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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第二部

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467/917

◆その465 茶番2

「あれを受けて傷一つなしか……」


 剣神イヅナが苦笑する。


「あれだけ特訓したのに、こっちが傷付くぜ」


 肩に大剣をどんと載せる剣鬼オベイル。


「いやぁ、お二人共お強い……」


 ミケラルドが土埃(つちぼこり)を払いながら言う。


「どの口が言う」

「闇ギルドの戦力がうなぎ上りじゃねぇか」


 デュークの姿とはいえ中身はミケラルド。

 イヅナとオベイルは旧友をからかうように言った。


「少しはカッコイイところを見せておかないと上に文句を言われちゃうので――」

「――やってみよ」

「――おっしゃ来いやぁっ!」


 身構えるイヅナとオベイルが吹き飛んだのは、その直後だった。

 二人の身体に残る鈍く軋むような痛みは、ミケラルドの魔力波を浴びた事が原因だった。


(ぬぅ……! 魔力だけでこの威力!)

(しかも俺たちを殺さないように手加減してコレかっ!)


 イヅナ、オベイルが木々をなぎ倒し吹き飛んで行った時、ミケラルドの姿は既になかった。


「っ!」


 リィたんは目を見開き、ハルバードを構えた。

 しかし、構えた瞬間、そのハルバードは強力な力によって弾かれていた。

 ハルバードの行方を目で追ったリィたん。だが、これはミケラルドによる誘導でもあった。

 その視線の誘導があったからこそ、ミケラルドは勇者エメリーと剣聖レミリアの懐に潜り込めたのだ。


「あ、ここ。もうすぐ爆ぜますよ」

「「え!?」」


 直後、大地が爆ぜる。

 エメリーとレミリアが吹き飛ぶ。


「「わわわわわっ!?」」


 ナタリーとメアリィが慌ててエメリーの方へ。

 クレアが慌ててレミリアの方へ向かいその身体を受け止める。


「午後のお天気は晴れ時々……ハルバード」

「「え?」」


 ハン、キッカ、ラッツ、そして聖女アリスの足下にミケラルドが叩き落としたハルバードは、先程同様大地を砕いた。


「「きゃっ!?」」

「「ぐぉっ!?」」


 中空でニヤリと笑うミケラルドの下へリィたんが跳び上がる。


「しっかり受けろよ」

「ぬんっ!」


 身体に力を込め、ミケラルドはリィたんの攻撃を正面から受けた。

 叩き落とされたミケラルドに向かい、炎龍(ロイス)が叫ぶ。


「そこなのだ!」


 ロイスの口から噴き出る強烈な火炎ブレス。


「こなくそっ!」


 両の手を交叉させ、正面からそれを受けきるミケラルド。

 衝撃により後方まで吹き飛ばされたミケラルドへ、ダメージから回復したイヅナとオベイルが追い付く。


「「吹っ飛べ!」」

「神剣、嵐壊(らんかい)!」

「鬼剣、爆裂!」


 (あぎと)の如く上下から向かう両雄の剣は、確かにミケラルドを捉えた。

 ガキーンという人間らしからぬ金属的轟音と共に、ミケラルドは土煙を上げて更に後方へと吹き飛んだ。

 大地に十の指を突き立てブレーキを掛けたミケラルドが、オベイル家を見つめすくりと立ち上がる。


「なるほど! 水龍、剣神、剣鬼、更には勇者に剣聖がいたのでは割に合わないようだ。いずれまた相まみえん! とおっ!」


 颯爽とその場を去ったミケラルドを見て、イヅナとオベイルが見合う。


「面白い、しばらくここに厄介になろう」

「だろ? 爺ならわかると思ったぜ!」


 剣神や剣鬼という立場であろうとも、ミナジリ共和国の元首ミケラルドと戦える機会は余りない。しかし、相手が戦わざるを得ない場合であれば、話は別だ。ミケラルドは闇人(やみうど)としてここへ何度も来る事になるだろう。この二人にとって、それは大きな機会以外の何物でもなかった。


「あいちちち……いやぁ、やっぱりあの人は凄いね。でも、ここにいれば特訓には事欠かないんじゃないかな?」


 勇者エメリーがお尻を抑えながら言うと、剣聖レミリアがくすりと笑った。


「確かに、闇の仕事の合間に私たちの訓練を手伝っているかのような戦い方でしたし」


 ナタリーは膨れ、


「んもう、後で文句言わなくちゃ」

「ふふふ、あの人なりの考えがあるんですよ、きっと」


 メアリィはそんなナタリーをなだめた。


「面白い任務ですね」


 クレアがリィたんにそう言うと、


「これだからやめられないのだ」


 拳を握るリィたんがニヤリと笑う。


「ロイスー、怪我ないー?」

「大丈夫なのだ! とっても楽しかったのだ!」


 キッカがロイスを気遣うも、ロイスはほんの少しの戦いにもかかわらず満足した様子だった。

 それを見て呆れた様子のハンがラッツに言う。


「あれで手加減してるのか?」

「現に我々が生きてるからな」

「にしても大丈夫なのかね、あの御方は」

「大丈夫だろう」

「何でそう言い切れるんだよ?」

「戦いながら周囲に気を張っていた。リィたん殿とあの御方は気付いたようだったな」

「何に?」

「何かに、だ」

「へいへい、そうですかい」


 肩を竦めたハンと、剣を強く握るラッツ。

 ラッツの言うとおり、リィたんとミケラルドは気付いていた。

 この大立ち回りという名の茶番の中、一人だけここを注視しなくてはいけない存在がいた。(とき)の番人は十二人。その十二人は世界の実力者たちを見張り、警戒している。

 今回、ミケラルドが与えられた任務は炎龍ロードディザスター、(すなわ)ちロイスの襲撃。その中にいたのは剣神イヅナという冒険者の(いただき)

 ミケラルドは【呪縛】で操った刻の番人サブロウから聞き、知っていたのだ。

 この場にもう一人、剣神イヅナを見張っている刻の番人がいる事を。

 これだけの大きな戦闘中、ミケラルドは人が隠れやすい林に吹き飛んだ。

 しかし、それがもしミケラルドによって誘導された場所だとしたら。

 イヅナとオベイルが気付かぬ内に追い込んだ林に、その刻の番人がいたとしたら。

 そう、ミケラルドが引いたのには理由があった。

 剣神イヅナを見張る刻の番人――【ノエル】がその林にいるとわかったからである。

次回:「◆その466 ノエル」

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