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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第二部

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その462 乙男の純情

「酷過ぎる!」


 俺はそう言いながらリィたんの部屋のテーブルを叩いていた。


「そんなにご褒美とやらが欲しかったのか?」


 ハルバードの手入れをしながらリィたんが言う。


「そうじゃないよ、シギュンは乙男(おとめ)の純情を踏みにじったんだよ!」

「ははは」


 乾いた口調で笑ったのは、呆れた視線を向けるナタリーである。


「催促はしたのか?」


 リィたんの疑問は(もっと)もであるが、俺がしないはずがない。


「『うふふ、また今度ね♪』だってさ! この調子で最後までよこさない気だあの女!」

「もうあの女呼ばわりしてる」

「前のミナジリ定例会議の時、ナタリーだって言ってたじゃん!」

「私は元々そう言ってたし」

「せめて耳元にふっと息を吹きかけてくれたり、アダルトな口調でにじり寄るとか、やりようはあるだろう!」

「本当にされたら困るくせに何言ってんの」


 くそ、ナタリーには全て見透かされている!

 俺が歯痒そうにしていると、リィたんが俺に歩み寄ってきた。


「え?」


 そして、俺の顔の横に顔を置き、ふっと耳に息を吹きかけたのだ。


「っっ!?!?!?」

「こんなものの何がいいんだ、ミック?」


 顔が火傷しそうな程に熱い。炎耐性を持っている俺でもこれほどの熱は経験がない。自分の耳を押さえ目を丸くする俺と、「リィたん、ステーイ!」と叫びリィたんに跳びかかるナタリー。

 小首を傾げるリィたんに、ナタリーが言う。


「乙男の純情を何だと思ってるの、リィたん!」


 おかしい、ナタリーはさっきあの言葉を嘲笑していたはずだが?


「そんなに悪い事をしたか?」


 頬を掻きながら困った表情を見せるリィたん。


「めっ!」


 子供を叱りつけるようにナタリーが言う。


「すまん」


 しゅんとするリィたんだが……リィたんが悪い部分は何一つないのでは?

 あれか? 年齢区分(レーティング)だろうか? 確かにリィたんはZ区分(ゼットくぶん)だ。

 ナタリーという少女の前でそんな事はダメというお叱りなのかもしれない。

 ならば、今度リィたんには、俺とリィたんの二人きりだけの時なら問題ないと伝えるべきだろう。ナタリーがいない時に教えてやろう。


「ミックはまだ四歳だからダメ」


 くそ、教えられなくなっちまった。

 そういえば俺のがお子様だったぜ。


「何歳からならいいんだ?」

「十五歳!」


 この世界での成人年齢である。


「ふむ……まぁ後十一年なら風のように過ぎ去る、か」


 龍族ですからね、そうなりますよね。


「それよりリィたん、準備出来たの?」

「問題ない、ナタリーはどうだ?」

「私もバッチリッ!」


 親指を立てるナタリーに、俺は首を傾げた。

 そういえば、リィたんもハルバードを磨いてたし、ナタリーも身軽そうな格好だ。この後何かあるのだろうか? まぁ、俺は俺で炎龍ロードディザスターをなんちゃって暗殺しに行くんだけど。


「二人とも、どこか行くの?」

「指名依頼よ、【オリハルコンズ】の」


 ナタリーの言葉に、俺の耳は一瞬接触障害を起こしていた。


「は?」

「あれ、言わなかったっけ? 【ガーディアンズ】がそのまま【オリハルコンズ】に吸収合併したって話」

「聞いてない」

「じゃあ、今言ったって事で」


 言いながらナタリーが部屋を出て行こうとする。


「ちょちょちょちょ! え、マジで?」

「そうだよ、法王国最強のパーティ。どう、カッコイイでしょ?」


 ニカリと笑うナタリーは、カッコイイというより可愛いのだが、そういう話をしているのではない。

 つまり、聖女アリス、キッカ、ハン、ラッツのオリハルコンズに、ナタリー、リィたん、メアリィ、クレア、剣聖レミリア、そして勇者エメリーのガーディアンズが加わったのか? 何だそれ、チートじゃん。


「十一人もいるパーティなんて聞いた事もないよ」

「そんな珍しくもないみたいよ」

「え? そうなの?」


 俺が聞くと、ナタリーの代わりにリィたんが答えてくれた。


「アーダインの話によると、魔王の時代はモンスターの数も多いという理由で十人超えのパーティも珍しくなかったそうだ」

「へぇ」

「アリスがマスタング講師に許可を貰いに行ってな。これから依頼消化に行くという訳だ」


 なるほど、それでアリスは講師室に用があったのか。

 リィたんにルナ王女たちの護衛をお願いしようと思ったけど、それなら仕方ないか。幸い、俺にはヒフミヨシスターズがいる。失われし位階(ロストナンバー)である彼女たちが守れば、大抵の事はどうにでもなるからな。


「では行ってくる」

「行ってきまーす!」

「行ってらっしゃーい」


 リィたんとナタリーを見送り、俺は一度ルナ王女たちの部屋を訪れた。

 新たな護衛の紹介をした後、俺は炎龍ロードディザスターの下へ向かった。

 正確に言えば、そこは剣鬼オベイルの家である。

 宿代節約とか言いつつ、剣神イヅナもいるそうだ。

 SSS(トリプル)二人とSS(ダブル)クラスの実力を持った炎龍ロードディザスター。これだけでも任務不可の文字が見えてくるレベルだ。

 だがしかし、これに更なる戦力――となれば、エレノアに『ありゃ無理っす』と言える訳だ。法王クルスは一体どんな手を打ったのか。

 そんな事を考えながら着いた剣鬼オベイルの家には……なぜか【オリハルコンズ】がいましたとさ。

次回:「その463 無敵のオベイル家」

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