表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

438/917

その436 成績表

「これもシギュン……これも。ライゼン校長は一体……?」


 シギュンの基本的情報から似顔絵、趣味嗜好等々。()(かく)シギュンに関する情報ならば何でもあった。

 だが――、


「……なるほど」


 資料に目を通し、ライゼン学校長の目的を理解した俺は、資料室を出た足で、そのままライゼン学校長がいる場所まで向かった。

 そこにも扉があり、木材に書かれていたのは――【校長室】だった。


「――やっぱり」


 俺はそこをノックし、中にいるライゼン学校長から入室の許可をもらった。


『入りたまえ』


 名前を求めず入室を許可をするって事は、ここの警備にそれだけの自信があるという事。ウチのシュバイツが聞いたら絶対にありえないだろうがな。


「失礼します」


 入室すると、そこにはライゼン学校長の背中が見えた。

 彼は立ちながらいそいそと何かを書き、目の端で俺を捉える。


「君か。何か問題でもあったのかね?」

「いえ、少々お伺いしたい事がありまして」

「私に? 私の貴重な時間を割いてでも聞きたい事とは何だね?」


 鋭い目つきによる威嚇とも形容できる言い方。

 だが、俺にそんなものは通じない。

 すると、じっと俺を見ていたライゼン学校長がゆっくり俺に近付いてきた。

 そして――っ!


「少々私を過小評価し過ぎではなかろうか?」


 言いながらライゼン学校長は、(ふところ)に忍ばせていたナイフを俺の首元に当てた。


「つめたっ」


 喉に当たる冷たい感触に声を出してしまった時、ライゼン学校長は呆れた目を俺に向けた。


「……本当に暗殺者か、お主?」

「参考までに、どこでバレちゃったんですかね?」

「ハリスはな、優秀だが臆病な嫌いがある」


 ハリス――俺が化けている男の名前か。


「私の視線を受け流せる程、胆力がない。だから見張りをしているのだ」

「まさか見張りの性格を熟知しているとは思いませんでした」

「私の教え子を私が間違える訳がない」


 やはりそうなのか。

 首に食い込むナイフ。ライゼン学校長は警戒緩めぬまま俺に聞いた。


「何者だ。ハリスに化け、ここまでやって来られるなんぞ一介の暗殺者には出来ん芸当だ。冒険者……いや、ついに闇ギルドが動いたという事か」

「ところで、今何を書いてらっしゃったんですか?」

「動くな!」


 俺が机の方へ目を向けると、ライゼン学校長は声を荒げた。

 しかし――――、


「なっ!?」


 俺は首元のナイフをぐいと押しながら、ライゼン学校長の身体を押し切った。


「ば、馬鹿なっ!?」


 まるで相撲による押し出し。俺は首しか使ってないけどな。


「ミスリルのナイフで傷一つ付かんだと……!?」

「……ふむふむ、これは面白い。ナタリーというハーフエルフが持つ転移装置を奪い、ナタリーを確保した後、ミナジリ共和国へと転移。その後、ミナジリ共和国にいる要人を誘拐。候補者リストはエメラ、クロード、カミナ、シュバイツ(シュッツ)……なるほど。ミナジリ共和国を強請(ゆす)る算段ですね? 元首ミケラルドにこれを伝え、意のままにその武力を操るつもりでしたか?」

「くっ!? 貴様何故それを知っているっ!?」

「駄目ですよ。せめてそこは伏せなくちゃ。聖騎士っていうのは、どうも真っ直ぐでいけませんね。老獪(ろうかい)なのは教職と武力だけですか?」


 俺はそう言いながら【闇空間】からとある紙(、、、、)を取り出した。


「ラ、イ、ゼ、ン、君……おっちょこちょい、と」


 そして机にあったペンを用いてそう書いたのだ。


「それは……!」

「はい、校長。これ今日の成績表(、、、)です。貴方の名前も足しておきましたから」

「っ!? 特別講師に渡した成績表――っ! まさかお主……!?」

「いやだなぁ、そこに特別講師の名前が書いてあるでしょう?」


 ライゼン学校長が署名欄に目を走らせ、驚愕する。


「やはりミケラルド――!」

「正解です♪ 正解者には豪華賞品プレゼント。私の首からナイフを放す権利を与えます」


 俺が笑ってそう言うと、ライゼン学校長は震える手をゆっくり放し、その場にナイフを落としたのだった。

 俺は、そんなライゼン学校長を【サイコキネシス】で持ち上げ、机の奥にある校長室の椅子に座らせた。


「くっ……」


 観念した様子のライゼン学校長は俯き、口を結ぶ。


「人を呼ばないのは流石ですね」

「ぬかせ……ここに人を呼ぼうものなら死体の山が築き上がるだけだ」

「ハハハ、そんな事はしませんよ」


 そんな勿体ない事、する訳ないだろうに。

 俺が言うと、ライゼンはハっと顔を上げ言った。


「ハリスはっ!? 見張りの者たちは無事なんだろうな!?」

「えぇ、勿論です。少々手荒にはしましたが確保した後、放流してます」

「そ、そうか……」


 ほっとした様子のライゼン学校長は、すんと鼻息を吐いてからじっと俺を見た。


「……何が目的だ?」

「これは異な事を。それを聞きたいのはこちらですよ。ナタリーを狙う計画書なんか用意してくれちゃって――――」


 途中までは軽快に喋ってはいたが、そこからは違った。

 俺はライゼン学校長を強く睨み……いつの間にか殺気を放出していた。


「っ!?!?」

「――――どういうつもりだ?」


 研ぎ澄ました殺気と魔力、ライゼン学校長への【サイコキネシス】による拘束がより一層強まる。

 顔中に脂汗を滲ませながら、ライゼン学校長の顔は恐怖に染まっていた。


「返答次第では、椅子と同化させてやるぞ」


 俺は言った直後に気付いた。

 この台詞は少し臭かったのではないか、と。

次回:「その437 ライゼン学校長の狙い」


祝! 百万文字!!

今回の投稿で、「半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~」の総文字数が百万文字を超えました! 何があるという訳ではありませんが、引き続きミックたちミナジリ共和国を宜しくお願い致します!


壱弐参(ひふみ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ