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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第二部

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497/917

その495 現地の仲間

 ◇◆◇ ドノバンの場合 ◆◇◆


「一体何だ、この面子(めんつ)は……」


 呆れる私を呆れ眼で見るのは、ミナジリ共和国の外交官【コバック】だった。


「ふん、それはこちらの台詞だ……」


 コバックはリプトゥア国の元闇奴隷商人。

 そして私も、リプトゥア国の暗部に所属していた。面識こそあるが仲良くはない。共に同じ(あるじ)を持つという共通点がなければよかったのに。同じ場所にいるだけで吐き気がする……!

 それに警護を務めるあの二人も。


「【イチロウ】、こちらは問題ない」

「【ジロウ】、風が気持ちいいぞ」

「……確かに」


 元闇ギルドの闇人(やみうど)なだけあって、私とコバックより戦闘能力はあるものの、緊張感が足らん顔をしている。


「ミナジリ共和国とリプトゥア国の関係を取り持つため、外交官のコバックが派遣されたはずなのに、何故我々はこんな僻地(へきち)にいるのか……!」


 すると、私の愚痴を拾ったコバックが言う。


「ミケラルド様が言ってただろう。北東から不死王リッチが進軍しているから、その警戒と詳細な地図作成任務だ」

「外交官という肩書はどこへ行った、どこへ……」

「リプトゥア国に詳しい我々に適した任だ。他国の情勢や地理を調べるのも私の仕事と言える。それにこれは、リーガル国からの依頼でもあるしな」

「くっ、だからこんな奴の護衛など嫌だったんだ。ミケラルド様もミケラルド様だ。我々の関係を知って尚、笑いながら押し付けおって……!」

「我々の過去の愚行の『おしおき』だと言ってたぞ。そう考えれば何とお優しい事か」

「……確かにそうだな」


 と、私が言うも、イチロウとジロウは何故か闇のオーラを(まと)って私に殺意を向けていた。え、何だこれは?


「貴様、ミケラルド様に対して何という言葉か?」

「その首、塩漬けにしてやろうか?」


 そういえばこの二人は、ラジーンによってミケラルド様への忠誠を叩き込まれていた。皆ミケラルド様に血を吸われたが、仲間同士で迂闊な事が言えぬとはどういう事か。


「は、はははは。言葉の綾というやつだ! 私のミケラルド様への忠誠は決して折れず曲がらず! オリハルコンの如き硬きモノよ!」

「……ふん、ミケラルド様にコバック殿の警護リーダーを任されたのだ。リーダー然とした態度でいてもらわねば困る。そうだろう、イチロウ」

「ジロウ、風が気持ちいいぞ」

「……確かに」


 一生風と戯れておれ。


「……ふむ、完成だな」

「おぉ、出来たかコバック!」


 コバックの手によって広げられた地図を覗き込む私。


「うーむ、素晴らしい出来だ」

「素晴らしい出来だぞ、イチロウ」

「見ろジロウ! (あり)だ!」

「蟻だなイチロウ!」


 イチロウは、何故こんなにも抜けているのか。

 ラジーンのしごきで精神を病んでしまったのかもしれん。

 だが、イチロウの武力は侮れない。今や、かつてのラジーンを彷彿させる実力を有している。

 この中で言えば、一番の実力者と言える。

 実際、我々の構成は悪くない。魔法攻撃は私とコバック。ジロウが前衛をし、イチロウが遊撃を担当。ミケラルド様により託されたオリハルコンの武具により、更に戦力向上し、パーティランクがSS(ダブル)に近いと言えるだろう。

 だからこそ、この任務にはミケラルド様も注視している。


「むっ!」


 コバックが何かに反応した。

 瞬時にコバックは地図を丸め、その場に膝を突いた。

 この反応は……! もしやっ!


「「ははぁっ!」」


 誰よりも早く跪い(ひざまずい)たのはイチロウとジロウだった。


「ひ、ひぃ!」


 私は情けない声を挙げている事さえ忘れて、両の膝を突き大地に伏せた。

 コバックは荷物の中からイソイソとアレを取り出している。

 そして、深紅の敷物の上に、アレを置いたのだ。

 アレとは(すなわ)ち、我々が旅立つ前に、ミケラルド様に無理を言ってまでして頂いた――神とのホットライン。

 そう、我々は願ったのだ。ミケラルド様に――【御神体】を。

 ミケラルド様は呆れながら言った。「え、俺を(かたど)った人形? それに【テレフォン】を?」と。

 我々を気味悪がりながらも、ミケラルド様は悪乗りした様子でアレを造ってくださった。その名も『ディフォルメ版ミケラルド人形MK-1(マークワン)』。『でぃふぉるめ』なる言葉がどういう意味なのかはわからなかったが、二頭身にまで縮められた【御神体】を見た時、イチロウとジロウは恍惚とした表情をした後、それにひれ伏していた。

 その御神体が今、発光している。

 つまりこれは……神からの交信!


「「ははぁっ!!」」


 全員の声が揃ったところで、【御神体(テレフォン)】が起動する。


『ちぇっくちぇっくわんつー。わんつー、つー、つー。本日は晴天なり。つー、つー』


 これだ、ミケラルド様はいつもこのような不可解な言葉を仰られる。


「ミケラルド様のお声が聞こえるな、イチロウ」

「聞こえるぞ、ジロウ」


 風と蟻はどうしたイチロウ!

 小声で喜び合う二人をよそに、コバックが言う。


「ミケラルド様、コバックにございます」

『あ、届いてた。いい加減【テレフォン】が起動したらそっちから喋ってくれない? 喋ってくれないと通じてるかわからないんだけど?』

「いいえ、そのような事、出来るはずもありますまい!」

『そうですかそうですかー、わかりました。あぁそうそう、早速だけど進捗はどう?』

「は! 今しがた地図が完成したところにございます」

『おぉ、さっすが優秀だね』

「「おぉ!」」

『コバックは一度転移で帰国し、地図の複写を。ドノバンたちはそのままそこで警戒続行ね』

「「ははぁ!」」


 ミケラルド様の新たな指示を頂いた我々。

 ふふふふ、これでコバックの顔をしばらく見ないで済――――待て?


「ミケラルド様だったな、イチロウ!」

「あぁ、ミケラルド様だったな、ジロウ!」


 私は、この二人と一緒に数日過ごすのか……!?

この四人、好きかもしれない。


次回:「その496 不信感P」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] イチロウとジロウに、一体何が...!? [一言] 確かに大分キャラも増えてきているので閑話休題的な感じで出してもらえると有難いですね~
[良い点] 素敵な四人です。
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