表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

532/917

◆その529 最後線

2021/5/14 本日一話目の投稿です。ご注意ください。

 勇者エメリーを主軸としたフレッゾ、聖女アリスは魔族四天王の牙王(がおう)レオの猛攻を受けていた。


「おぅら!」


 レオの武器はその強靭な肉体。自身の肉体を鋼鉄以上の硬度にし、魔力を纏いエメリーを攻撃する。


「ぐぅっ」


 エメリーが吹き飛ぶも、その真下を潜り、リプトゥア国のギルドマスター【フレッゾ】がレオの足を狙う。


「はぁ!」


 双剣の二撃による攻撃も、


「ぬるいな」


 膝を固め防御したレオには届かない。


「本命は私ではありません」


 駆け抜けながら言ったフレッゾの言葉に、レオが目を細める。


「ライトシュート!」


 放たれたのは聖女アリスの聖なる光弾。


「っ! しゃらくさいっ!」


 裏拳でこれを弾いたレオに対し、アリスが更に動く。

 杖を持ち、構えたのだ。


「ほぉ、前に出る聖女も面白い」

「いいえ、絶対に出ませんっ!」


 アリスはそう言い切りながら杖を振る。

 空を切るかと思われた杖の後方から静かな足音。

 戦線に復帰したエメリーがアリスの振った杖に乗り、勢いを加算させたのだ。


「オーラブレイドッ!!」


 勇者の剣、そしてオーラブレイドから繰り出される強烈な交叉攻撃。


「くっ!?」


 レオはこれを両の手で掴み、受けた。

 致命傷にはならずとも、レオの手からは確かに赤い血が流れたのだ。


(いける!)


 自分の攻撃が通じた。エメリーがそう思った時、レオは次の攻撃に移っていた。思い切り手を引き、剣ごとエメリーを引き寄せたのだ。エメリーの顔の先には、大口を開けたレオ。


「わっ!?」


 エメリーは()()り、左手のオーラブレイドを消して勇者の剣を両手で引っ張った。

 しかし、レオの膂力はそれ凌駕していた。

 勇者の剣を手放すしかない――そう思った時、フレッゾがレオの腕に強烈な一撃を叩き込んだ。


「チィッ!」


 腕が痺れたレオが腕を払いながら舌打ちする。

 レオから離れたエメリー、フレッゾ。

 後方からアリスが回復魔法を発動するも、その心中は穏やかではなかった。


牙王(がおう)レオは余力があるのに対して、こちらは常に全力……。いえ、全力でなければレオの猛攻に付いていけないんだ。私の残り魔力を考えると……!)


 片や切れた手をペロリと舐め嬉しそうに笑うレオ。片や肩で息をするエメリーとフレッゾ。


「戦いにくい相手だが……それだけだ」


 レオの言葉に更なる警戒をするエメリーとフレッゾだったが、レオはその警戒網を一瞬ですり抜けたのだ。

 いつの間にか二人の背後に抜けたレオは、裏拳を一発放っただけでフレッゾを遠くへ吹き飛ばした。


「くぉ!?」

「フレッゾさんっ!」


 アリスが叫ぶも、レオの攻撃はまだ止んでいなかった。

 受けが間に合ったエメリーも弾き飛ばし、その足でアリスの下へ走ったのだ。

 アリスが後方へ跳ぶも、その距離はレオにとって些細なものだった。

 フレッゾ、エメリーがその速度に追いつく訳もなく、遂にアリスはレオによって捉えられる。


「っ!?」


 首を掴まれ声も出せないアリスが苦しみ藻掻く。杖を落とし、じたばたと動く足も、レオには届かない。


「何故俺がこの細い首をへし折らないかわかるか? ま、わからねぇだろうな。これはな、俺たちのため(、、、、、、)だ。お前たちの勇者だの聖女だのの称号がなけりゃ、すぐに殺してやるんだがな」

「なっ……くっ……」


 苦しむアリス。

 エメリーが復帰するも、アリスの援護という戦力、フレッゾの援護という戦力がなければレオには遠く及ばない。力を一つに集めねば、三人はレオと戦う事が出来ないのだ。たった一人の綻びは、戦闘を傾けるには十分と言えた。


 そしてそれは、魔族四天王スパニッシュ・ヴァンプ・ワラキエルと戦うラジーンとドゥムガにも言える事だった。


「ガァアアッ!」

「繊細さを帯びたとしても、その大振りが直らなければただの木偶(デク)だぞ? ドゥムガ」

「うるせぇ! 前々から気に食わなかったんだよスパニッシュ(おめぇ)は!」

「だからと言って人間との共存を推奨するミケラルドに付くとは愚かの極みだ」

「うるせぇ! うるせぇっ! うるせぇっ!!」


 ドゥムガの拳を軽やかにかわすスパニッシュ。

 跳び、舞い、闇魔法【ゾーン】を使用しかわす。翻弄されるドゥムガの顔に苛立ちが見えるものの、ギリギリのところで冷静でいられたのはラジーンの援護があったからだ。

 ラジーンの飛び道具である投げナイフや魔法が、スパニッシュの攻撃の回数を制限していた。


「お前は確かに強い。だが、それだけだ。攻撃に伴う殺気がわかりやすく愚直。何ともわかりやすい。手数で誤魔化しているが、目が慣れれば――」

「――っ!」


 今しがた放ったばかりの投げナイフが弾き返される。ラジーンがそれをかわすも、頬が裂けてしまう。

 ドゥムガの致命傷を避けるために中距離から攻撃を放っていたラジーンの戦力が削られる。我武者羅(がむしゃら)に攻撃を繰り返すドゥムガだが、ラジーンの戦闘力が削り切られれば、そこでこの戦闘は終わる。

 二人には――いや、この場で魔族四天王と戦う五人にはそれ以上の焦りがあった。


「それに、忘れてもらっては困る。我々にはまだ【覚醒】という手段が残されているという事を」


 圧倒的な戦力と手札。最早(もはや)、事は勇者エメリー、聖女アリスの覚醒を目論むという段階にない。時間を掛け戦場で向上させるはずの力。ほぼ初戦という段階で戦う相手は魔族四天王。

 ミケラルドの誤算ではある。

 しかし、タダでは転ばないのが、ミケラルド・オード・ミナジリという男なのだ。

 最前線から轟音が響き、大地の木(、、、、)が無数に見えた時――五人は窮地に立たされていた。だが、その後、スパニッシュの眼前に、レオの眼前に理解しがたい存在が現れたのだ。


「「なっ!?」」

次回:「◆その530 咬王ミケラルド」


※本日もう一話投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ