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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第二部

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453/917

◆その451 激震

 暗く薄暗い部屋。

 壁には蝋燭(ろうそく)の火が(とも)る。

 円卓を囲う十二の椅子には、幾人かの姿が見受けられる。


「剣鬼が炎龍を得たか」


 腕を組み、椅子に座る男の名は【サブロウ】。

 昨日、剣鬼オベイルが炎龍ロードディザスターと共に法王国に現れた。

 これと同時に法王国は一時厳戒態勢となり聖騎士団含む多くの騎士団が動きを見せた。

 しかし、すぐにそれは解かれた。

 ミケラルドから連絡を受けた法王クルスが手を打ったのだ。

 炎龍に害意がないと知った民衆は安堵し、そして喜んだ。

 何故ならば、ミナジリ共和国という異例の国が存在するからだ。

 水龍の加護を受けたと言われるミナジリ共和国に、少なからず劣等感や憧れを感じていた者もいたのだ。しかし、炎龍が法王国に現れた。これにより、炎龍の加護を受けし法王国というクロード新聞が出回り、民衆は一日中浮かれていた。

 (もっと)も、国の重鎮たちはそう簡単に浮かれられる訳もない。

 アーダイン、リルハ、そして法王クルスが動き、剣鬼オベイルに土地と家を与えたのだ。

 それから夜が明け、また陽が沈んだ頃彼らは集まった。

 サブロウが鋭い視線を向ける先には、一人の老婆が座っていた。


「おい、(ばばあ)、もったいぶっていないでさっさと報告したらどうだ」

「あぁ臭い臭い、これだから加齢臭たっぷりの爺と同じ部屋は嫌なんだ」


 自らの鼻をつまみ、わざとらしく臭がって見せた老婆は【拳神ナガレ】だった。

 舌打ちをしたサブロウが次に視線をやったのは、部屋の最奥にある円卓の席だった。


「【エレノア(、、、、)】」


 サブロウに「エレノア」と呼ばれた存在はナガレに言った。


「ナガレ殿、報告を」


 ナガレは円卓に足を載せ、不服そうな顔で言った。


「見て来たよディザスターエリア。完全にモンスターの気配が消えてる。剣鬼がいくらSSS(トリプル)だとしてもあれだけいた【はぐれリザード】や【マグリズリー】を倒せる訳がない。剣神とセットでだって無理だよ」


 それを聞き、サブロウが訝し気な表情をする。


「やはりZ区分(ゼットくぶん)が動いた?」

「いえ、それは早計です」


 サブロウが見たのは、部屋の入口だった。

 そこに立っていたのは【神聖騎士シギュン】。

 彼女は歩を進め、サブロウの隣に腰掛ける。


「よく来られたな」


 サブロウが言うと、シギュンは微笑みだけを浮かべた。


「遅くなりました、エレノア」

「構いません。それで、早計というのは?」

「監視者からの報告によれば、リィたんに大きな動きは見られなかったと」

「やはりそうですか」


 すると、ナガレが言った。


「ふん、じゃあミナジリのトカゲじゃないのかい?」

「ジェイルの動きはお前が追っているのだろう、【カンザス】」


 ナガレの隣に座っている男を見たサブロウ。

 カンザスと呼ばれた男は、長い髪をかき上げた後、肩を竦める。


「緊急会議って言うからミナジリから飛ばして来たんだから、まずは褒めて欲しいものですねぇ?」

「どうせ地龍に乗ってきたんじゃろ」

「そりゃ、俺のペットですからね」

「その地龍は何か言っていたのか?」

「さぁ、炎龍とは交流がないらしいので」

「その口ぶりではジェイルが動いたという事もないか」

「そもそもアッチは転移魔法なんて古代魔法を使ってるんですよ? 自室に籠った次の瞬間、法王国なんて、追える訳ないでしょう。君もそう思うでしょう?」


 カンザスが隣を見ると、そこに座っていたのはまだ青年とすら呼べない程の少年だった。

 そのやり取りを見ていたエレノアが、少年を見て言った。


「貴方の意見を聞かせてください、【パーシバル】」


 そう、少年の名は【破壊魔(はかいま)パーシバル】。

 魔帝グラムスの弟子であると共に、元SSS(トリプル)の魔法使いである。


「どうでしょう、魔法使いとしての意見も聞かせてください」

「魔法使いねぇ。僕だったらまず、あのディザスターエリアをどう攻略したのか考えるよ」

「というと?」

「あんな場所、生身の人間がいたら三十分もしない内に死んじゃうじゃん。ナガレだってそんなに長い時間いられないだろう?」


 すると、ナガレが舌打ちをする。


「ちっ、生意気な糞餓鬼が【(とき)の番人】に加わったもんだね」

「まだ一人足りないけどね。僕が入って十一人とか笑っちゃったよ。それに、緊急会議なのに出席六人っておかしくない?」

「パーシバル」


 エレノアがパーシバルの名を強く言うと、パーシバルはピクリと反応し止まった。


「……はいはい。だから、あのディザスターエリアで活動出来る奴だけしか炎龍は捕まえられないって訳」


 それを聞き、カンザスが言う。


「つまり、何者かが炎龍を剣鬼オベイルに託したと?」


 パーシバルの顔がヒクつく。


「法王がオベイルを抱き込んだように見えるけど、その実そうじゃない。そいつは炎龍を法王国に置くと共に、SSS(トリプル)の実力を持ったオベイルを法王国に置いたのさ。何の対策かは目に見えてるけどね。けど不思議だね、そんな事するような奴、僕の頭には一人しかいないんだ」

「「まさかっ!」」


 皆の驚きの直後、部屋の扉が大きく開かれた。

 エレノアが部屋を開けた闇人(やみうど)に向かって鋭い目を向ける。


「何用です?」

「ご、ご報告致します! ミナジリ共和国の草より連絡!」

「聞きましょう」

「ミナジリ共和国の元首、ミケラルド・オード・ミナジリが……フェ、フェンリルを手に入れたとの報が入りましたっ!」


 それは、激震という名の驚きを皆が共有した瞬間だった。

次回:「◆その452 刻の番人」

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― 新着の感想 ―
[一言] 確認もなしに刻の番人が複数いる場所に乗り込んじゃった下っ端さん 命はあるんだろうかw
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