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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第二部

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410/917

その409 気になるあの子

 これ以上はまずいとでも思ったのか、正規組の女は、そこで魔力の放出を抑えた。微細な魔力の変化といっても、俺とリィたんは見逃さない。

 あのショートボブの女、名前は【ファーラ】といったか。出身は……リーガル国? 貴族でも大商人でもないとしたら一体?

 身元保証人の欄にある【ギャレット】という名前、どこかで聞いた事がある。

 今度ドマークあたりに聞いてみるか。

 次々と自身の壁に衝突し、土塊人形相手に手を痺れさせている状況下、ナタリーとエメリィは、そのファーラと同じくランクCで止まった。

 彼女たちはランクAパーティから選出されたものの、まだまだ成長途中だ。

 そして、彼女たちの腕力では本来であればランクFにすら届かない。

 ただ、木剣の刃先に魔力を纏わせるという魔力の扱いに長けているだけの話なのだ。

 そして、ランクD+には――、


「へぇ、君が【サッチ】さんの娘さん(、、、)だね?」

「は、はい! 父がいつもお世話になってます! 【サラ】と申しますっ!」


 気になるあの子、二人目。

 ミナジリ共和国に新人冒険者を集めるため、俺は武闘大会で戦った熟練のランクA冒険者サッチをミナジリに招いた。そのサッチが求めた対価が、この【サラ】の聖騎士学校入学に要する資金提供だ。

 むさくるしいおっさんことサッチに似ても似つかぬ健康的な柔肌。短い茶髪、ボーイッシュな風貌と凛々しく輝く瞳。年はナタリーと同じく十三。

 流石に冒険者個人が子供を聖騎士学校に入れるには無理がある。だが、サッチは俺というスポンサーを上手く使い、見事娘を入学させた。

 ランクCには届かぬまでも、成長は期待出来そうだ。


「そんなにかしこまらなくても結構ですよ。気軽にミっちゃんとでも呼んでください」

「ミ、ミっ?」


 耳は良いようだ。

 そんなサラの反応にくすりと笑っていると、その後ろからルナ王女がやって来た。


「現時点で、私はここのようですね」

「いえいえ、入学して間もないのにランクD+は素晴らしい事ですよ」

「だといいのですが」


 言いながらルナ王女は高ランク者が並ぶ方を見た。

 単純な力比べでこれだけの差がある。力という点においては、正規組から見れば、冒険者は雲の上の存在と言える。

 しかし、二年間みっちり鍛えれば、それが(くつがえ)る事だってあり()る。正規組の対抗心を煽って、冒険者の更なる実力向上も狙える。

 場合によっては卒業者全員が聖騎士になる事も夢じゃない。

 まぁ、それには多くの弊害もあるだろうけどな。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「はい、とても興味深い結果でした。これから皆さんは、力を付け、魔力の扱いも学んでいくでしょう。そして、力を付けた後には、その力を試したいとも思うでしょう。ですが忘れないでください。その力は簡単に皆さん自身を壊す諸刃の剣だという事を。それでも力試しがしたいというのであれば、この私がいくらでも付き合います。そして、是非、その力の正しい使い方を学んでください」

「「はいっ!」」


 (おおむ)ね、俺の言いたい事は伝わったようだ。

 ……概ねな。


「では次に戦略(ストラテジー)ゲームをしましょう」


 その言葉を聞き、ビクリと反応する者は、この中で一人しかいない。


「はい、アリスさん。とてもいい反応ですね。是非実験台になってください」

「……今、実験台って言いましたよね?」

「言ってませんよ?」

「言いました」

「じゃあ実験台になってください」

「開き直らないでください!」


 とても可愛い。

 彼女は天性のツッコミ体質のようだ。

 成績表の備考欄に「ツッコミ担当」と書いておこう。


「はぁ、それで、私は何をすればいいのでしょう?」

「レベル0を皆さんに見せますので、ご協力を」

「私はレベル8(、、、、)でもいいんですよ?」


 なるほど、レベル7を最後にクリアしてから半年以上。

 最早(もはや)それを超えられる段階まで強くなったと言いたげだな。


「わかりました。では、それは後程。まずは手本という事で」

「はい!」


 俺が指を鳴らすと、皆が斬り倒していた土塊人形が集まり、二十の人形に分かれて行く。


「「うわぁ……」」


 聖女アリス、そしてナタリーから聞こえてきた声。

 出現したのは、ミケラルド像二十体。

 怒ったミケラルド、泣いたミケラルド等、喜怒哀楽をモチーフに造られた像の他、傲慢なミケラルド、軟弱なミケラルド、考えるミケラルドみたいな芸術的な像もある。中でも、(なか)指を立てて挑戦者を煽る像が今回のお気に入り作品である。


「アリスさん、わかりやすいように魔法はなしでお願いします」

「大丈夫です、あれは殴る前提の像です。そういう顔です」


 彼女が何を言ってるのか、皆目見当もつかなかったが、俺の「開始」の合図により、聖女アリスが()えた。


「はぁああああああ!」


 吼えてる。


「この! このっ! このっ!!」


 重点的に顔が破壊され、ミケラルド像の首から上が消えていく。

 普段のストレスが原因なのか、嬉々として壊している気がするのだが、気のせいだろうか。

 最後のミケラルド像の首を刈り取った聖女アリスは、手の甲で額の汗を拭いながら言った。


「いい汗かいたぁ」


 レベル0なのだ。今のアリスなら目を瞑ってでもクリア出来るというのに、余程熱心にやったのだろう。正に皆の手本というべきだろう。

 何にせよ、ゲーム感覚で楽しみながら実力を付けられるのは良い事だ。

 その内、聖騎士学校は、本格的な討伐任務を学生に課すだろうからな。

次回:「その410 法王への報告」

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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱりアリスさん良いよね 最高
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