表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

442/917

その440 ギャレット商会の闇

「そうか、【ファーラ】の奴がしくじりやがったのか」


 俺の前に正座した三人。

 どうも口調と姿勢が噛み合っていないが、魔族のプライドは高いし仕方ないのだろう。

 店主の爺さんは驚くべき事にアンドゥやサイトゥと同じ種――ダークマーダラーだった。当然、背後から襲ってきた男女も同じだった。

 どうやら、過去人間界に潜伏していた生き残りのようだ。

 そう、過去とは(すなわ)ち――勇者レックスの時代。


「これまでよくバレずに生きて来られたな」

「ふん、他国の間者は全員殺されたが、リーガル国程楽に生きられる国はないからな」


 威張って言う事だろうか。

 だが、リーガル国の武力を考えれば仕方ないのかもしれない。

 シェルフだって似たような理由で狙われた訳だし。


「それで、何故ファーラは聖騎士学校に入学した?」


 店主がちらりと両サイドに座る二人を見る。

 二人は店主を見、そして意を決したかのように言った。


「「言えねぇな!」」


 中々面白い奴らだ。


「早目に言った方がいいぞ。意思を尊重してる内が華だからな」


 殺気を放ちながら俺が言うと、女のダークマーダラーの目が泳ぎ始めた。


「吸血鬼の【呪縛】って知ってるか? 実は私、アレが得意なんだ」


 男のダークマーダラーが大量の冷や汗をかきながら店主を見る。


「自我の喪失って怖いだろうなー。いや、命令に従ってくれればちょっとした制約だけで済むんだけどなー」


 店主がちらりと両サイドに座る二人を見る。

 二人は店主を見、そして意を決したかのように言った。


「「勘弁してください」」


 とても面白い奴らだ。

 土下座が黒帯レベルである。

 なるほど、人間界に長くいるせいか感情豊かなのだろう。


「ア、アッシらに連絡があったんです」

「連絡? ギルド通信か?」

「へい、あそこにあるアレでさぁ」


 店主の視線を追うと、奥にギルド通信らしき水晶が置いてあった。

 なるほど、あの水晶で魔界と連絡をとっていたのか。


「……これね」


 俺はそれを手に取り、


「「あっ!?」」


 三人が驚いている内に、俺は水晶(それ)を【闇空間】の中に放り込んだ。


「後で新しいのをくれてやる」

「へ、へぇ。それなら……」


 まぁ、もう魔界と連絡はとれないけどな。


「で、誰から何という連絡があったんだ?」

「【ファーラ】っていう女吸血鬼を聖騎士学校に入れたいから、人間界の金を用意しろって」

「……女吸血鬼? ファーラは吸血鬼なのか?」

「い、いや、アッシらも直接会った事がないのでわかりやせんが、先方は確かにそう言ってました」

「名前は?」

「あ……えっとその……」


 何とも歯切れの悪い……。


「自我を失ったまま草原を駆け続けるプランと、自我を失ったまま壁に話しかけ続けるプラン、どっちがいい?」

「「勘弁してください」」


 土下座が達人の域にあるな。

 正直、さっさと血を吸えばよかったと後悔している。

 まぁ、これもある意味社会勉強と言える。尋問のな。


「身の安全は保障してやる。誰からの指示だ?」

「ま、魔族四天王……【スパニッシュ・ヴァンプ・ワラキエル】様でさぁ」


 久しぶりに名前を聞いたな、父上。

 ファーラが女吸血鬼だというのなら、確かに繋がる相手としてはスパニッシュだろう。だが、一体何故?


「奴らが何をしようとしているのかは知っているか?」

「アッシもそれが気になって聞きましたが、スパニッシュ様は教えてくれませんでした」

「つまり、お前たちは金と身元保証のためだけに利用されただけだと」

「お恥ずかしながら……」


 縮こまる店主に、俺は更に続けた。


「わかった。じゃあこっちは?」


 折れた打刀を再度見せる。


「旦那、さっきも言った通り、打った鍛冶師はわからないんでさぁ」

「打った者ではなく、ここに売りに来た者だ。それくらいはわかるだろう」


 言うと、店主は手をポンと鳴らし納得していた。

 しかし、しばらく首を捻った後……、


「思い出せねぇな……」


 くそ、このおっさん、憎めないけど残念仕様だ。

 すると、女のダークマーダラーが言った。


「ア、アタシが店番してた時だ」

「あぁ、だから覚えてねぇのか」


 俺が女に目を向けると、女は虚空を見ながら言った。


「女だった」

「どんな女だ?」

「このくらい」

「『このくらい』って……もしかして背の高さか?」


 見れば、正座したダークマーダラーたちと同じくらいの高さで女は手を止めていた。彼らは背こそ大きいものの、正座してはそれも半減である。

 この身長……ナタリーより小さいのでは?


「幼女がここに剣を売りに来たって? 信じられない話だな。第一、どうやって持って来たんだ? 身長より長いぞ、これ」


 まぁ、持てなくはないだろうが、幼女が持つには目立つ代物(しろもの)だ。


「旦那がさっき使ってたアレ。アレから出してたんだ」

「アレってもしかして……これか?」


 言いながら発動したのは先程ギルド水晶をしまった【闇空間】。

 女は【闇空間】を指差しながら、「そうそれ」と言った。


「幼女が【闇空間】から打刀(ぶき)を取り出して質に入れた?」

「ですです!」


 何だろうそれ。

 あまり考えたくないな。


「いつ頃?」

「確か……二年くらい前かと」


 しかも、打刀(うちがたな)を購入したのはほんの一年前。

 それ以前にこのリーガル国にいた魔法が使える幼女。


「肌や目、髪の色はわかるか?」

「肌はそこら辺の人間と変わらない。目と髪は黒かったです、はい」


 むぅ……対照的な存在なら記憶にあるんだけどな。

 確かあの人は……商人ギルドのギルドマスターだったか。

次回:「その441 白き魔女の下へ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ