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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第二部

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415/917

その414 リザードマンの授業

「凄い……ですね」


 小声で俺に言ったのはルナ王女だった。


「まぁ……相手が相手ですからね……」


 ルナ王女にそう答えるも、彼女は緊張からか何も返せなかった。

 もしかして最初の言葉も無意識に漏らしたものなのかもしれない。

 全員が固唾を呑んで見据える先には、【チェンジ】が解除されたジェイルが立っているのだ。その背後には、神聖騎士オルグとマスタング講師が緊張した面持ちでジェイルの背を見ている。

 オルグの登場で湧いた教室だったが、それ以上のインパクトがジェイルにはあったのだ。

 まぁ、オルグもマスタング講師もジェイルの見張りだろうけどな。

 前の方では、無言なジェイルに対してナタリーが身振り手振りで何かを合図している。

 俺の【超聴覚】によると――、


「ジェイル! 何か! 喋って!」


 小声ではあるが、とても当たり前なアドバイスだった。


「何緊張してるのよ! いつものジェイルらしくもない!」


 どうやらあのトカゲ師匠は緊張しているようだ。


「……ジェイルだ」


 自己紹介は大事だよな。

 その後、ジェイルは一つ咳払いをし……、


「ジェイルだ」


 大事な事だしな、二回くらいは大目にみようじゃないか。


「剣は得意だ」


 このまま「過去勇者を殺した」とか言いそうだな。


「ジェイルだ」


 あまり人前に立たないしな。

 こういう事もあるのだろう。仕方ないので、俺はジェイルに【テレパシー】を発動した。


『実技をしましょう。皆を外に連れ出してみては?』

『ジェイルだ』


 話のかみ合わなさがジェイルって感じがするな。

 直後、これもまた「らしい」と言えばらしいのだが、リィたんがジェイルに助け船を出した。


「そういえばマスタング」


 流石リィたん、呼び捨てなのに違和感ないわ。


「む、何であるか?」

「講師たちの実力を見せてもらうのも、我々の勉強になるのではないか?」


 すると、マスタング講師の隣にいるオルグが口を尖らせた。


「ほぉ」


 オルグがマスタング講師に視線を向け一つ頷く。


「どうであろう、ジェイル殿? ここは外に出て我輩(わがはい)と模擬戦など?」


 マスタングの進言に対し、ジェイルが頷く。


「剣は得意だ」


 彼、今日、二言(ふたこと)しか喋ってないのでは?

 今度から実技前提の授業の際は、広場集合とかにしておけばいいんだよ。

 まぁ、それが出来る程、情報統制がとれる訳じゃないんだけどな。


 ◇◆◇ 聖騎士学校広場 ◆◇◆


 マスタング講師の実力は聖騎士団の隊長クラス。

 SS(ダブル)とは言えないものの、それに近しい実力を有している。

 今の勇者エメリーがギリギリ勝てるくらいの実力だ。

 だが、彼には当然、エメリーにはない経験がある。

 筋骨隆々の身体以上に、その足運びは称賛に値するものだ。

 剣を構えるマスタング講師がジェイルに言う。


「ジェイル殿、リザードマンは強靭な鱗を持つと聞くが、本当であるか?」

「試してみるといい」


 ようやくちゃんと喋ったな。戦闘の場に出ると緊張が緩和されるんだろうな。

 しかし、マスタング講師の魔力量じゃ……訓練用の木剣だとジェイルに傷一つ付けられないのでは? まぁ、規格外の耐久力を皆に見せるのも良い機会か。

 ジェイルは剣を構えず棒立ち。対し、マスタング講師は構えるだけで何も出来ない様子だ。

 あのクラスになると、相手(ジェイル)がいかに強敵か、格上かってのを理解するのも早いだろう。だが、これは模擬戦。学生たちの視線もあるのだ、マスタング講師も動かない訳にいかない。


「っ! でいやぁああああああああ!!」


 マスタング講師は気合いを入れた瞬間、地面スレスレを這うように駆けた。

 ジェイルの右足を薙ぎ払いながら背後に回るも、ジェイルはそれをかわしていた。同様に何度か攻撃を仕掛けるも、ジェイルはそれらを全てかわして見せた。

 これには神聖騎士のオルグも目を見張る。


「かわしてばかりであるな!」

「そちらは外してばかりだな」


 いい煽り方だ。今度使おう。

 だが、その煽りも何のその。マスタング講師がニヤリと笑う。


「ならば確実に当てさせてもらうのである」

「ほぉ?」

「はぁ!」


 野太い声を発し駆けるのはこれまで同様。

 しかし、その後マスタング講師は、いくつかのフェイントを攻撃に交ぜた。

 ……なるほど、生物の反射を利用した攻撃か。確かにこのレベルの攻撃をするとなると、勇者エメリーやラッツたちでは経験が足りない。

 だが、相手は剣神イヅナよりキャリアのある勇者殺し。その程度の対応は朝飯前である。


「っ!? この攻撃に反応しないのであるか!?」

「フェイントが甘い。一撃一撃の間隔を相手によって変えるのだ。……このように」


 ジェイルが動いた。

 まるで先程のマスタング講師をなぞるような動き。

 反射行動によって誘導されたマスタング講師は、あっという間にジェイルからコツンと一撃もらってしまった。


「一本だ」


 呆気にとられるマスタング講師と……ミナジリ共和国の脅威を感じ取ったであろう神聖騎士オルグ。この動きだけで、オルグは気付いたはずだ。ジェイルの実力はオルグと同等、(ある)いはそれ以上だと。

 事実、ジェイルの実力はオルグを上回っている。だが、全てを見せる程、俺たちは甘くないのだ。

 だからこそなのだろう。オルグは動いた。


「オルグ様……!」


 マスタング講師の前に出たオルグが、木剣を持ちジェイルの前に立って言ったのだ。


「血が騒ぐ。是非とも一手ご教授を」


 中々面白い展開になってきたな。

次回:「その415 オルグとジェイル」

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― 新着の感想 ―
[良い点]  ポンコツジェイルも可愛いです。
[一言] ひ◯しです。
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