表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

545/917

その542 法王国への帰還

「はぁ~……」


 法王国のナタリーの部屋に戻るなり、ナタリーは深い溜め息を見せた。

 今回、ナタリーは戦争にこそ参加しなかったが、その後の事務処理等に追われていた。勿論ロレッソにも言える事だが、ナタリーの存在は日に日に大きくなっているように感じる。

 俺は【ルーク・ダルマ・ランナー】という学校生活用の姿に【チェンジ】すると、彼女たちに言った。


「それじゃあ、後程授業で」

「あ、はい」


 勇者エメリーは、賢者プリシラに何を言われたのだろうか。


「お疲れ様でした」


 聖女アリスは、賢者プリシラに何を言われたのだろうか。

 俺がそれを知る事はない。何故ならプリシラに情報を遮断されてしまったのだから。あの後、二人が変わった様子はないが、雰囲気が少し柔らかくなったと思うのは気のせいだろうか。

 そんな事を考えながら、俺はナタリーの部屋から自分の部屋へ転移したのだった。


「うぇ?」


 戻ってビックリ。

 俺はルークの分裂体と目が合った。しかも生着替え中だった。

 一体、こんなのを見せつけられて誰が得をするのか。恥ずかしがりながら胸元を隠す分裂体の独特のギャグセンスに呆れながら、それを身体に戻す。

 着替えを済まし、この女子寮での仲間に声をかける。


「ヒミコ」

「は~ぃ」


 部屋の空間を歪めながらじわりと浮き出るように現れるヒミコ。

 ラジーンとは違い演出に凝った現れ方である。


「変わりは?」

「特には。ミケラルド様の分裂体は、この私をしても見分けがつきにくい程でしたわぁ」

「そう? 褒められると嬉しいね。っと、今日の授業は何だったっけ?」

「シギュンの授業にございます」

「……はぁ~。帰って来て早々シギュンか~……」

「ミケラルド様」

「え?」

「口元がニヤけていらっしゃいますわぁ」

「おっといけない。コホン。帰って来て早々シギュンか~……」

「素晴らしい演技力です」

「やったね」

「けれど、目元がニヤけていらっしゃいますわぁ」

「……絶世の美女ってのは何故こうも手ごわいのか」


 テープか何かで目元を固定したい系四歳児は、鏡の前で顔の体操をしてからレティシア嬢の部屋へ向かった。


「レティシア様、ルークです」

『はい!』


 何やらとても嬉しそうである。

 いつもより元気よく開かれた扉の先には、満面の笑みを見せるレティシア嬢。

 だが――、


「リボンが曲がってますね」

「ふふ、では直してくださる?」


 毎朝わざと曲げてくるのは、ある意味護衛いびりともとれるが、やってるのはレティシア嬢。いびりというよりおねだりに近い。おそらくこれはナタリーも知らないのだろう。


「さぁ、ルナ王女殿下のお部屋へ行きましょう」

「はいっ」


 思えば、こんなやり取りも久しぶりに感じる。

 戦争自体は短かったが、この短期間に起きた事はどれも濃いものだった。そう思ってしまうのも無理はないのかもしれない。


「ルナ王女殿下、ルークです」

「レティシアにございます」

『はい』


 扉を開けたルナ王女。

 ふむ、昨日の授与式の時に思ったが、ルナ王女の魔力……結構向上していないか? それに何だ? 彼女の身体を取り巻くこの黒く禍々しい魔力は……?

 と、思った時期もありました。どう見ても俺がかけた闇魔法【フルデバフ】である。


「……? どうかしました、ルーク?」

「リボンが曲がってますね」

「え?」


 言いながら俺は、ルナ王女の曲がっていないリボンを直すフリをして、彼女に掛かっている【フルデバフ】を解いた。直後、ルナ王女が嬉しそうに俺を見た。


「こちらの状態に慣れるのも必要ですから、今日は外しておきましょう」

「はいっ」

「とても素晴らしい成長をされていますよ」


 実際、彼女の実力は聖騎士学校の正規組の中ではトップレベルと言ってもいい。まぁ、ゲラルドにこそ遠く及ばないが、サッチの娘のサラを抜き、今やランクC相当の実力者と言える。

 こう見ると、彼女はきっと聖騎士になれるだけの器なのだろう。

 卒業したらブライアン王は娘に頭が上がらなくなるのではなかろうか。


「ふふふ、ルークのおかげですよ」


 はにかむように笑ったルナ王女に対し、何故かレティシア嬢は頬を膨らませていた。


「「ルーク様、御機嫌よう」」

「お、おはようございます」


 寮の廊下、聖騎士学校までの道のり、校内、そして教室と。

 様々な淑女たちの挨拶に応じ、朝から顔に疲れを見せる。

 だが、ここは聖騎士学校。シギュンが牛耳っているとも言うべき洗脳ランド。

 休んでいる期間中、シギュンの授業はなかったが、もしかしたら今日……シギュンが何かしてくる可能性がある。気は抜けないな。

 やがて現れる特別講師のシギュン。

 その顔はどこかいつもと違うような気がした。


「皆さん、おはようございます」

「「おはようございます!」」


 やはり、声にいつもの艶がない。正直、化けきれていないような気がする。

 もしかして、思った以上にパーシバルの引き抜きが効いているのかもしれない。

 今夜はミナジリ共和国でカンザスと、ナガレに会わなくちゃならない。その時に事情を聞けるだろう。

 シギュンは授業中何もしてこなかった。平和だったとさえ言える。

 それがかえって不気味で不安だったが、そんなモノは一瞬で吹き飛んでしまった。


「ルークさん……後程、講師室にいらしてください」


 美女の呼び出しひゃっほい。

次回:「その543 ひゃっほい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ