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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第二部

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434/917

その433 ゲラルド君

2020/11/27 本日三話目の投稿です。ご注意ください。

「私の全力……ですか」

「そうだ」


 じろりとゲラルドを見る。


「……そうです」


 だよね、ここでそういう態度が許されるのはリィたんくらいだ。

 まぁ、魔族という観点から見て、ファーラも言っていいかもしれないな。何しろ文化が違うし。


「うーん、困りましたね。しかし何故私の実力を?」

「あの戦争――」


 ミナジリ共和国とリプトゥア国の戦争か。


「――あの戦争を俺も見ていた」


 ゲラルドがリィたんをちらりと見る。


「水龍リバイアタンがいるならば親父が負けても仕方なかった。しかし、あの戦争には地龍もいた。だから勝敗はわからないと思っていた。だが違った。あの戦争の全てを掌握していたのはアナタだ」

「それが理由だと?」

「親父は確かに傲慢だった。しかしそれに見合うだけの実力を持っていたとも思っている。だから、そんな親父を倒した相手の実力を。その底を見たいと思った。それだけだ」

「……」

「あ、です!」


 なるほどなるほど、何とも可愛らしい理由ではあるが、彼にはそれを問うだけの資格はある。しかし、どうしたものか。俺が全力を出したとなれば、法王クルスが亜音速くらいで飛んでくるだろう。

 俺は端の方で様子を見ているライゼン学校長に目を向ける。

 彼は少し考えた後、ゆっくりと歩を進め俺たちの前へとやって来た。


「ミケラルド様、どうでしょう。これを機に、ミナジリ共和国の秘法(、、、、、、、、、、)を見せて頂く事は?」

「秘法?」


 俺が首を傾げると、リィたんが言った。


「ミック、ライゼンは転移魔法を見せろと言ってるのだ」

「あぁ」


 瞬間、またもざわつく生徒たち。

 当然、アリスのように知っている者は知っているが、あくまでそれは噂程度のもので、実際に転移魔法が存在すると確認した者はいない。何故なら、転移魔法の使用者は皆、俺の身内だからだ。「実在を確認した」と言える第三者はいないのだ。

 だから転移魔法の存在は、現代でいうところの都市伝説状態だった。

 それを、ライゼン学校長は見せろと言ってきた訳だ。

 別にこの転移魔法は隠している訳でもないし、ライゼン学校長の狙いもわかる。まぁ、それ以外の狙いはわからないが、生徒たちのためでもある。ここは素直に彼の案にのっておくか。


「そうですね、学校長の許可もある事ですし、ここは野外実習といきましょうか。リィたん、ナタリー」

「うむ」

「わかった」


 リィたんとナタリーがテレポートポイントを取り出し、皆を一列に並べる。

 転移魔法をよく知るエメリーとレミリアが先に転移すると同時、皆から驚きの声があがった。

 その時俺は見た。いや、正確には俺ではない。

 彼は俺に対し警戒していた。だからこそ俺の視線に気を配っていたはずだ。

 彼のライゼン学校長の表情を、俺の分裂体であるルークが見たのだ。

 分裂体を通して見たライゼン学校長の目は、確かに笑っていた。

 まるでお宝でも見つけたかのような瞳。俺はライゼン学校長に警戒しながらも言った。


「では、ライゼン校長、ゲラルドさん、こちらに触れてください」


 この二人は俺のテレポートポイントから転移してもらった方がいいだろう。


「うむ、失礼する」

「……こうか?」


 ライゼン学校長とゲラルドがテレポートポイントに触れ、転移し消えて行く。

 行先はそう、俺とリィたんがよく訓練していた荒地である。


 ◇◆◇ ◆◇◆


 皆の喧噪が止まぬ中、俺が荒地に転移すると、早くもナタリーの周りを生徒たちが囲んでいた。


「ミ、ミックー! 助けてっ」


 ナタリーが装着しているテレポートポイントは腕輪に付与されたもの。

 皆がその腕輪に興味を示すのも理解出来る。そして、同じ腕輪をしているリィたんには、怖くて近づけないってのもとてもよくわかる。


「ハーフエルフが住みやすい世界になったのでは?」

「あー! そういう事言っちゃうー!?」


 もみくちゃにされるナタリーをくすりと笑った後、俺は皆に呼び掛けた。


「はい! さぁ、皆さん。転移魔法に興奮するのはそれくらいにしてください。これから私の全力を見せるにあたって注意事項があります」


 皆の注目を受けた後、更に説明を続ける。


「まず、正規組はリィたんの後ろへ。放出する魔力の関係上、失神してもらっては困ります。是非その目に焼き付けて欲しいですからね。冒険者組の中でも自信のない方はリィたんの後ろへ。我こそはと思う方はもっと前に出てもらって構いません」


 言いながら俺はゲラルドを見る。


「ゲラルドさん、アナタは特別に最前列へどうぞ」


 と、言ってまとめたところで、最前列まで出て来たのは顔見知りばかりだった。

 ゲラルド、ライゼン校長の他、ラッツ、ハン、キッカ、アリス、エメリー、レミリア。そして意外な事にクレアもいた。ナタリーとメアリィはちゃんとリィたんの後ろにいる。

 さて、この中で誰が耐えられるだろうか。


「徐々に魔力を解放していくので、気分が悪くなった方からリィたんの後ろへお願いします」


 俺がそう言うも、皆は余裕な表情をしていた。

 しかし、クレア、エメリー、レミリアは違った。彼女たちは俺をよく近くで見ているからだろうか。俺の言葉の真意をしっかりと理解しているのだろう。

 そんな事を考えながら、俺は魔力を込めるのだった。

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