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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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その53 帰還

「おー、久しぶりな感じがする」

「ほんの一週間だろ? まぁ、ミック(、、、)にとっちゃ、長旅だったのかもな! はははは!」


 マックスは豪快に笑い、俺の背中をバシバシと叩いた。

 帰りの道中で、俺とマックスは更に仲良くなり、マックスは俺を愛称で呼ぶようになった。


「ほらよ、お前の荷物だ。この受領書にサインしてくれ」

「ほい。……これでいいか?」

「オーケーだ。あぁ、冒険者ギルドに報告して来いよ。前の依頼、報告は済んだけど報酬は貰ってないだろう?」

「勿論だよ」


 そう、報告している段階で俺はあそこで俯いているシュバイツに捕まったのだから。

 今では彼も反省している。というか、これから自分がどうなるのか不安なのだろう。

【呪縛】で催眠療法を施したとはいえ、自我は存在する。当てのない旅ほど怖くて不安なものはないだろう。その点においては、隣で空を見上げているランドも同じなのだが、彼は楽観的なのか、とても内面が明るく楽しいヤツだったので、この心配は杞憂かもしれない。


「これからは冒険者として、商人(、、)として頑張れよ!」

「おう、ありがとな!」


 そう、俺はマッキリーの町で商人ギルドにも加入した。加入条件は、冒険者ギルドより少しだけ敷居が高いのだが、条件の算数テストは俺にとって非常に簡単なものだった。義務教育の有難さを身に染みて感じた瞬間だった。二つ目の条件の金貨十枚も余裕だったので、すぐに加入する事が出来た。

 商人ギルドに加入すると、いくつかのメリットがある。

 一つ目は、国外への関税が二割引きという点。

 二つ目は、各商人ギルドで主な取引物の相場がわかるという点。

 三つ目は、商人ギルドでの売買を行なってくれる点だ。

 この三つ目に関しては、当然買う時他より高くなってしまうし、売る時安くなってしまうが、その分、数を捌けるのだ。

 つまり、長い移動をしなくても物を売買出来るのだ。

 俺としてはここがメリットだと思っている。

 マッキリーの町まで行けば、簡単に物を買えるし、簡単に物を売れるのだ。

 仕入れが高くても、加工品として売れば絶対に儲けられる。それは、現代知識とアイディアが俺の脳内にあるからこそ言える事だ。

 まぁ、その商人ギルドにモノがなければ、輸送に時間がかかったりするし、護衛に金がかかったりもする。

 この問題から、利用する人間は限りなく少ないとも聞いた。

 だが、この問題も、しっかり向き合えば解決出来ると思っている。


「ところで……」

「あん?」

「あそこでミックを睨んでる美人は誰だ?」

「んぉ? あ、よぉリィたん! 久しぶりー!」

「ミック! お前どうやってランクAになったんだ! 私は飲まず食わずにシェンドの町でずっと依頼をこなしていたんだぞ! ネムに聞いたら捕まったと聞く! 拘束されてたのに何故私より先にランクAになった!?」


 拘束されてた事への心配がないのは、俺の実力を知ってるからだろうな。


「結局リィたんもランクAになったんだろ?」

「昨日な!」


 ぷいと(むく)れるリィたんがとても良い。とても可愛い。


「……驚いたな、シェンドの町に二人目のランクA冒険者か。暫く話題が尽きないんじゃないか? はははは」


 マックスが乾いた笑い声を出す。やはりランクAという冒険者の存在は、このシェンドの町では珍しいのだろう。

 いや、リーガルのギルドマスターのディックが「頼りにしてもいいか?」と聞いたくらいだ。リーガル国内でも珍しいのかもしれない。

 となると、ランクS、SS、SSSの冒険者は相当希少な存在という事だろう。

 このまま冒険者を続けていれば会うかもしれないが、商売との並行作業ともなると……うーん、どうなるかわからんな。


「それじゃあミック、近くに来たら遊びに来いよ!」

「おう! ありがとなー、マックス!」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 冒険者ギルドに着くなり、ギルド内が大きくざわつく。


「ミケラルドさん!」


 ネムが嬉しそうに俺を呼びながら立ち上がる。

 受付越しに見えるネムの表情は、とても晴れやかだ。


「やぁネム、久しぶり」

「こちらはちゃんと証言したのに連れてかれちゃって、本当に心配してたんですよー!」

「ちょっとした小旅行みたいなものだよ。ランクもAになったし、俺としては悪い旅じゃなかったよ、はははは」


 直後、ネムがずびしと俺を指差した。


「それです! 私もリィたん様から聞きましたけど、一体どうやってランクAに!?」


 冒険者ギルドの受付嬢が、ここまでがつがつ聞いて来ていいものなのか? まぁ、ネムが打ち解けてきてくれてるのは嬉しいんだけどな。

 しかし、ネムだけじゃなく、他の冒険者も、そして何より俺の後ろで終始ジト目を向け続けるリィたんが、とても聞きたがっているようだった。

 仕方ないので、俺は、皆の視線が届くような目立つテーブルの席に腰を落とし、少しだけ話したのだ。

 リーガルでの出来事を。


「うわぁ……ディックさん倒しちゃったらそりゃランクAに上げられますね。あははは……」


 ネムだけではない。奥にいるギルド員も、冒険者たちも呆気にとられている様子だった。

 どうやら、リーガルのギルドマスター、ディックの名前と実力は、このシェンドの町でも有名なようだ。

 だが、これで面白い事もわかったな。

 同じ国の冒険者ギルドでも、そこまで密に連絡はとれないようだ。クロードのようなテレパシーの特殊能力保有者は、やはり珍しいのだろうな。


「むぅうううう……やっぱり納得いかないぞ! ミック!」

「だってしょうがないだろう。数をこなすだけがランクアップの道じゃないって事だよ」


 拗ねた顔のリィたんはとても可愛いが、それ以上に悔しさが溢れているから、あまりからかえない。


「むぅううう」

「でも、リィたん、約束は約束だ」

「くっ、仕方ないな……!」


 悔しさを呑み込み、溢れた分は握りしめ、リィたんは俯いた。

 さぁ、リィたんの罰ゲームは何にしようかな。

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