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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第二部

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457/917

その455 初任務

「ここは……」


 法王国の貴族領の地下。

 サブロウの話では、その貴族はこの場所すら知らないとの事だ。長く深い地下道。時には上り、時には下り、いくつか罠もあった。

 サブロウというナビがなければ、攻略出来ない程の綿密に作られた人工ダンジョン――といったところか。


「……こっちじゃ」

「俺の方向感覚が間違ってなければ、こっちって」


 貴族領は法王国の外れにあった。

 地下に潜り方向感覚が狂いそうになるが、実際に向かっていたのは――、


「うむ、法王国の首都の真下じゃな」


 まったく、よくこんな道を人知れず作ったものだな。

 魔法のない世界では不可能なんじゃないか?

 地下五、六階程の深さだろうか。それだけ深くしなければ、法王国にバレるだろうしな。法王クルスに話したら嘆かれそうだ。

 というか、サブロウは魔法を使わないみたいだが、こんなに暗くてよく迷わず来られるものだ。

 それに息苦しさも感じないという事は、どこかに換気出来るようなマジックスクロールがあるのだろう。


「ここじゃ」


 観音開きタイプの大きな扉。

 その両サイドには筋肉坊主タイプの大きな人。

 見た感じ、誰かの失われし位階(ロストナンバー)なのかもしれない。

 サブロウが言うには、ここには全ての【(とき)の番人】が集うらしい。警護からして信頼出来る部下を置くだろう。


「「名前を」」


 筋肉坊主たちは口を揃えて言った。


「デューク・スイカ・ウォーカー」

「サブロウ」


 受け入れ、呑み込むように聞き入れた二人は、静かに扉を開いた。


「「ようこそ、闇の使徒よ」」


 どこかのテーマパークのキャストみたいだな、この二人。

 芝居掛かった二人を通り抜け、俺は広い部屋へと足を踏み入れた。目の前に見えるのは闇の円卓。均一に置かれた十二の黒い椅子。

 光魔法【ライト】を使いたくなるような蝋燭(ろうそく)に照らされた部屋。


「誰もいませんね」


 俺がそう言うと、隣のサブロウが部屋の奥を見た。


「む?」


 扉から見て円卓の一番奥の席だった。

 そこには、ギルド通信の水晶が置かれていたのだ。


「エレノア、相変わらずじゃのう」

「そう簡単には会わせて貰えないという事でしょうかね」


 俺が肩を(すく)めて言うと、サブロウが頷いてそれを肯定した。

 サブロウが水晶に近づき、触れる。

 すると、水晶が発光し起動に至る。


『……思ったよりも早かったようですね』


 水晶から聞こえてる男とも女ともとれない異質な声。

 周到な性格をしている。姿を見せないどころか、声すらイジっているのか。


「連れて来たぞ、エレノア」

『ご苦労でしたサブロウ殿。詳細については後ほど報告を。ポイント三十四で別の任務を受けてください』

「わかった」


 サブロウはここまで、か。

 サブロウは俺に向かって頷いた後、部屋を出て行った。


『まずは自己紹介から。私はエレノア。闇の中枢【(とき)の番人】の取りまとめを担っています』

「デューク・スイカ・ウォーカーです、エレノア殿」

『デューク・スイカ・ウォーカー。拳鬼を倒せる程の者がハンドレッドにいたとは驚きました』

「調べればわかると思うので申し上げますが、私は誰にも勝っていません」


 その後、エレノアの言葉に一瞬の間が出来た。


『……どういう事でしょうか』

「皆、私を認めてくれたという事ですよ」

『選出されたハンドレッドが全て身を引いたと? (にわ)かには信じ(がた)い話ですね』

「今回の選出、(とき)の番人の補充という事でした。したがって、勝手ながら闇が人手不足だと推測しました」

『否定するつもりはありません。どうぞ続けてください』

「そんな中、優秀な人材を殺しては更なる困窮は明白。ならばこちらの威を示し、相手に引かせる事で人材の有効活用、並びに(とき)の番人に任命される手を打っただけの事です」

『なるほど、とても優秀な方のようですね。報告に偽り無しと言ったところでしょうか』


 実際には偽りだらけである。

 俺が操った闇人(やみうど)が報告してるから、最高評価ばかりだろうな。

 と言っても、最初からそうだった訳ではない。

 闇人(やみうど)リクルートが停滞してしまったからだ。それからは目立たず動く事のメリットが少なくなっていったからな。仕方ない。


「それよりも、壁裏に隠れている方々を紹介して頂きたいのですが?」

『……素晴らしい。これまで彼らに気付いた者はほとんどいませんでした』


 SS(ダブル)クラスが本気で気配を絶てば、SSS(トリプル)クラスでも気付ける者は少ないだろう。

 エレノアの言葉の後、壁裏にいた四つの気配が移動した。扉の前に跪いた四人は全員女だった。


失われし位階(ロストナンバー)についてはご存知ですか?』

「それはもしかして、ハンドレッドと(とき)の番人の間に位置する者たちの事でしょうか?」


 知っていてもとぼけなくちゃな、この情報は失われし位階(ロストナンバー)から得たものなんだし。


『その通りです。この四人はあなたの手足となって動いてくれるでしょう』

「早速、最初の任務といったところでしょうか」

『剣鬼オベイルは知っていますね』


 すんごくよく知ってる。


「殺し、ですか?」

『剣鬼は今この法王国にいます』

「炎龍を捕まえたとかで騒がれていますね」

『話が早くて助かります。その炎龍を殺してください』


 初手から最高難度の任務なのでは?

次回:「その456 同族」

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[一言] 一斉に地を吸えるチャンスと思ったけど甘くはなかったですね。この前にシギュンを攻略出来てればと、おもってしまいます。結果論ですが(*´∀`)♪ 炎竜どう活かすのでしょうねー?、やっちゃう?(…
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