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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第二部

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その508 間男と押し掛け女

「へぇ、扉を囲う土壁を溶かしたのか。あ、人の目もありますんで。中に入ってください」


 彼女の目には疑問の色はあれど警戒はなかった。

 それはおそらく、過去の俺とのやりとりが原因なのだろう。

 テルースの友であるリィたんが、俺を慕ってくれているという事もあるのだろう。

 だが、彼女の目に焦りはあった。


「お急ぎなのでしょう? ここに来たという事はエメラさんかクロードさんを誘拐、もしくは殺害しに来た。まぁ人質は生きててナンボです。誘拐という事で?」


 コクリと頷く地龍テルース。

 当然、俺は闇人(やみうど)としてさっきまで一緒に行動していたのだ。

 前提としてこれを話しているに過ぎない。


「人質はこちらで用意します。時間いっぱいまでお話でもいかが?」


 テーブルにお茶を出し、サイコキネシスで彼女側の椅子を引く。


「あ、壁は元に戻しておいてください。ここ、一応人の家なので」


 そう言うと、地龍テルースは【土塊操作】を使い、壁を元通りにしてみせた。

 そして、俺の前の椅子に座り、静かに目を伏せたのだった。


「いやあ未遂(、、)で良かった」


 もし、エメラが攫われていたとすれば、俺は地龍を助けるプランを投げ出してしまう可能性があった。

 俺の言葉にピクリと反応したテルース。

 流石、出さなくても俺の発言の意味を理解したか。


「……謝罪を」

「いいですよ謝罪なんて。そちらの都合は理解しているつもりですし、自分がテルースさんでもそうします。息子さん……【アスラン】さんでしたっけ? リィたんから聞いてます。我々の見解では彼が人質になっているからテルースさんは闇ギルドに従っていると考えています」


 彼女の顔色、焦燥感が色濃く見える。やはりそういう事なのだ。


「お茶どうぞ、落ち着きます」

「…………」


 ま、息子が大変な時に呑気に茶を呑んでられる訳がないか。


「木龍グランドホルツが協力を申し出てくれました」

「っ!」

「木龍グランドホルツの力があればアスランさんを捜し易いと思います。我々としてもリィたんの友人である貴方と友好な関係を築きたいと思っています。なので、アスランさんの捜索には協力しましょう。当然、それには貴方自身の協力が必要です」

「……どうしろと?」

「今日この場で誘拐するはずだった者を、エレノアの下へ引き渡して頂きたい」

「どういう事です?」

「誘拐するからには生きていてもらわないといけない。だからこそ監視を置かねばならない。こんな辺境の地で人質を隠すのは悪手です。私がこの一帯を捜索すれば見つけられるでしょうし」


 お茶を口に運び、俺は更に続けた。


「つまり、人質は誘拐者の切り札な訳です。ならば、誘拐者にとって人質こそが邪魔なんです。だからこそエレノアはアスランさんを手元に置いているんでしょう」


 そう言った後、しばらく考え込んでいたテルースがハッと気づく。


「っ! つまり、エレノアの下に送った人質は、アスランの下に運ばれる可能性が高い、と」

「そういう事です。そしたら後は、(すき)()いてそこを急襲すればいい。まぁ、穏便に済ますつもりですけど」


 木龍グランドホルツの動きもあるが、こちらもこちらで動いた方がいいだろう。策はいくつあってもいいからな。

 先程から彼女の焦り以上に気になるのは……地龍テルースの状態だ。


「以前より魔力が弱くなっていますね」

「……恐ろしい方ですね。貴方は以前より魔力が満ち満ちている」

「お茶、飲んでくれません? ろくに食事も摂ってないでしょう? あ、このお菓子、お腹にいいので是非」


 テルースが茶に手を伸ばそうとするも、手を止めてしまう。


「いえ、今の主人は警戒心の強い者。これを口に入れれば僅かな匂いの変化で私が歓待を受けた事を察するでしょう」


 なるほど、カンザスの洞察力の事を忘れていた。

 確かにその通りだ。


「あの子のためならば、空腹など恐れるに足りません。それに――」


 地龍テルースが真っ直ぐに俺を見る。


「もうしばらくの辛抱……なのでしょう……?」


 窺うように、願うように言った地龍テルースの表情(かお)は、俺の心に強く、そして重く残った。


「お約束します」


 俺がそう言いながら立ち上がり、地龍テルースもスッと立ち上がる。

 そして、俺とテルースは静かに握手を交わしたのだった。


 ◇◆◇ ◆◇◆


 その後、俺の新たな分裂体をエメラに似せ、地龍テルースに誘拐させた。

 彼女は彼女で上手くやるだろう。彼女の誠実さは俺なりに受け取ったし、彼女自身の願いもある。

 ここからエメラには【歪曲の変化】で姿を誤魔化してもらい、クロード新聞も少し誰かに代わってもらおう。妻が誘拐されふさぎ込む夫……まぁクロードなら上手くやるだろう。

 問題はナの字(、、、)だ。まず、俺がどうやってナタリーにこの事を説明するかだ。右のボディーくらいは喰らってしまうだろうか? いや、ビンタにお尻ぺんぺんオプションも付いてくるかもしれない。

 俺の尊い犠牲の果てにこの誘拐劇があった事を、俺は忘れない。


「何にせよ、本当に未遂で良かった……」


 地龍テルースを殺さずに済んで……本当に良かった。

次回:「その509 ナタリースープレックス」

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― 新着の感想 ―
[良い点] ここまで読ませていただきましたが、とても楽しく読めました。 最後まで楽しませていただきます。
[一言] ナタリースープレックス❗(*´∀`)♪ こんな必殺技が!危うし! 予想より怒ってるんですね。
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