからず今日実績を積む冒険者は現れる。絶対に。

 だから、明日は金額を下げるしかないのだ。俺の店より低い値段(、、、、)に。


 ◇◆◇ 二日目 ◆◇◆


「どうでした、ミケラルドさん?」

「驚きましたよエメラさん。まさか今日は下げない(、、、、)なんてね」

「まぁ。どうしてでしょう?」

「うちの店の在庫でしょうね。そこまで長続きするはずがないと見ているのでしょう」

「う~ん……私の目がおかしくなければ、また増えてますよね? 在庫」

「ダンジョン様々ですね!」

「何だか楽しそうですね、ミケラルドさん」

「えぇ、勿論です! そもそも冒険者ギルドが市場の独占をし過ぎてますからね。こういうのはちゃんと解放してあげなくちゃいけません! 第二段階に進めば、より深く商売を楽しめますよ! あ、それもこれも美人の店番様がいらっしゃるからです!」

「まぁ、褒めても何も出ませんよ。うふふふふ」


 恥ずかしがるエメラさんを見られただけで、今日の収穫はあったようなものだ。


 ◇◆◇ 三日目 ◆◇◆


「やっぱり下がりましたね。現在は【聖薬草】五枚で金貨十枚。【聖水】が二リットル金貨五枚。これで今の価格で売っても、冒険者たちには(マイナス)にしかなりません。お金を積んで実績だけ狙う人もいるかもしれませんが、それをするのは余程の物好きでしょう」

「そしたら、ここはどうするんですの?」

「冒険者ギルドの新依頼の張り出しって、毎朝六時なんですよね」

「まぁ、ミケラルド商店の営業開始は朝九時ですよ? うふふふふ」


 流石エメラさんは聡い。既に俺の狙いに気付いたか。


「つまり、冒険者ギルドより後出しで価格を設定出来る(、、、、、、、、)んですよね?」

「その通りです、エメラさん! なので【聖薬草】五枚で金貨五枚、【聖水】が二リットル金貨二枚と銀貨五枚で売っちゃいましょう!」

「でもよろしいんですか? 売り上げがどんどん減っちゃいますけど?」

「いいんです。その売り上げは後から必ず増えますから!」


 そう、この調子でどんどん価格を下げて行けば。

 価格の崩壊が起き、冒険者ギルドは【聖薬草】などのダンジョン産の商品を扱えなくなる。


 ◇◆◇ 七日目 ◆◇◆


「遂に依頼の項目にダンジョン産のものが無くなりましたね」

「よく持った方だと思います。まぁ、これで私たちは価格を自由に設定出来るようになった訳です」

「うーん……あっ! そういう事でしたか!」

「わかりました?」

「これからミケラルドさんが価格をつり上げても、ギルドはもうこの商品を取り扱わない……!」

「流石エメラさん!」


 俺たちがまた金額を下げる場合もあるのだ。そうすればどうやってもギルドは実績のタダ売りを許容する事になってしまう。つまり、事実上現在俺の店が取り扱ってる商品を、ギルドが扱う事は無くなったという事。

 ――これ即ち、独占の横取り(、、、、、、)

 独占禁止法とかなくてこの世界は平和だと思う。


「それじゃあ、今日はどうします?」

「ギルドは困っている人に依頼されて【聖水】や【聖薬草】の募集を掛けています。当然、その人たちはギルドに金銭を支払います。それは冒険者への報酬の方が安い。何故なら、ギルドが手数料を引いてますので。調べたところ、ギルドに依頼をすれば、手数料が二割という事です。たとえば、【聖薬草】の場合、五枚で金貨三十枚だったので、冒険者ギルドが依頼主からもらう金額は金貨三十六枚。【聖水】であれば、金貨二十四枚という事になります」

「凄いですね、欲しい方の価格は変わらず、利益がこの店だけにくる」

「まぁそれも、馬鹿げたダンジョン潜入回数がなければ成り立ちませんよ」

「ふふふふ、それもそうですね♪」


 これで、ミケラルド商店の目玉商品は決まった。

【聖薬草】と【聖水】。これさえあれば、我がミケラルド商店が食いっぱぐれる事はないのだ。


「ところで、ミケラルドさん」

「はい?」

「今日もネムちゃんが頬をぷっくり膨らませながら私たちを見てますよ♪」


 冒険者ギルドからの仕返しが怖いミケラルドさんである。

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[一言] 外資のそれ
[気になる点] さすがにこの商売のやり方は敵を作るだけのように思える。世話になっているギルドに対してこのやり方は乱暴すぎる。 一支店の問題ではなく、すべてのギルドの面子をつぶすことになる。 商業ギルド…
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