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その44 着いた、リーガル!

本日二話目の投稿です。ご注意ください。

 ◇◆◇ マックスの場合 ◆◇◆


「主任……っ!」


 俺の腕で辛そうな表情を浮かべるホバッツ。

 モンスターから受けた脇腹の傷は深く、このままでは死んでしまう。


「そいつはもう駄目だ。置いて行くぞ」


 下級貴族のシュバイツ。奴はホバッツを置いて行けと言うが、ただでさえ人数が少ないのに、ホバッツが欠けてはこの護送は確実に失敗する。

 それがわからんというのか、このポンコツ騎士は。


「おい、聞いてるのか! 足並みを乱すな!」


 しかし、シュバイツの命令に逆らう事は出来ん。

 コバもモッカも心配そうにホバッツを見守る。そう、こいつらは俺の大事な部下だ。死なせる訳にはいかない。


「お、お待ちなさい!」


 血の臭いが充満した場には似合わぬ、甲高い声だった。


「こ、これはレティシア様。ここは危険でございます。馬車から出てはなりませぬ」


 レティシア様は何故馬車を出て来たのだ?

 いや、それよりもホバッツの傷を何とかしなくては。


「あなた、マックスと言いましたわね?」

「は、ははぁ!」

「ではマックス、彼の拘束を解きなさい」

「お待ちくださいレティシア様! 奴は罪人です!」


 レティシア様は、シュバイツの声など聞こえないかのように、気丈に振る舞っている。何故かわからないが、精一杯無視をしているように見える。


「マックス、彼ならば回復魔法が使えます。さぁ」

「レティシアお嬢様のお願いだぞ、マックス」


 檻の中にいたミケラルドは、軽快に言った。

 最初こそ腰が低かったが、途中から妙に馴れ馴れしくなった男だ。しかし、俺はそれが嫌いじゃなかった。

 このミケラルドという男の中には、普通の人間とは違った……何とも言いようのない爽やかさがあったのだ。

 俺は彼の無罪を信じている。しかし、この場で解放してしまって本当にいいものか。

 だが、レティシア様の目が言っている。

 ――彼を、信じろと。


「かしこまりました。おい、コバ。この鍵で檻と錠を」

「はい!」

「貴様! このシュバイツの命を無視するか!」

「えー、でもー、今のは完全にレティシアお嬢様の命令をシュバイツさんが無視してるって感じだよねー」


 この男は……貴族が怖くないというのか。

 顔を真っ赤にしたシュバイツを背に、何故かレティシア様が少しだけ笑ったように見えた。


「貴様! 極刑も覚悟しておけよ!」

「楽しみにしてますよ。よし、ありがとうコバさん」

「命令ですから!」

「えっと、ホバッツさんだっけ? 楽にね。呼吸だけいつものように心掛けて」

「は、い……っ」

「ヒール」


 周囲は温かな光の魔力に包まれ、徐々にホバッツの血色も戻っていく。

 やがて、顔から苦しさが消え、穏やかな呼吸をするようになったホバッツ。


「頑張ったじゃないか?」


 ミケラルドはホバッツに……いや、今ミケラルドはレティシア様に向かって言った? 間違いない。明らかにレティシア様に向かって言ったのだ。


「当然ですわ」


 やはり、レティシア様もそれに応えた。

 この二人にあるモノは一体何なのか。だが、今それはどうでもいい事だ。

 ホバッツが無事だったのだ。今はそれで十分じゃないか。

 体力も回復したホバッツは護送に復帰し、ミケラルドも大人しく檻に戻って行った。

 彼ほどの実力ならば、この場から逃げられただろうに。律儀にそれを守っているのか。相当変わり者なのか、或いは私の想像を遥かに超える大物なのか。


「そもそも何でレティシアお嬢様は盗賊に捕まってたんだろうな?」


 いつもの調子でミケラルドが聞いてきた。

 この護送の楽しみと言えば、彼の軽口くらいだろうか。

 彼がいるだけで、この護送に妙な安心感が生まれる。

 おかしな話だ。彼は檻の中だというのに。


「詳しい話は聞かされていないな」

「あの盗賊の親玉からは何も聞けなかったの?」

「チャックの事か?」


 ミケラルドが捕まえたという盗賊の親玉。


「多分そいつ」


 名前を告げると、ミケラルドは指を差して肯定した。


「チャックは出発の前の晩、獄死した」

「はぁっ!?」

「本当だ、本来であればミケラルドと一緒にリーガルへ連れて行く予定だったのだ」

「獄死って何が起きたんだよっ?」

「気付いた時には隠していたナイフで首を切って息絶えていた」

「ナイフなんて隠してるはずないって。俺が服以外の身ぐるみ剥いだんだから」

「なら、見落としがあったんじゃないのか? まぁ、私たちの身体検査でも引っかからなかったのだ。責任は我らにある」


 俺がそう説明しても、ミケラルドはどこか納得いっていない様子だった。

 確かにチャックの死に方は異常だった。

 気がかりになるのもわかるが、そこまで気にするものなのだろうか。

 その後、怪我をしてもミケラルドが回復魔法を使う事で、俺たちは危機を回避できた。いや、ミケラルドがいなければ全滅していただろう。

 三日目の昼過ぎ、遠目に無数の家屋や屋敷、そして巨大なリーガル城を捉える。


「見えたぞ、あれがリーガルだ」

「お~、ついにここまで来ちゃったか……」


 はたして、ミケラルドの無罪は証明出来るだろうか。

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