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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第二部

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463/917

その461 ご褒美

「ご褒美、ご褒美~♪」


 らんらんるうとスキップする俺を追う視線が一つ。


「何やってるんですか、ルークさん」


 疑問ではない。始めから俺の意図に気付いているかのような聞き方だった。

 こんな聞き方するのは一人しかいない。


「アリスさん、お疲れ様です」

「そちらは講師室の方ですよね」

「ええ、所用がありまして」

「今しがた仰ってた『ご褒美』と何か関係があるんですか?」

「…………さぁ、何の事だか」

「あからさまに視線逸らして何言ってるんですかっ」


 ずびしと俺を指差しアリスが言う。

 一体、どこから漏れた? 闇ギルドより優秀な諜報機関を聖女が?

 いやいや、そんな事あるはずもない。……もしや、頭の情報を読み取る能力が?


「何を考えているのかはわかりませんが、つまらない事を考えているのはわかりました」

「……はて?」

「何で他の人にはこの人が存在Xだってわからないの……」


 呆れ眼を向けるアリスだが、彼女の言う存在Xとはやはり俺の事らしい。

 以前、冗談半分で依頼者名として使ったが、オリハルコンズにバレてたしな。


「ところで何かご用でしょうか? 私はこれから忙しいのですが?」

「まず、どこに行くのかくらい教えてくれてもいいじゃないですか。私とルークさんの仲なんですし」

「…………さて、私たち、そんなに仲良くなかったような気がしますけど」

「むかぁっ」


 声に出す人は初めてかもしれない。


「極秘な任務ですので」

「もしかして『ご褒美』ってあれですか?」

「どれでしょう?」

「この前、リィたんさんの部屋でナタリーさんに言ってたあの――」

「――わあ!?」


 俺は咄嗟に彼女の口を塞いで担いだ。オブラートに包まず言うと、つまるところ(さら)ったのだ。

 人目を避け、以前アリスに見つかった袋小路の場所までやって来ると、ジト目のアリスが言った。


「聖女誘拐事件」

「人聞き悪いですね」

「人聞き良い言い方があると?」

「……聖女拉致軟禁事件?」

「アウト寄りのアウトです」


 ついにルークはアウトローデビューを果たしたようだ。


「やっぱりシギュン様に会いに行くつもりだったんですね?」

「よくわかりましたね」

「よくわからないと思いましたね」

「この時間は講師室にいらっしゃるそうなので、調査報告がてらご尊顔を拝みに行こうかと」

「本音が漏れてますよ、ルークさん」

「掌の上の転がし合いをしているところなので、引くに引けないんですよ」

「そんなにシギュン様に会いたいんですか」

「まぁ、相手の狙いを探りつつ懐に潜りつつですかね」

「……本当に大丈夫なんですね?」

「おや? もしかして心配してくれてるんですか?」

「っ! せ、聖女としてです!」

「聖女って言われるのが嫌いだったあのアリスさんが、自ら聖女って……ぐすん」

「声に出す人は初めて見ました」


 どこかで聞いた言葉だ。

 俺が首を傾げていると、アリスは深い溜め息を吐いてから言った。


「……わかりました、私も講師室に用があるので一緒に行きましょう」


 それは珍しい。外出の許可でも貰いに行くのだろうか?


 ◇◆◇ ◆◇◆


「「失礼します」」


 俺とアリスが声を揃えて入った講師室。

 するとそこにはマスタング講師とシギュンがいた。

 シギュンは俺を見るなり特別講師室を指差し、そこへ誘った。

 健全な男児であれば、大抵綺麗なお姉さんに個室へ誘われるという夢を抱くはずだ。

 しかし、それは夢だ。現実に起こる事は極めて稀である。奇跡と言っても過言ではない。

 だが俺はやってのけた。たとえ相手が闇ギルドの重要人物だろうと美女は美女である。

 相手がどんな悪さをしていようとも、今どうにか出来る問題ではない。

 駆け引き。そう、これは駆け引きなのだ。

 そう思い、俺はシギュンと共に特別講師室へと入った。

 別れ際に、アリスが「気をつけてくださいね」と耳打ちしてくれたのだが、彼女は講師室に一体何の用だったのだろう。


「ここへ来たって事は報告があるって事ね?」


 特別講師室に入るなり、シギュンが俺に言った。

 俺は平静を装いながら彼女に報告事項を述べた。


「監視対象ファーラですが、強い戦闘力を持っていないと思われます」

「根拠は?」

「握手を交わし対象の魔力を直接探りました」

「……続けて?」

「会話で得た情報から、生を受けて間もない魔族ではないかと」

「確かに、マスタングも同じような事を言ってたわね」


 なるほど、マスタング講師もシギュンの支配下にいるという事か。


「……いいでしょう。今後も対象に接触を試み、出来るだけ情報を得なさい」

「はい」

「それと」

「へ?」

「ライゼン校長について、何か気付いた点はない?」


 やっべ、めっちゃあるわ。

 ……まぁ、これくらいなら言ってもいいか。


「ある特別講師が来校する日に限ってよく目にしますね」

「ある特別講師?」

「ミケラルド・オード・ミナジリ」

「っ! ミナジリ共和国の元首? ……魔族だから気に掛けているだけではないのかしら?」

「それはわかりかねます」

「わかりました、こちらで調べる事にします」


 後で忠告しておけばライゼン校長も回避出来るだろう。

 さて、いよいよご褒美の時間だ。


「もういいわ、下がってちょうだい」


 …………は?

次回:「その462 乙男(おとめ)の純情」

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