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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第二部

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504/917

その501 プリシラ

前話の、「人物紹介索引」ですが、150以上のキャラを書きました。前に見た時より増えてたら書き足してると思ってください。

 ――信頼を求めているのであれば、連続して注文はしない。何故なら、信頼の確認にも時間を要するからだ。


 ジェイルの言葉は正しかったが、相手が直接確認しに来るのであればその限りではない。

 プリシラは俺に会いたくなかった。無論、拒否という意味ではなく、「願わくば」といったところだろう。

 先程の魔法……やはりそういう事なのだろうか。


「……『やはり』とは?」


 俺がそう言うと、プリシラは困った様子で俺に言った。


「返答に困るね」


 本当に困っていらっしゃる。

 眉をハの字(、、、)にし俺を見た後、正面を向くプリシラ。

 やがて足を振り下ろし、「よっ」と言って俺が造った簡易ベンチを降りた。

 そして、コゾモフ村とは反対の方を指差しながら言った。


「少し歩こうか」


 俺は頷き、ベンチを土に戻し彼女の隣を歩いた。


「流石だね、私と会った痕跡を消す、か」

「敵が多い、とヒルダ殿に聞いたもので」

「ははは、違いない」


 声は幼女のものだが、対応はやはり大人びている。

 歩き方、仕草、視線、呼吸――彼女の一挙手一投足がそれを物語っている。

 肉体は若々しくとも、ヒルダが言ったように魔力は……。


「そうだね、まずはそれから答えようか」

読心術(どくしんじゅつ)がお得意で?」

「キミ程じゃないけどね」

「お世辞は貴方のが上ですね」

「その世辞にはのせられといてあげるよ」


 くすりと笑ったプリシラに俺も微笑み返す。

 すると、彼女はすんと鼻息を吐いてから言った。


「おかしな話だろう? 師匠の私がリルハやヒルダより弱いなんて?」

破壊魔(はかいま)パーシバルは魔帝グラムスより強い魔力を持っていますし、そんなに珍しい事じゃないかと」

「うん、確かにね。あれは弟子が師を追い抜いた典型的な例さ」

「……まるで違う例でもあるかのようですね」

「ないとでも?」


 俺はうーんと唸り、虚空を見る。

 師を追い抜く以外の実力の逆転……か。


「あ」

「気づいたかい? でも、その先は言うんじゃないよ?」


 プリシラがこう言ったのには理由がある。

 そうだ、俺は彼女の見てくれ(、、、、)に騙されるところだった。

 彼女は年齢不詳のリルハと、老齢のヒルダの師なのだ。彼女たちが師を追い抜いたのではない。プリシラが弱くなった(、、、、、)のだ。


 ――原因はそう、老化である。


「これでも全盛期は凄かったんだよ? でも、人間である以上、老いには逆らえない。そういう事さ」

「リルハ殿も使われているその秘術(、、、、)、それが原因ですか?」


 俺の考えが正しければ、プリシラやリルハは、自身を幼女の身体にする事で魔力消耗を抑えている――はずだ。


「半分正解かな」

「というと?」

コレ(、、)は肉体的行動を円滑にするための知恵。(むし)ろ、これがなければ私は外を出歩く事すら出来ないだろうね」


 活動補助のパワードスーツのようなものか。

 だが、そんなパワードスーツにも動力となるエネルギーが必要。

 それが魔力という訳だ。


「つまり、魔力を使う事で生きながらえている」

「筋力が落ちれば身体の機能は低下する。それを活性化させるには若々しい身体が必要。何とも皮肉の効いた話だろう? ベッドから起き上がれないのにどう身体を維持すればいいのか。その答えがコレだ」

「肉体的維持を求め、それを強引に魔力で補う。しかし、その代償は魔力の――……」

「そうだね、そこから先は私に譲るべきだ。そういう事さ、魔力の老化が進んでいる」


 この話、ナタリーが聞いたら俺を褒めてくれるのではなかろうか?

 なるほどな、あちらを立てればこちらが立たずという訳だ。


「……生にしがみついている訳では……なさそうですね」

「人間にしては長く生きたつもりだからね。今更どうこうするつもりはないし、いつ死んだって構わない」

「しかし、敵から隠れるという事は――」

「――もう少しだけね、生きなくちゃいけない」


 彼女はいつ死んでも構わないと言ったが、それは彼女の()ぶん。だが、そこに彼女以外の何かが絡むのであれば、その答えは変わってくる。


「【天啓】……ですか」


 言うと、プリシラはにこりと笑った。


「いいね、とてもいい推察だ」

「貴方の意にそぐわない力が働いているのだと思いました」


 天啓――勇者エメリーに訪れた神からの啓示。

 それがプリシラにも……?


「けど違う」

「では一体?」

「ヒルダの眼の事はクルスから聞いてるだろう?」


 法王クルスが漏らしたなんて、一体どこで知ったのやら。


「予知の魔眼……でしたっけ?」

「そこまで万能じゃないけどね」


 そういや法王クルスもそんな事を言ってたな。

 しかし気になる言い方だ。まるで、ヒルダの魔眼の事じゃないような?


「突如として、ある光景が頭に浮かぶのさ。そして、その光景は必ず現実のものとなる」


 そう言った後、俺は足を止め考え込んだ。

 振り返ったプリシラは、静かに俺の頭の整理を待っているかのようだった。


「っ! そうか、ヒルダ殿の魔眼ではなく……貴方の!」

「やはり聡いね。そう、ヒルダはただの伝言者。各国に危険だと思われる情報を流していたのは、私だよ」


 そうか、そういう事だったのか。


「そして、今この場で私とキミが見合っているこの状況こそ……私の最後の予知だ(、、、、、、、、)

次回:「その502 プリシラの家」

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