表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/917

その52 着実に

『リィたん? 久しぶり~! そっちはどう?』

『む、ミックか! あれ以来シェンドでは見なかったな。マッキリーにでも行ってたのか?』


 そうか、リィたんはずっとシェンドの町で依頼をこなしていたのか。

 しかし、俺の事件は聞いていないのか。ネムなら話しててもいいはずなんだが……あぁいや、そうか。

 リィたんは、リィたんなのだった。

 ネムの話を聞く前に、依頼依頼依頼また依頼の日々だっただろう。


『いや、リーガルまで来てたんだ』

『なるほど、考えたな。リガール国の首都ならば、依頼は潤沢にある。それで、ランクBにはなったか? ふふふふ、私はもうすぐランクAになれると思うぞ?』

『いや、ランクAになったぞ』

『ほぉ、ランク()にはなったか。そうでなくては楽しめない。罰ゲーム、楽しみにしておけよ』

『いや、リィたん。もう終わり。俺はランクAになったの。罰ゲームはリィたんがやるの』

『…………ん? ……え? は? な、なにぃいいいいいいいっ!? ミックがランクAになっただと!?』


 完全に勝つつもりでいたよな、リィたん。

 でも、多少裏道を使ったとはいえ、勝ったのは俺だ。

 リィたんへの罰ゲームか。何か面白いものでも用意しておかないとな。

 慌てふためくリィたんから、これ以上返答を得られなかったので、一旦テレパシーを切る。

 宿併設の酒場で一息吐いていると、対面の席にマックスが腰掛けた。


「よぉ、どうだったんだよサマリア侯爵家は?」

「ういっす。まぁお抱え的な冒険者にはなれたんじゃないか?」

「そりゃすげぇな! って事は、これからはここを拠点にするのか?」

「いや、一旦シェンドに戻るよ。それで商人にもならなくちゃな」

「うぇ!? 冒険者ランクCになるだけの強さがあって商人もやるのか!?」

「違う違う。もう冒険者ランクAだよ。ついさっきなったんだ」

「はぁあああ!?」


 マックスはその場で立ち上がる程驚いた。


「どうした熊さん」

「わかってるのか、お前! ランクAの冒険者って言ったら国からの依頼も多くある重要な強さだぞ!? 依頼一つで白金貨最低五枚だと聞く! それで商人になるのか!? 十分やっていけるだろう!?」

「いや、全然足らない」

「一体何を買えばそうなるんだよ……」


 言葉に詰まったらしいマックスは置いといて、俺は革袋の中の金を整理する。服以外はシェンドの町に置いて来ている。というか、マックスたちに取り上げられてるんだけどな。

 今この場にあるお金は、白金貨が二十九枚と、金貨が八十枚。


「おい、俺の気のせいじゃなけりゃ、その白金貨増えてないか?」

「お、よく気付いたな。実は増殖するんだよ。この白金貨」

「そうなのか!? じゃあくれ!」

「やれるか!」


 マックスは本当だと思ったんだろうか。

 いや、笑ってるし、冗談は通じてるんだよな。

 見たところ結構酔っていらっしゃるようだ。日も暮れてきたし、ちょうどいい時間だとは思うが、飲み過ぎは良くないぞ?


「まぁ商人になるんだったら、マッキリーに一度寄ってみるといい。あそこには商人ギルドがあるからな」

「おぉ、やっぱり商人にもギルドがあるのか」

「冒険者ギルドと対をなすようなギルドだからな。冒険者の中にもミケラルドみたいに商人をやっているヤツもいる。入るにしても入らないにしても、顔を出すだけ出しておいた方がいいぞ」

「確かに」

「俺たちは明日帰るんだが、ミケラルドも一緒に帰るか?」

「うーん、連れがいるんだが、それでもいい?」

「勿論さ。それに、ミケラルドがいれば帰りは安心だしな」


 上手い事言われてしまったが、シュバイツと牢番をシェンドに連れて行くには、これが一番だしな。マックスに乗せられといてやるか。


「明日の出発は?」

「昼過ぎには出る。本当は午前中がいいんだが、護送の事後処理が面倒でな。仕方ないだろう」


 なら、俺もそろそろまともな服を探しに行くか。

 いつまでもクロードのおさがりじゃ、恰好がつかないからな。


「ところでミケラルド」

「なんだよ?」

「この短期間でどうやったら連れが出来るんだ?」

「ま、前に知り合った人だよ。今後の仕事に必要なんで口説き落としただけさ」

「ほ~」


 血を吸っただけなんだがな。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「おぉミケラルド、こっちだこっち!」

「悪い、待たせたか?」

「いや、丁度良かったぜ。しかし、大分サマになったじゃないか?」

「だろ?」


 午前中に用意した俺の服――灰色のパンツとダークブラウンのブーツとインナー。パンツと同色のベストと、群青のマント。ベルトはマントに合わせ、簡易ポーチはブーツやインナーと合わせた。

 流石リーガル国の首都。色んな服があって迷ってしまった。

 武器はとりあえず、闇空間から取り出した【吸魔のダガー】があればいいだろう。

 打刀はシェンドの町だしな。


「そいつらがミケラルドの言ってた連れってやつかい?」

「あぁ、シュッツ(、、、、)とランドだ」

「「宜しくお願いします」」


 シュッツはシュバイツで、ランドは牢番だった男だ。

 二人共、命を助けてやる条件に、チェンジを使って顔を変えた。シュバイツは厳つさが顔から消え、穏やかな顔つきに。ランドは好青年という感じだ。

 既に二人からは魔族に対する恐怖や嫌悪の感情を取り除いた。すると、驚いた事に俺に忠誠を誓ったのだ。

 何故かはわからないが、命を救った事と、俺の魔力が原因だと考えている。

 そんな訳で、今後は開拓地のメンバーとなるだろう。

 出来れば女っ気を増やしたいところだが、誰かいないものかな。


「さぁ、出発だ」

「おう!」


 たった数日の短い期間だったが、侯爵家という強いパイプが出来た事は非常に大きい。

 ナタリーたちは元気にしているだろうか。

私の別作ですが本日『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』第十巻発売です。

機会がありましたら是非読んでみてください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ