表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/917

その50 リーガルのギルドマスター

 リーガルの冒険者ギルドに戻った俺は、受付嬢に依頼報告をしに来た。


「何かご用でしょうか?」


 やたら胸元が涼しそうなお姉さま。そんな印象を受付嬢に抱く。依頼を受けた時は、珍しく男の受付員が座っていたのだが、やっぱり受付には華がないといけない。

 ネームプレートを確認すると、「ニコル」と書いてあった。グロス的なものを塗っているのか、輝く唇がとても好印象です。

 薄紫色の長い髪を束ね、正面からでも見える首筋がとても好印象です。

 男を虜にするような流れる目線と、髪と同色の瞳が俺を縛って離さない。うーん、個人的にはネムよりニコルの方がタイプかもしれない。


「依頼の完了報告です」

「まぁ、あなたがミケラルド様でしたか」


 透明感のある色っぽい声も素晴らしい。是非リピートしたい受付嬢だ。

 どうやら、俺の名前は既に冒険者ギルド内で知られているようだ。

 まぁ、いきなり侯爵家の依頼を持ってきたら「誰だあいつ!?」ってなるよな。


「ご報告ありがとうございます。私はニコルと申します」

「ミケラルドです。よろしくお願いします」

「ご丁寧にありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします。依頼完了の報告と承りましたが、私の間違いでなければ、ミケラルド様はつい先程依頼を受けられたばかりだったはずですが……」

「えぇ、すぐに終わったので、報告に来ました。これがランドルフ様のサインです」


 サインに目を落とすだけのニコル。

 確かに怪しいよな。調査という依頼はそう簡単に終わるものではない。何日も聞き込み、潜伏、尾行など行い、結果を出すものだ。しかし、俺はものの数時間でそれを終えた。

 ニコルがそれを訝しんでいるのも納得だ。

 そしてニコルはこうも思うだろう。「侯爵家のお抱え冒険者か」と。侯爵家のお気に入りの冒険者であれば、架空(、、)の依頼を出し、サインするだけで注目が集まる。そういった抜け道もあるのは確かだ。

 ただ、そうなれば冒険者ギルドからの印象は悪くなる。

 初対面ではあるが、ニコルにはあまり良い印象を持たれなかったかもしれない。


「……かしこまりました。確認してまいりますので、しばらくお待ちください」


 上の人間に確認か。そして俺のランクはC。今回は侯爵家からの依頼だ。これが受理されれば、体感ではあるが、俺はランクアップ出来る可能性が高い。

 捕まったとはいえ、シェンドの町での指名依頼もこなし、更に二件の討伐依頼もこなした。

 依頼の数こそ少ないが、指名依頼という案件は、それなりに重要度が高い。

 さぁ、冒険者ギルドはどう出るのだろうか。


「ミケラルド様、お待たせ致しました」

「いえ」

「当ギルドのギルドマスターが、ミケラルド様にお会いしたいそうです。この後お時間よろしいでしょうか?」


 そうきたか。


「……構いません」


 少なからず不満気な態度が出てしまったかもしれない。

 向こうの言い分もわかるが、正直者が馬鹿を見てしまうのは、どこの世も同じなのかもしれない。

 ニコルに案内され、俺はギルド奥にある野外スペースまでやってきた。

 そういえば聞いた事がある。たまに訓練の依頼があったりするから、冒険者ギルドには屋外に運動場のようなスペースを確保しているって。

 光魔法を使っているのか、夜だというのに周囲がしっかり見える。

 そんな訓練場の中央に立つ中老の男。

 皺の多い険しい顔付きに鍛えこまれた身体。手には一本の木剣。露出している手には無数の傷跡がある。これは恐らく全身にあるのだろう。

 佇まいからもわかる実力。

 人界に入って初めて実力者だとわかる魔力量だ。

 まぁ、人間にしては……だけどな。

 リィたんと比べてしまうと、全てが霞むからな。

 これはおそらくあのドゥムガに匹敵する実力者だろう。


「サマリア候のお気に入り……か」


 掠れつつも重く太い声だった。


「一応、どうしてそういう事になっているのか聞いておきたいですね」

「たった数時間で終わる依頼に白金貨二十枚だぞ。それを知らない訳ではあるまい?」

「知ってますけど、それは理由にならないでしょう」

「いいや、なる。侯爵家との繋がりについては言及しないが、そう簡単に上位ランカーになられては困るのだよ」

「実力が釣り合っていないと?」

「それを確かめるこの場だ」


 なるほどね、薄々気付いてはいたが、その手に持っている木剣はそういう理由か。

 俺はちらりと横を見るが、ニコルは目を伏せ、事の成り行きを見守っているようだ。

 同じ冒険者ギルドだ。少なからず俺の功績は伝わっていいとも思うが、主に活動していた場からは遠い地だ。確かに信用という部分では欠けてしまうかもしれない。

 俺は溜め息を吐きながらギルドマスターの前まで歩く。


「ほぉ、俺の前に立つか。てっきり逃げて行くのかと思ったぞ」

「公正なはずの冒険者ギルドのやり方が少し気に入らないだけですよ」

「聞き捨てならないな。冒険者ギルドが公正でないと」

「裏で実際こういう事してますからね。本来であれば俺はランクBなんでしょう?」

「……確かにそうだ。だが、不正をしていないと確かめるのも、我らの仕事だ」


 流石に向こうも譲らないか。

 ならば【交渉】を発動しながら、(つつ)いてみるか。


「それで、俺が不正をしていなかった場合、冒険者ギルドはどうすると?」

「何?」

「不正をしている……というのはそちらの言いがかりです。それを受け、ここまで来て、不正でないと証明する。『その労力に見合った対価は何か?』と聞いています」

「っ! ……面白い。では、ランクBに見合う実力を証明出来た場合、お前をランクBにして――」

「――それは元々決まっていた事でしょう?」

「……」


 ここで引いては駄目だ。この大口に見合った対価を向こうに出させないと、ギルドマスターに俺の存在感を刻み込めない。

 これは、今後行動していく上で、必要な事。

「ミケラルドに依頼すればなんとかしてくれる」という強烈な存在感をこの男に見せるには――、


「実力に見合った……という事は、俺の実力を見る事が今回の目的と思われます。つまり、あなたはランクBの実力者を測る事が出来る実力者という事になります」


 俺がそう言うと、ニコルが後ろから声を掛けてきた。


「ギルドマスターは冒険者時代、ランクSでした」

「では、俺があなたを倒した場合は?」

「豪胆……を通り越して馬鹿なのか。或いは野に隠れていた大物か。それは俺が判断する。が、いいだろう。俺に勝てた場合、ギルドマスター権限で、お前をランクAにしてやる」


 これ以上ない条件。

「ランクS相当の実力者に勝てたのだからランクSにしろ」だなんて、流石に烏滸(おこ)がましい。それに俺はちゃんと説明を受けている。信頼と実績がランクを上げると。

 この交渉で二ランクも上がるのであれば、それは最高の条件だという事だ。


「ありがとうございます。それじゃあ早速やりましょうか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
[良い点] >やたら胸元が涼しそうなお姉さま。  夏、下乳と肋の接触面と谷間辺りが暑くて暑くて不快です。  ①これが肉体の描写である場合、このお姉さまはすっきりとした胸元の可能性があります。  ②衣…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ