表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/917

その43 囚われのミケラルド

「絶対おかしいって! なんだそれ!?」

「しかしなぁ、これは俺でもどうしようも出来ないぞ」

「おぉ、けどなんか地位がありそうな発言!」

「ふん、これでも俺はここの警備主任だからな!」

「くそ! 侯爵に勝てそうな地位じゃない!」

「勝てる訳あるか!」


 どうする? リィたんを助けに呼ぶか?

 しかしなぁ、リィたんがそんな事知ったら、怒ってリーガル国とかなくなっちゃうかもしれないし、流石に助けを求められないか。

 とりあえず、テレパシーを使って、ナタリーに今日の夕飯をキャンセルしておこう。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「おい、何であいつがいるんだよ?」


 絢爛豪華(けんらんごうか)な馬車が一台。

 そこにはおそらくレティシアが乗っているのだろう。

 そしてその馬車を覗き、レティシアと何か話している中年オヤジ。

 更に、俺を捕えたボロい荷車をロバが引いている。

 警備にはマックスと三人のシェンドの町の兵士。


「仕方ない。あの方はサマリア侯爵家の騎士だ。まぁ所謂下級貴族ってやつだな」


 荷車の上の檻から中年オヤジを見ていると、汚物でも見るかのような目で俺を見返した後、地面に唾を吐き捨てた。


「あれ、本当に騎士?」

「騎士は平民がなる事も少なくないからな。あの方も平民の出だろう」

「ところで、護衛ってこれだけ?」

「……そうだ」


 そう言うマックスの顔は、少しばかり緊張していた。

 周りの兵士たちもそうだ。かなり顔が強張っている。


「侯爵家なんだったらお金あるだろう? 冒険者ギルドに護衛依頼すればよかったのに」

「そうもいかん。貴族と冒険者の繋がりに寛容な者は少ない。シュバイツ様も下級貴族とはいえ貴族は貴族だ。命令に逆らう事は出来ん」


 という事は、あのシュバイツって中年オヤジがこの場の実権を持っているのか。

 それにしてもマックスのヤツ、小声とはいえ、貴族がいる場で色々言ってるな。不満も少なからずあるのだろう。

 さて、今回のリーガルへ向かうメンバーは、非常に心もとない。

 馬車の御者と、その馬車に乗るレティシア。

 先頭を騎乗して歩くシュバイツ。

 檻IN俺。その荷車を引くロバ。

 マックス含む兵士四人。

 シュバイツはランクCの冒険者程度の魔力を帯びている。それはマックスも同じだ。どちらを相手にしてもカミナの方が強いと思う。

 御者は論外だとして、マックス以外の兵士の戦力は一人当たりランクE前後。


「不安だ……」

「はははは、それは俺も同感だ」


 この中で状況を判断出来そうなのは、マックスか俺くらいだ。

 他の兵士は、侯爵家の護衛ってだけで緊張している。マックスの協力により、俺の無罪は理解しているようだが、やはり不安だ。

 ランクC……いや、ランクDのモンスターでも、群れを成せばここにいる全員を呑み込んでしまうだろう。


「どれくらいでリーガルなの?」

「護送ならば三日というところか」

「襲われない可能性は?」

「……ははははは」


 濁しやがった。

 とは言っても、一応流石は騎士なのだろう。シュバイツは現れるモンスターの大半を倒しながらリーガルへ向かった。

 リーガルはシェンドの町の北にあるようだ。ランクB冒険者が入れるダンジョンもあるとの事だが、今の俺は囚われの身だしな。

 夜。

 川に近い木の下で、兵士たちが食事の準備に追われていた。


「ねぇねぇマックスさん、お手洗いに行きたいなぁ」

「あぁん? ったく、仕方ないな」


 こちらも生理現象だ。是非とも許して頂きたい。

 もはや慣れた檻の中に戻ると、マックスが食事を持ってきた。


「ちゃんと手拭け」


 おっと、濡れ布巾を持ってきてくれたのか。

 マックスはとても良いヤツである。


「おっと手が滑ってしまった」


 と、言いながら、マックスが持っていた俺の食事を、シュバイツが叩き落とした。


「……食事は大事にしろって教わりませんでしたか?」

「だから罪人に食わせず、雄大な大地に還元したのだ。ふん、安心しろ。三日何も食わずとも、死んだ奴はいない」


 そう言い捨てて、シュバイツは馬車の方へ戻って行った。


「あれ、どう思う?」

「胸糞悪いな」


 マックスも同意見のようだ。

 まぁ、今日くらい何も食わなくてもいいか。

 最悪、闇空間に携帯食料が入っている。

 この檻には魔力を遮断する効果が、そして手錠にも同じ効果がある。並みの魔力では壊す事も、魔法を発動する事も出来ないそうだ。

 ……並みの魔力では(、、、、、、、)ね。


 翌日。


「ぐぁ!?」


 モンスターの攻撃により、兵士の一人が深手を負った。

 幸い、マックスが残りのモンスターを倒したおかげで、致命傷にはならなかったが、このままでは出血多量で死んでしまうだろう。


「そいつはもう駄目だ。置いて行くぞ」


 シュバイツがそう言うも、マックスが動く事はない。


「おい、聞いてるのか! 足並みを乱すな!」


 自分の部下が傷によって苦しんでいるのだ。

 置いて行ける訳がない。


「お、お待ちなさい!」


 そう言って馬車から出てきたのは、あのレティシアお嬢様だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ