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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第二部

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478/917

◆その476 木龍の思惑

2021/1/10 本日一話目の投稿です。ご注意ください。

 木龍グランドホルツとミケラルド。

 その戦闘は正に地上で起こり得る最大の災害とも言えた。


「ここがディノ大森林でよかったよ」


 呆れながらそう言ったのはパーシバルだった。

 これに目を丸くして驚いたのはその師、魔帝グラムスである。


闇人(やみうど)だったパーシバルがそんな事を言うとはのう?」


 からかうように言ったグラムスにパーシバルが肩を(すく)める。


「あのね師匠? 闇ギルドは何も人間の滅亡を願ってる訳じゃないんですよ。僕だって良い生活は送りたいし美味しい物を食べたい。だから文明そのものが滅亡の危機になったら困るんですよ」

「確か武闘大会ではリプトゥア国を滅ぼすとか言ったと聞いたが?」

「アイツッ! あんなのただのおふざけじゃないかっ!」


 パーシバルの発言、その情報を持っている者は数少ない。

 その中でグラムスに告げ口するのは――ミケラルドしかいなかった。


「お主はまだ(たわむ)れと本気の度合いが見分けにくい。餓鬼だからと許してくれる世界におらぬ事は重々承知しているはず。気をつけい」

「くっ!」


 師グラムスからコツンとデコピンを貰ったパーシバルが、眼下で繰り広げられる戦闘を恨めしそうに見る。その後すぐに頭を上げ、隣にいるグラムスを見る。


「何じゃ、その間の抜けた顔は?」

「…………師匠、空飛んでますよね?」

「はぁ? 何を言っておる? 儂は飛べんからミケラルドが飛ばしてくれたんじゃろうが。あぁ、その【エアリアルフェザー】とかいう魔法、後で儂にも教えんかい」

「いや、そうじゃなくてっ」


 師相手にほんの少し語気を強くするパーシバル。

 そんなパーシバルの言葉を怪訝に思ったグラムスが首を傾げる。

 しかし、それは一瞬の出来事だった。すぐにグラムスが弟子パーシバルが言わんとしている事に気付いたのだ。

 二人はミケラルドを見下ろし驚愕の顔を露わにしたのだ。


「あやつ! 【サイコキネシス】で儂を浮かせたままあんな戦闘しとるのかっ!?」

「ホント何なんだ、アイツ!」

「何ちゅう集中力じゃ……!」


 そう、二人が驚いた理由はそこにあった。

 ミケラルドは、グラムスを飛ばすために、戦闘前から【サイコキネシス】を発動していた。意識的に発動しつづけなければグラムスは空から落下してしまう。だからこそミケラルドはグラムスを宙で支え続けた。集中を欠く事なく、Z区分(ゼットくぶん)の木龍グランドホルツを相手にしながら。


((……化け物……!))


 それは称賛か蔑称か。(ある)いはそのどちらもか。

 言葉にせずとも二人が思った事は同じだった。

 木龍グランドホルツと互角以上に戦い続けるミケラルドを見、感じ、二人は背中に冷たいナニカを感じた。


「おぉおおおおおおおおおりゃっ!」


 木龍グランドホルツの下から顎を打ち抜く一撃。

 遂にミケラルドの攻撃が決まり始めた。

 堪えようとする木龍グランドホルツだったが、この一年、戦い漬けだったミケラルドの判断はそこで鈍る程、(やわ)ではなかった。

 打ち上がった頭を【サイコキネシス】で固定し、一瞬の時を稼ぐ。

【サイコキネシス】を打ち破った木龍グランドホルツが、強引に頭を下げると同時、ミケラルドは再度その顎をかち上げたのだ。


「ぐぉっ!?」


 それがミケラルドの作戦だったと知った時、木龍グランドホルツの逃げ道は限りなく少なくなった。


(顎を下げれば打ち抜かれ、かといって顎を上げたままでは後ろに倒れる)


 木龍グランドホルツは数限りある一手を投じた。

 そのまま仰け反り、バク宙をするようにミケラルドに尻尾を向けたのだ。

 この尾撃をミケラルドは待っていた。


「おっしゃあああああっ!」

「馬鹿な!? 誘われたのかっ!」


 尻尾を大きく掴んだミケラルドが()える。


「おぉおおおおおおおおおおおおっせいっ!」


 木龍グランドホルツが一回転する前に尻尾を掴み、更にそこから強引に押し込む。

 大地を軋ませ倒れた木龍グランドホルツの身体に強い衝撃が走る。


「ぐうぅう……」

「途中まで回ってくれたから一本背負いって言わないよな? 半本背負い? いや、押し込んだし、背中を経由してないしな?」


 首を傾げながら先の技名を考えるミケラルド。


「うぅ……」


 (うめ)き声を出す木龍グランドホルツの眼前まで跳んだミケラルドが聞く。


「痛かった?」

「……くっ、まったく。まさか吸血鬼に負けるとはな……」

「回復魔法いる?」

「いらん。だが――」

「――だが?」

「身体が動かん。起こせ」


 その後、角を掴み木龍グランドホルツを起こしたミケラルドがその対面に腰かける。

 その隣にはグラムスとパーシバルが座っている。


「さぁ、何でも話すし聞くぞ」


 呆れ、観念したかのように言った木龍グランドホルツに対し、ミケラルドがずいと前に身体を動かす。


木龍(アンタ)の思惑を知りたい」

「思惑?」

「あそこでノビてる【ヘルワーム】、襲ってきたのに手を抜いてたのは何で?」


 そう聞いたミケラルドに、木龍グランドホルツは深い溜め息を吐く。


「仕方ない、話してやろう」

次回:「その477 真実」

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