表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

571/917

◆その568 闇の集会3

 ノエルの報告を受け、サブロウが笑った。


「はっはっは、冒険者ギルドもついに重い腰を上げたか」


 そしてナガレが荒い鼻息を吐く。


「ふん、手綱を握れると思ってランクSにしたのが失敗だよ」


 これに対し、エレノアと魔人が一瞬視線を交わす。

 これに気付けたのはミケラルドだけだった。


(……なるほどね)

「ノエル殿、報告に感謝します。これは非常に由々しき事態と受け止めるべきでしょう」


 エレノアの言葉にノエルが首を傾げる。


「それはどういう事でしょう?」

SSS(トリプル)になったとすれば、ミケラルドはSS(ダブル)のダンジョンに入れるようになったという事。現在、SS(ダブル)ダンジョンの報酬が何であるか判明していませんが、ミケラルドの実力であれば――」

「――なるほどのう。SS(ダブル)ダンジョンの報酬がミケラルドの実力を底上げするものだとしたら、我々の立場が危うくなる、か」


 サブロウがエレノアの先を続けるように言う。


(いや、違う。おそらくエレノアと魔人が問題視しているのは俺の【血の連鎖(ブラッドコントロール)】という能力。これを二人が知ってるとなると、スパニッシュ(ちちうえ)からその情報がもたらされている。エレノアが実は魔族四天王の【魔女ラティーファ】という線……断言こそ出来ないが濃厚だとは言える)

「……メディック殿、何か変わった事は?」

魔皇(まこう)ヒルダがミケラルドと接触したという情報はあったが、それ以降何か変わったという事は特にない」

「サブロウ殿は?」

「後進の育成以外にワシは何もしとらん」

「結構です」


 そしてエレノアが次に見たのはミケラルド(デューク)だった。


「次にミナジリ共和国についてです。デューク殿」

「はい」

「パーシバルの後に(とき)の番人となったデューク殿です。とても優秀な人材で、水龍、剣神、剣鬼たちと交戦し、生き残るだけの実力を有しています」

「ほぉ?」


 隣に座る魔人からの視線が鋭い。

 ミケラルドもそれに気づいていたが、()えてそれには反応を示さなかった。


「けっ」


 ナガレの悪態は、ミケラルドの正体を知っているからだろう。


「デューク殿には現在ミケラルド・オード・ミナジリ個人の調査をお願いしています」


 それを聞き、ミケラルド正面付近に座るシギュンの目の色が変わる。


(あの目は私怨があるな。ほんと、ミケラルドってヤツは困ったヤツだよ。あんな綺麗で性格が悪そうな人に一体何をしたのだろう)

「カンザス殿」

「地龍を使ってミケラルド商店の要――エメラを捕獲したはいいけど、あちらさんの動きが消極的な気もしますね」

「ナガレ殿はどう思われます?」

「知らないよ。そっちの坊やのが詳しいんじゃないのかい?」


 ニヤリと笑ったナガレがミケラルドを見る。


(中々のキラーパスじゃないか、糞婆め……ならこっちにも考えがあるぞ?)

「デューク殿、いかがでしょう?」

「そうですね。一番の問題はミケラルド・オード・ミナジリに転移魔法がある事。ミナジリ共和国でのミケラルドの動き、法王国でのミケラルドの動きを見るに、一つの疑問が浮かびました」

「というと?」

「実の母親が誘拐されたというのに、娘であるハーフエルフのナタリーの心が悲痛に染まっていない点です」

「ミケラルドにそれだけの信頼を置いていると?」

「いえ、攫ったエメラが本当にエメラなのか、そこに焦点を当てるべきでは?」


 この発言に、カンザスが静かな目でミケラルドを見る。


「それはどういう事だい? エメラまでの地龍の誘導は君に依頼したはずだけど?」

「それすらもミケラルドの策だったとすれば? という話です」


 ここで、ミケラルドはエメラが偽物である可能性を自ら暴露したのだ。

 カンザスがエレノアを見、それにエレノアが頷く。

 カンザスは闇魔法【闇空間】を発動し、その中からエメラに化けたミケラルドの分裂体を引きずり出したのだ。


「こ、ここは……?」


 そんな分裂体の姿を見るミケラルド。


(ここまで食事と水だけ与え、闇空間の中で生活させた事を考えると、俺が考えてた通りにはならなかったって事。だが、どうして? もしかして別の闇空間に入れたのか? なるほど、カンザスの性格から考えてそれはあり得るな。盲点だったぜ、ちきしょう)

「これが偽物だと?」


 カンザスが言うと、魔人が立ち上がった。

 そして、剣を引き抜きながら分裂体に近付いたのだ。

 魔人が剣を振り下ろそうとした瞬間、


「キエェ!」


 ミケラルドの分裂体は跳び上がり、壁に張り付いたのだ。


「カァーッ!」


 四つ足で壁を這う化け物のように。


(エメラさんの姿なのがシュールだな……)


 その鋭敏な動きに驚愕した(とき)の番人たちが驚き立ち上がる。


「何じゃこやつは!?」


 サブロウの疑問に魔人が答える。


「先の一戦でミケラルドは魔族四天王二人に対し分裂体を二体送り込んだ。もしやと思ったが、このエメラもそうだったようだな」

「ケーッケッケッケ!」


 壁を縦横無尽に駆け回る分裂体に眉を(ひそ)めるシギュン。


「なんておぞましい……」

(どの口が言ってるんだろう? でも、少し楽しくなってきた)


 そんなミケラルドの分裂体遊びも、狙いがあっての事。

 壁を駆けまわり、分裂体が跳び付くように狙ったのは――【エレノア】。

 それを庇うように立ったのが魔人だった。

 そして、魔人の一刀の下……分裂体は真っ二つに引き裂かれたのだった。


(よし!)


 そんなミケラルドの胸中を、この場にいる誰もが見抜く事は出来なかった。

次回:「◆その569 闇の集会4」


※次で集会が終わります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
[一言] なにを仕掛けたんでしょう? なにかを刃につけた? 次の対決までひみつかなー?(*´∀`)♪
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ