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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第二部

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481/917

その479 双黒の賢者

2021/1/18 本日一話目の投稿です。ご注意ください。

 魔皇(まこう)ヒルダの授業は魔の基礎や、その立ち回りに関するものばかりだった。

 ヒルダが活動していた時代と比べると、魔法使いの動きも洗練されている。だが、ヒルダはしっかりとそれを学び、応用し、更なる可能性まで示した授業を進めた。

 これにより、冒険者たちも彼女の勤勉さに感銘を受けていたのは言うまでもない。

 座学のみに終わった初回のヒルダの授業だった。しかし、俺はこの後ヒルダと会う約束をしている。

 それは当然、ミケラルド・オード・ミナジリとしてであり、約束(アポ)を取り付けてくれたのは冒険者ギルドのギルドマスターであるアーダインである。

 という訳で、俺は法王国の冒険者ギルドを訪れた。

 因みに、俺に付いている闇人(やみうど)は全員吸血済みなので、エレノアへの報告は適当だったりもみ消されている事が多々ある。

 応接室へ入った俺はアーダインと共にヒルダに会った。


「ヒルダと申します」


 先程も聞いた挨拶だが、こちらの挨拶の方がやはり堅苦しい感じがする。何故だ?

 そうだった、俺はミナジリの国の元首だった。

 冒険者とはいえ、国のトップが面会を申し出たらそりゃかしこまるよな。


「ミケラルドと申します。今日はお忙しい中ありがとうございます」


 俺の挨拶に目をぱちくりとさせたヒルダ。


「……あの、何か?」

「いえ、国家の長らしくなかったもので……」


 アーダインにギロリと睨まれるのは、ヒルダ――ではなく俺でした。

 少しは元首らしくしろと言いたげな圧力である。

 あの人、俺の秘書か何かだっけ? ロレッソみたいでとても怖い。


「すみません、こういう性格なもので」

「嘘だ」


 結構食い気味でアーダインが言った。

 はい、その通りだよ。


「ふふふ、腹芸を見破られている相手を前に腹芸を披露されていたのですね」


 くすりと笑うヒルダ。


「つまりそういう性格だと?」


 そしてじっと俺を見て言った。

 何とも深い瞳だ。怖くてこちらから踏み込めない程に……。


「は、はははは」

「ふふ、リルハから連絡を受けた時は驚いたものです」

「……もしかしてギルド水晶を?」

「えぇ、それが何か?」


 俺はちらりとアーダインを見る。

 しかし、アーダインは首を横に振った。

 なるほど、商人ギルドにはこの情報を回していなかったのか。

 いや、しかしこれは仕方ない。たとえ冒険者ギルドと商人ギルドのギルドマスター同士でも伝えにくい事もある。特に相手は商人だからな。

 しかし失敗だった。リルハには黙っててもらえばよかったな。

 どんな理由があろうと、俺が魔皇ヒルダに会いたい意思が【観測者】に伝わってしまった。



「……アーダイン?」

「ミケラルド、構わないか?」

「えぇ」


 ヒルダに対し情報開示する事を俺に許可を求めたアーダイン。

 俺はそれに了承の意を見せると、アーダインはヒルダにギルド水晶に潜む盗聴機能について説明した。


「……興味深い話ですね」

「目下調査中だが、【火竜山】の地下にはその存在がいたと思われる隠し部屋を発見した。最近まで住んでいた痕跡を残してな」

「わかりました。ミケラルド様、この件を我が師に報告しても?」

「構いませんが、一つお願いがあります」

「あ……これは失礼を。そうでしたね、ミケラルド様は【双黒(そうこく)の賢者】――我が師【プリシラ】にお会いしたいそうですね」


 俺は首を縦に振った。

【プリシラ】……それが双黒の賢者の名前。

 これでようやく現代日本と繋がる可能性のある人物に近付ける。


「ですが、それには師の許可が必要です」

「というと?」

「我が師にはミケラルド様が想像するような力はありません」


 どういう事だ?


「実力だけで言うのであれば、冒険者のBランク程です」

「何ですって?」

「ですが師には膨大な知識があります。それ故、師には非常に敵が多いのです。見知らぬ者をそう易々と紹介する事が出来ない……と言えばミケラルド様にもおわかりになるでしょうか?」


 なるほど、知識を持つが故の弊害か。

 知識は宝。その宝を奪われる訳にも利用される訳にもいかない。

 俺に害意があろうとなかろうと、それは関係ないのだ。

 プリシラに会うため、俺に必要なのは信頼。しかし、会う事も出来ない相手に対しどう信頼を勝ち得る?

 俺がそんな事を考えていると、ヒルダは懐から手紙を取り出した。


「これは、師から預かって来たミケラルド様への手紙です」

「……開けても?」

「いえ」

「え?」

「師からの伝言をお伝えします」

「伝言?」

「『自国で開くように』と」

「自国……つまりミナジリ共和国で開け……と?」

「えぇ」


 ……プリシラの狙いがよくわからないが、俺はそれを呑むしかないのだろう。

 受け取った手紙を懐におさめた俺は、すんと鼻息を吐いてから言った。


「ありがとうございます、ヒルダ殿」

「ふふふ、不満を呑み込んで下さってありがとうございます」

「こういう方なんですね?」

「えぇ、とても用心深く、とても思慮深く、そしてとても可愛らしい御方です」


 ニコリと言ったヒルダは、先程の不可思議な雰囲気を感じさせなかった。

 俺は再度ヒルダに礼を述べた後、冒険者ギルドを後にした。

 俺としてはこのままミナジリ共和国に戻って早いところ手紙を開封したかったが、今夜はエレノアへの報告がある。

 まずはあの円卓の間へ行こう。

次回:「その480 エレノア」


本日20時くらいに、もう一話更新予定です。

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