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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第二部

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550/917

その547 ファーラの魔力

 闇ギルドでの集会が行われるのは三日後。

 それまでの間はデューク君は必要ない。だが、出来る事はしなければならない。

(とき)の番人】の【ノエル】。彼女は既に吸血済みであるが、エレノアがノエルに付けた【失われし位階(ロストナンバー)】はそうではない。

 奴らもまた貴重な戦力。従ってこちらに付けなければならない。


「ふぅ……よし、お前たちも任務に戻れ。詳しい命令はノエルが出す」


 ノエルの失われし位階(ロストナンバー)は四人。

 ナガレに会った翌日。その早朝に、ノエルの失われし位階(ロストナンバー)が法王国に揃った。ノエルから連絡を受けた俺は、奴らを襲撃し、吸血する事に成功した。

 俺を前に跪くノエルが震えながら言う。


「お……おめでとうございます!」

「何でそんなに震えてるんですか?」

「も、申し訳なくっ!」

「あいや、普通に理由を聞いてるだけなんですけど?」

「えとその……彼らの血を得た瞬間、ミケラルド様の魔力が向上したのを肌で感じたから……かと」

「あぁ、抑えていても吸血で力が上がった時はどうしても漏れちゃうんですよね。すみません」

「いえ、滅相もない!」


 ノエルはこれからも役に立つだろう。

 彼女の実力は、剣神イヅナを見張りながらも、彼に見つからないレベルだ。

 黒ずくめの隠者という様相だが、目出しの布を取ればブロンド美人だし、性格も実直。ミナジリ共和国で言えば、ラジーンに少し似ているかもしれない。


「ノエルさん」

「何でしょう?」

「貴方が闇ギルドに入った理由をお聞かせください」

「理由……ですか」

「えぇ」

「他へ行くという選択肢がありませんでした」

「というと?」

「法王国の貧困層に生まれた私は、生まれてすぐに国営の施設へ預けられました。里親の斡旋を行っていた施設にやって来たのは、潜在魔力の高い子供を探しに来た両親でした」

「それが、闇人(やみうど)だったと?」


 頷くノエル。


「両親とは名ばかり。すぐに闇の構成員としての訓練が始まりました。子供を一カ所に集め、徹底的な指導。右も左もわからない子供だった私たちは、それが日常である事を刷り込まれ、徐々に任務へと出るようになりました」

「そこで頭角を現し、(とき)の番人へ……という事か」

「はい」

「では、ノエルさんが闇ギルドに求めていたのは居場所だと?」

「……わかりません」


 なるほどな、闇ギルドに依存している人間も少なからずいるという事か。

 不幸な境遇自慢なら負けるつもりはないが、彼女は過去(それ)を不幸だと思っていないようだ。

 勧誘だけではどうしようもない闇の戦力。どうやって人材を用意しているのか気になっていたところだが、子供の頃から養成したとなれば、そりゃ生粋の悪人が出来てしまう。悪を悪と判断出来ない人間がな。

 現にノエルは、何故(とき)の番人として自分がここにいるのかもわかっていないようだ。こういった人間は使いやすいだろうが、脆く壊れやすい。

 上手く使っているようだが、いつでも使い捨てられるような機構。

 エレノアの手腕を否定出来ないが、正解とも言えない。

 法王国の闇――思った以上に深いものだ。


 ◇◆◇ ◆◇◆


 ルークの寮に戻り、分裂体と合流した俺。

 二日後の夜には闇の集会。しかし、意外や意外。それまでの間、俺はフリーなのである。とはいえ、ルークの本業は聖騎士学校生。

 久しぶりに学生ライフを満喫したいと思う。

 今回のターゲットはそう、魔族少女のファーラちゃんである。

 しばらく見ない間に彼女は強くなった。ふむ、どうやらランクBに近い魔力を保有している。入学時点でランクC程だったので、およそ二か月でここまで成長したのであれば、中々の才能である。


「ん~? おやおやおや~?」


 今日は任務があるらしいので、冒険者組と正規組は揃っての集合。

 始業前に難しい顔をしながらファーラを見ていると、隣のレティシア嬢が俺に言った。


「どうしたの、ルーク?」

「ファーラ殿……ですか?」

「えぇ」


 ルナ王女も俺の視線が気になるようだ。

 彼女たちは護衛対象である事から、ファーラが正体不明の魔族である事を伝えている。いざ、ファーラがこちらに牙を剥いた時、すぐに防御や退避という判断が出来るからである。護衛対象にある程度の判断が出来ないと、何も出来ず、知らずに死ぬという失敗が起きかねない。


「気づいたか、ルーク」


 と、俺の前に現れた長身の美女――リィたんである。

 なるほど、リィたんも彼女の魔力の異常性に気付いていたか。


「「御機嫌よう」」


 と、リィたんと話そうと思っていたが、正規組のお嬢様方が我々を取り囲み始めた。仕方ないので俺はリィたんに【テレパシー】を発動した。


『魔族とは思えない魔力だね』

『あぁ、よどみなく均一な……美しいとさえ思わせる魔力だ』

『大地に根を生やした大木みたい』

『言い得て妙だな。ここ数日、ファーラの魔力が開花したかのようにあぁなった。何か心当たりはあるか?』

『うーん……ヒミコの話だと、スパニッシュ(ちちうえ)はファーラの事を【毒】って表現してたらしいけど?』

『あれが毒に見えるか?』

『聖ファーラ爆誕って感じ』

無垢(むく)(ゆえ)……か』

『まぁ、生まれて間もないってのは本当だと思うけどね』


 ファーラが毒……?

 スパニッシュ(ちちうえ)の言葉は勿論だが、シギュンがファーラから監視を外した理由も気になるところだ。

 ファーラの魔力の急激な変化……闇ギルドの集会も近くなり、新たに何か起こる気配がビンビンで、さっさとお布団に入って眠りたいミケラルド君だった。

次回:「その548 大事件」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 魔族側の聖女、とか……? 血を吸ったら吐血するタイプの毒だろうか……
2023/12/21 05:31 退会済み
管理
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