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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第二部

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459/917

その457 殺気大会

 オベイルが開催するという殺気大会。

 最初から広場集合ってのがオベイルらしいな。

 とはいえ、半日の授業でやるのだ。そんなに難しいものではない。


「殺気ってのは所謂(いわゆる)気合いの一つ……みたいなもんだ」


 流石オベイル。適当である。


「ん、そこの嬢ちゃん名前は?」

「わ、私ですか? サラです!」


 サッチの娘であるサラが立ち上がり返事をする。


「中央に来い」

「はい」


 何とも可哀想に。

 中央に向かうサラに、オベイルが殺気を向けた。


「っ!?」


 直後、サラは後方へ跳び、腰の剣に手を添えた。


「そう、それが正常な反応だ」


 ライゼン校長もやってたが、ピンポイントに狙って殺気を放つなんて、オベイルも大雑把に見えて器用だよな。

 百聞は一見にしかずだし、悪いやり方ではないのだが、何の情報もなくやられたサラは可哀想である。

 まあ、そんな事言ってられないのがこの世界である。


「この嬢ちゃんが今したのは防衛本能ってやつだ」


 さっきサラの名前聞いたよな?


「今回の殺気大会では、殺気を使って、この防衛本能を相手に出させた方が勝ちだ」


 なるほど、それは面白い。

 殺気に抗う術も覚えられるし、殺気の応用も学べる。

 …………相手がオベイルだからか、これを全て考えてやってるとは思えないのが残念なところだ。

 いや、考えてるのかもしれないが、


「どうだ、面白そうだろ!?」


 あの屈託のない笑顔を見てると、そう思えない自分がいる。


「ま、殺気を扱えない同士が戦う事もあるだろうし、制限時間も設ける。それまでに決着がつかなければ両者負けだ」


 次に戦う人間は楽が出来るな。


「そんじゃ始めるぞ。トーナメント表のAブロックから」


 こうして、殺気大会なる珍妙な大会が始まった。

 正規組同士の睨めっこ(、、、、)は基本的に制限時間を超えるだけで終わるものの、冒険者組が使う殺気に当てられ、観客席にいる正規組が反応してしまう事もしばしば。

 冒険者組は精度を求められ、正規組は殺気を学ぶ。

 どちらにもメリットがあって大変よろしい授業内容である。

 そんな中面白かったのが、レティシア嬢vsゲラルドである。

 何かのイジメかな、とも思ったが、オベイルがそういう事を考える訳がない。

 広場中央に立つ事が出来たレティシア嬢を褒めてあげたいし、飴をあげたいくらいだ。

 しかし、ゲラルドを前にレティシア嬢がとった行動は決して褒められる事ではなかった。


「へぇ」


 オベイルが口を尖らせたレティシア嬢の行動とは――、


「最初から防御の構え、ですね」


 そう、レティシア嬢は最初から顔を腕で覆ってガードの姿勢を見せたのだ。

 ルナ王女が俺にそう言うと、正規組の何人かがオベイルを見た。これはつまり「こんなのアリか?」という主張である。

 がしかし、オベイルはこれを禁止していない。

 これは相手に防衛本能を起こさせた側の勝ちという単純なルールである。そして、防御姿勢(イコール)防衛本能という訳ではない。

 つまり、褒められはしないものの、レティシア嬢なりにしっかりと考えて出した結果、こうなっただけなのだ。

 いや? これは褒められるべき行動なのかもしれない。


 オベイルからは何もない。

 つまり、レティシア嬢の行為は何ら問題ないという事。

 俺もそういう判断だが、レティシア嬢の狙いはそこじゃないようだ。


「うぅ……!」


 目を瞑り、ゲラルドの殺気に耐え、身体が震える。

 外傷こそないが、SS(ダブル)クラスのゲラルドが、素人に毛の生えた程度のレティシア嬢に殺気を向ける事の異常性は、冒険者組も理解出来るだろう。

 心的外傷になる可能性すらあるにもかかわらず、オベイルはこれを止めない。

 何故ならここは現代倫理など関係のない聖騎士育成の場であり、ルールに抵触していないからだ。


「なるほど、勝ちを捨てたか」


 オベイルの言葉が全てだった。

 レティシア嬢は、勝てる見込みのない勝負を捨て、殺気を浴び続けるという選択をしたのだ。

 身体を小さくし、開始早々に防御姿勢。

 実力者の本物の殺気を浴びるという経験はそう簡単に出来るものではない。授業という場がなければ、こんな対戦(カード)あり得ないのだから。


「レティシア!」


 ルナ王女の心配する声は、おそらくレティシアに届いてはいないだろう。

 眩暈(めまい)、激しい動悸、止まらぬ汗。

 ゲラルドがオベイルをちらりと見る。「まだ続けるのか?」と。

 しかし、オベイルは何も言わない。それがルールだから。

 勝敗を決めるのはレティシアかゲラルドしかいないのだ。

 ゲラルドはオベイルの対応に難色を示したのか、難しい表情を浮かべ、またレティシアを見た。

 その直後、


「見事だ」


 ゲラルドはレティシア嬢を称賛し、更に強力な殺気を放った。

 それを正面から受けたレティシア嬢は、一瞬目を見開き、その後パタリと前方へ倒れた。


「レティシアッ!」


 ルナ王女が駆け、レティシア嬢に近寄る。

 俺も駆け寄るも、やはり彼女は失神しているだけだった。

 失神という逃避、防衛本能が出たと言えるだろう。

 オベイルがレティシアを見ながら言った。


「おう、中々気合いの入った嬢ちゃんじゃねえか」


 公爵令嬢ですよ、オベイルさん。


「これは……私も負けていられません!」


 言いながらルナ王女が見据える先には、ゲラルドより強力な五色の一角。


「人間の姫か、面白い」


 リィたん選手のご登場です。

次回:「その458 にらめっこ」


明日はきっと二話投稿……します。

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