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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第二部

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529/917

その526 超長距離砲ぐうる

 あれはおそらく魔族四天王の一人牙王(がおう)レオ。それに、まさか父上(スパニッシュ)も来るとは思ってもみなかった。


「全軍前進!!」


【テレフォン】を使いリーガル戦騎団に最初の指示を飛ばす。


『リ、リーガル戦騎団! 前進!』


 流石しっかり鍛えてるな。躊躇(ためら)いつつも迅速に動いてくれるのはありがたい。ネルソンはこれでよし。


 だが、ここに魔族四天王が三人か。……三人? もしかして聖騎士団はもう一人の魔族四天王魔女【ラティーファ】が?

 これだけ大規模に動き回っているんだ。動かないはずがない。可能性は非常に高い。

 これを指揮した不死王リッチ――なるほど、ちょっと余裕が見えなくなってきたな。


「アリスさん、こっちへ!」

「へっ? は、はい!」


 しかし、今はそんな事を考えている場合ではない。


「エメリーさん、ここでストップ!」

「っ!? わかりました!」


 俺はエメリーとアリスを隣同士で止め、


「ちょっとお前ら邪魔だっ!」


 強い魔力を放って強引にグールやレイスを吹き飛ばした。


「後方に魔族四天王が二人現れました。お二人にはそちらを対処してもらいます。相手は牙王(がおう)レオ。いけますか?」


 エメリー、そしてアリスは互いに見合い、一瞬で決断した。


「「はいっ!」」


 なるほど、良い覚悟だ。これまで二人の過去を揺さぶり続けた甲斐(かい)があるというものだ。


「ドゥムガ、ラジーン! 親子喧嘩の仲裁を頼む!」

『じょ、上等だっ!』

『お任せを!』

「フレッゾさん、エメリーさんと共に牙王(がおう)レオをお願いします」

『かしこまりました。ははは、とんだ貧乏くじですな』

「よし、それじゃあお二人とも、腰を落としてこちらへお掛けください」


 土塊(つちくれ)操作で形成した二つの椅子が地面から生えてくる。


「す、座るんですか!?」

「戦争中にっ!?」

「いいから早く!」


 俺の催促もあり、二人はすぐにそれに腰掛けた。


「本日のご乗車誠にありがとうございます!」

「「は?」」

「片道切符のストーンバレッドシャトルへようこそ! シートベルトをおしめください!」


 背もたれが伸び、エメリーとアリスの肩、と腹部が固定される。


「ちょ、ちょっとミケラルドさんっ!?」

「戦争と冒険の世界へようこそ! バナナはおやつに含みます!」


 じたばたとしたアリスが俺に何か訴えかけるも、今は戦争中。ふざけている場合ではないのだ。


「グッドラック!」


 親指を立てて二人にそう言った直後、大地ストーンバレッドシャトルはせり上がり浮き上がった。


「「ま、まさかっ!?」」

「倒せないまでも引き留められたら後でご褒美をあげます! それじゃあ、よい旅をっ!」

「「ミ――」」


 二人の返答を聞かぬまま、大地ストーンバレッドシャトルは俺の【サイコキネシス】により、前線基地の近くへ跳んでいったのだった。

 そう、音よりも速く。

 よし、上手く着いたみたいだ。一瞬アリスがこっちを睨んだように見えたが気のせいだろう。二人とも良い表情をしていた。

 俺の固有能力【徒党の親玉】があればドゥムガはほぼSS(ダブル)と言える。そしてラジーンはSSS(トリプル)と言えるだろう。魔族四天王と言えども魔王の復活前。各々強化能力や魔法を発動したとしても多少の時間を稼げるはず。

 スパニッシュはこれでいける。

 問題はエメリー、アリス、そしてリプトゥアのギルドマスター【フレッゾ】だな。【徒党の親玉】の庇護下にあってもSS(ダブル)の殻は破れない。何かしら援護が必要だろう。ミナジリ共和国であれば領域(テリトリー)が使えたんだが、ないものねだりをしても仕方ないだろう。

 さて、どうやったものか。


「グルァアアアッ!」


 と考えていたら、グールがようやく俺の間合いに戻って来た。

 グール? っ!


「これだ!」

「ギィッ!?」


 俺はグールの頭をぐっと顔に近づけた。新武器の発見に接吻(せっぷん)まで数センチメートルくらいまで近づけてしまった。何故襲ってきた側であるグールが離れたがっているのかは不明だが、俺はそれをキュッってやると供に、スパニッシュへとプレゼントした。


「逝ってこいっ! そんで、もういっちょ!」


 グールという名の砲弾がスパニッシュ、レオへと飛ぶ。

 ふむ、中々いいな。【超長距離砲ぐうる】と名付けよう。

 レイスを捌きつつ、前進。グールを捕まえ砲弾に。これで後方の戦闘に均衡がとれるはずだ。

 だが、不死王リッチがこれを許すはずがない。それに、リプトゥア国の王だったゲオルグ王が姿を見せていない。息子のゲラルドは、リプトゥア国を守ると共に、おそらくゲオルグ王を探しにこの戦争へ参加しに来ている。

 学友としてはゲラルドと父ゲオルグを再会させてやりたいが、指揮官ミケラルドとしては、会わせたくない。時間があればいいのだが、これは戦争。ゲラルドの戦力は敵の数を減らす事に使いたいのだ。

 出来れば見つけ次第、仕留めたいというのが正直なところだ。ん?


「ちっ、動いたか。流石に早いな」


 俺の【超長距離砲ぐうる】が五発目、六発目を迎えた頃、不死王リッチが動いた。先程同様、新たな【闇空間】を発生させたのだ。

 前回は後方。しかし、今回は――、


「俺の……前、か」

次回:「その527 魔族軍の最大戦力」

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[良い点] いよいよ、本命登場(*´∀`)♪相手は魔王!かな?
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