表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

407/930

その406 絶望の初日

「うぅ……ごめんなさい。ごめんなさい」


 そう呟きながらきょろきょろ周囲を見渡すのは、公爵令嬢のレティシア。

 既にルナ王女の薬草採取は終わったものの、生憎と護衛は俺一人。

 ルナ王女が先に帰る訳にもいかないのだ。

 三人の内、一人だけがまだ終わっていない状況。最後の一人になった時の焦燥感、罪悪感はその人しかわからないものである。

 だからといって手伝う訳にもいかない。別に協力が駄目という訳ではない。事実、ライゼン学校長は、何も禁じていなかった。

 禁止事項がないのであれば手伝ってやりたいのだが、それではレティシアのためにならないのだ。

 レティシアの背を見つめるルナ王女に、俺は耳打ちをする。


「あんまり見ていると、更にプレッシャー感じちゃいますよ」

「そ、そうなのですかっ? ではどのようにしたら……?」

「可能な限りあの子がストレスを感じない状況が必要ですね」

「む~……そうだ。この待ち時間を有効に使っている事をアピールすればいいのではありませんかっ?」

「悪くないですね。なんなら、ゆっくりするように命じてしまった方が楽かもしれません」

「はい、それでいきましょう」


 がさつではあるが、心根は優しい王女だ事。


「レ、レティシア、焦らなくてもいいんですよ。私はルークと剣の修練をしています故」


 巻き込まれたけどな。


「は、はい! ありがとうございます!」

「時間制限もないのです。ゆっくりとやりなさい。その分、私もルークと長く剣を交えられますから」


 直後、俺の【超聴覚】が反応する。


「だ、だったら尚更急がなくちゃ……!」


 何故レティシアは更に焦ったのだろうか?

 とは言いつつも、結局レティシアは陽が沈む時刻まで薬草を探していた。

 擦り傷、切傷、土汚れと。中々に腕白風なレティシアが完成したが、彼女は最後まで弱音を吐かずにやりきった。

 貴族の令嬢にこうした強さがある事を知った俺は、ほんの少し嬉しくなった。


 ◇◆◇ ◆◇◆


 聖騎士学校の教室に戻り、薬草を届けた俺たち。


「ほぉ」


 ライゼン学校長は教壇の上でしっかりと待っていた。

 そう、誰もいない教室で。教室内を見、レティシアが言う。


「うぅ……一番最後でした……」


 悲嘆(ひたん)にくれるレティシアだが、俺はそうは思わなかった。

 ライゼン学校長がちらりと俺を見る。


「ふむ、護衛のルーク・ダルマ・ランナーだったかの?」


 聖騎士学校内に、どんな闇人(やみうど)がいるかわからない。

 だからこそ、(ルーク)の正体を知っているのは身内以外だと総括ギルドマスターのアーダインと、法王クルスくらいだ。まぁ、アイビス皇后も知ってるだろうけどな。


「ルークとお呼びください、ライゼン学校長」

「うむ、ではルーク。お主がルナ王女殿下とサマリア公爵令嬢の護衛である事は報告を受けている。が、今回の薬草採取にお二人に助力しなかったのは何故か?」


 腕白レティシアを見てそう思ったか。まぁ事実だけどな。


「護衛の解釈によるかと」

「というと?」

「陛下から賜った任は、お二人を無事聖騎士学校から卒業させる事。初日とはいえ、薬草採取という任務をこなせないのでは、これからの任務に支障が出るでしょう」

「なるほど、では護衛を使い薬草採取をした他の貴族連中についてはどう思う?」

「さぁ……ですが、これだけは言えます」

「ほぉ?」

「まだ初日は終わっていませんから」


 ニヤリと笑うライゼン学校長。


「面白い答えだな」

「ありがとうございます」

「……うむ、規定量に達している。三人とも寮に戻ってよろしい」


 人を騙しそうな明るい笑みを見せたライゼン学校長に敬礼した俺たちは、寮へ向かった。その途中、レティシアが俺に聞いてきた。


「ルーク、先程の『初日は終わってない』ってどういう意味です?」


 俺はその質問をルナ王女に向ける。


「殿下はどう思われますか?」

「偽装が出来る任務もあれば、出来ない任務もあるという事でしょう」


 流石はブライアン王の娘。聡明でいらっしゃる。

 これに対し、レティシアが首を傾げる。

 今頃優雅に紅茶でも飲んでる方々は、初日をどう乗り越えるのだろう。


「あ、お二人とも出来れば動きやすい服装に着替えておいてください」

「ですね」

「へ?」


 聖騎士学校の制服。

 考えてみれば過酷な任務を行う上での正装とは言い難い。

 あくまでこれは見栄えを意識したものであり、本来は不要なものなのだ。

 聖騎士が着用する鎧は年々軽量化されていると聞くし、パンツやスカートなんて穿こうものなら、任務に支障が出て然るべきだ。

 夕食の後、それは起きた。


『点呼ー!!』


 講師の怒号に近い声が聞こえてきた。

 準備をしていたというのもあるのだろう。

 薬草採取とは違い、最初に部屋から出てきたのは、ルナ王女、レティシア嬢、俺だった。


「ルナです!」

「レ、レティシアです!」

「ルークです」

「うむ、講師のマスタングであーる!」


 マスタングというか、マウンテンというかそんな感じのゴリラが目の前にいた。何だこのゴリラは? 獣か魔族か? 人……? いやいや馬鹿な?

 申し訳程度の髪の毛と、物凄い胸毛と腕毛。モンスターの類かもしれない。


「では、その場で腕立て百回!」

「「はい!」」


 まぁ二人は覚悟していただけあって、順応性があるよな。

 寝間着姿で出て来る者もいれば、ドアから外を覗くように見る者も見受けられる。


「終わりました」

「うむ、元気はないがいいだろう。寝てよし!」

「はっ」


 という具合に、俺はいち早くそれを乗り切った。

 未だ廊下に出て来ない貴族たちは、これから知る事になるのだろう。

 これはまだ絶望の幕開けに過ぎないのだと。

 悲鳴や悲痛という名のBGMバックグラウンドミュージックを聴きながら、横になるミケラルド(ルーク)君だった。

次回:「◆その407 初日の冒険者たち」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ