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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第二部

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475/917

◆その473 ガチンコ勝負

2021/1/7 本日三話目の投稿です。ご注意ください。

【ヘルワーム】は不気味にうねりながらミケラルドに身体を向けた。

 その刹那、【木龍グランドホルツ】が動いた。

 四足で駆け、【ヘルワーム】の真横から鋭利な一本角をぶつけようとした。

 しかし、【ヘルワーム】は身体をたわませ(、、、、)、角が当たる部分に空間を作った。そして、再度身体を伸ばし、自身の身体でその一本角を縛ったのだ。


「っ!?」


 動きを止められた【木龍グランドホルツ】。

【ヘルワーム】は力を入れ、そのまま身体をねじらせミケラルドを驚かせた。


「マジか、持ち上げちゃったよ」

「それよりあの巨体の負荷がかかって折れないあの木の角って何なの?」


 パーシバルの驚きは別にあったが、次の驚きは二人とも同じであった。

【木龍グランドホルツ】は首を強引に(ひね)り、【ヘルワーム】に思わぬ力を見せた。轟音を響かせ、大地に身体が戻った【木龍グランドホルツ】が更に続ける。


「ほっ! 持ち上げ返したか!」

(大怪獣戦争って感じだな)


 グラムスが興奮し、呆れ顔を見せるミケラルド。

【木龍グランドホルツ】がぐるぐると首を回し、遠心力をきかせて【ヘルワーム】を引き剥がす。同時に吹き飛ばされた【ヘルワーム】が、ミケラルドたちの横にある木々をなぎ倒し倒れる。

 直後、【木龍グランドホルツ】が追い打ちをかけようと動くも、【ヘルワーム】の姿はもう既にそこになかった。見えたのは、【ヘルワーム】がいた真下にある大穴だけ。


「なるほどのう、大地を潜っていたのは【ヘルワーム】か」

「これは……ちょっとまずいですね」


 ミケラルドが言うと同時、グラムスは空中へ飛ばされた。


「特等席じゃな」

「パーシバル! 師匠をしっかり守れよ!」

「うぇ? わ、わかってるよ!」


 パーシバルは、ミケラルドに飛ばされたグラムスを追い、【エアリアルフェザー】で飛び上がる。

 後方に跳び、警戒するミケラルドが腰を落とし大地に手を置く。

 それは、【木龍グランドホルツ】も同じだった。


「っ! おい! もう真下にいるぞ!」


 咄嗟にミケラルドが【木龍グランドホルツ】に注意を促したのは、龍族に知性があると知っていたからだろう。

 直後、【木龍グランドホルツ】が【ヘルワーム】の接近に気付くも、時は既に遅かった。

 大地から飛び出すように現れた【ヘルワーム】は、先程より細く長い姿に変形しており、瞬時に【木龍グランドホルツ】の身体に巻き付いた。


「ガァッ!?」


 全身の力を使い【ヘルワーム】が【木龍グランドホルツ】の身体を締め付ける。

 直後、ミケラルドの鼻に強い刺激臭が届く。


(締め付けると同時に身体から酸を出してるのか。あれじゃいくら木龍が丈夫だとしても体表が溶かされちまう。さて、どうしたものか)

「ガ……ガ、ガガ……ガァアアアアアアアッ!!」


 なんと、【木龍グランドホルツ】は締め付けられながらも大地を駆けたのだ。

 大地を穿ち、目にも止まらぬ速度。自身の身体を木々にぶつけながらも、それ以上のダメージを【ヘルワーム】に与える。

 それを見ていたミケラルドが大きな溜め息を吐く。


「自然破壊が物凄いな。何かこう……もっとスマートに出来ないもんかね?」


 そう言った後、ミケラルドが跳び上がる。

 そして、中空を蹴り、【木龍グランドホルツ】たちに追い付いたのだ。

 木々をなぎ倒し進む【木龍グランドホルツ】の前にミケラルドが下り立つ。

 巨大な質量が迫る中、ミケラルドは緩やかに歩を進めた。そしてそれが徐々に速度を上げ、【木龍グランドホルツ】の速度を上回った時、ディノ大森林に轟音が響き渡った。


「ぬおっ!?」

「あいつ一体何やったんだよぉ!?」


 閃光と共にやってきた突風以上の衝撃波が空にも届き、グラムスとパーシバルを驚愕させる。辺り一帯が更地になった場所を見下ろす二人。

 そこには、頭を抱えるミケラルドが(うずくま)っていた。


「……ふん、あんな無茶するからだ」

「頭からいったのかのう?」


 二人がミケラルドが蹲っている理由をダメージによるものだと考えているも、それは違った。ミケラルドは蹲りながら呟いた。


「俺のが自然破壊してるじゃないか……」


 そう嘆いていた。


「……そうだ! これ以上被害を広げないための最小限の破壊。そういう事にしよ。寧ろそうするべきだったんだ」


 と、自分に言い聞かせ、ミケラルドはすっと立ち上がった。

 眼前には蹌踉(よろ)めきながらも四つ脚を大地に付ける【木龍グランドホルツ】。

 衝突により【木龍グランドホルツ】の身体から引き剥がされ、うようようねる【ヘルワーム】にもダメージが見える。

 ミケラルドは魔力を抑えていた。だからこそ、最初は睨んでいた【ヘルワーム】も見向きはしなかった。しかし、今は違う。

 ミケラルドの魔力は完全に放出されており、【木龍グランドホルツ】、【ヘルワーム】の両者にとって脅威と言えた。

【木龍グランドホルツ】が【ヘルワーム】を見、ミケラルドに視線を向ける。

【ヘルワーム】が【木龍グランドホルツ】を見、やはりミケラルドに視線を向けた。

 そう、両者は両者の戦闘を諦め、新たな敵を見つけたのだ。


「それじゃ、ガチンコ勝負といこうか」


 そんな二体のZ区分(ゼットくぶん)を前にしながらも、ミケラルドの表情は(いささ)かも揺るがなかった。

次回:「◆その474 支配者」

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