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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第二部

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406/917

その405 楽しい薬草採取

2020/10/29 本日二話目の更新です。ご注意下さい。

「……え、今何て言ったの?」


 どうやら貴族様方の耳には届かなかったようだ。

 そりゃさっきまで「御機嫌よう」とか言ってた人たちには理解し難い状況だよな。


「報告はここで結構。この依頼票を取った者から任務に就くように」


 ライゼン学校長め、これを任務と言い切ったか。

 となると、色々注意が必要だな。

 そんな事を考えていると、隣に座るレティシアが立ち上がった。


「行く、んですよね?」


 普通の公爵令嬢には出来ない判断。なるほど、サマリア公爵家の教育は悪くないようだな。


「当然、行きますよ」


 ルナ王女も立ち上がる。

 ナタリーやリィたんたち冒険者陣も黙々と立ち上がり、教壇に置かれた依頼票を取って消えて行く。ここばかりは冒険者たちは有利だな。

 だがしかし、未だ困惑する正規入学組。

 すると、バンと机を叩きと立ち上がる一人の男。


「冗談じゃないっ! 僕は()えあるリンドブルト家の長男だぞ! 何故そんな事をしなくちゃいけないんだ!!」


 ライゼン学校長の片眉が上がる。


「ふむ……リンドブルト家……あぁ、法王国の伯爵家か」



 伯爵家か。下級貴族とはいえその中では一番上。あのドヤ顔が余計だが、プライドはあって然るべき……なのだが――、


「うむ、では結構」

「ふっ」


 そのニヤケ面が絶望に染まるまで三、二、一、はい。


「退学手続きはこちらでしておく。今日中に荷物をまとめて帰るといい」

「……へ?」

「ほっほっほ、百十名いた学生が早くも百九名か。例年よりもちと早いが、まぁこんなもんだろう」

「ちょ、ちょっと待て! 何でそれだけで僕が退学にならなくちゃいけないんだ!? 薬草採取だぞ!? あんなもの冒険者たちにやらせておけば――――っ!?」


 直後、ライゼン学校長が刺すような視線を男に向けた。

 へぇ、ピンポイントで殺気を飛ばすなんて器用だな。

 尻餅を突いた伯爵家の男に対し、殺気を消したライゼン学校長は言った。


「ワシは【任務】と言ったはず。その任務に対し異を唱えておいて『それだけ』とはちと平和ボケが過ぎんかのう? 退学で済んだだけありがたく思え。それとも軍議にかけて斬首が希望か? ん?」


 狸爺(たぬきじじい)ここに極まれりって感じだな。

「斬首」って口にしながら笑顔とは、十代のボンボンにはホラー以外の何物でもないだろう。失禁し、失神した伯爵家のおぼっちゃんには、ご愁傷様としか言えんな。


「他に意見はあるかの?」


 ライゼン学校長か。曲者感はあるが、現状それ以下でもそれ以上でもない、か。


「なるほど、面白い学校ですね」


 ルナ王女がニヤリと笑う。

 そんなルナ王女に続き、レティシア、俺も依頼票を取る。

 さぁ、楽しい楽しい薬草採取の始まりだ。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「一見ヨモギのように見えて、葉脈の中心に白い筋が見えるものが世間一般でいう薬草です。冒険者ギルドではこれを枚数ではなく、規定重量に対し報酬が支払われます。我々が受けたのはごく一般的な薬草採取です。一キロの薬草を集め、先程の教室に持って行けば任務完了ですね」


 簡単な説明の(のち)、ルナ王女とレティシアが頷く。

 と同時に、草むらからリィたんが現れた。


「ルークか」

「これはリィたんさん、こんにちは」

「こ、こんにちは……」


 呼称を使い分けする事は出来ても、他人行儀なのは苦手みたいだな。

 まぁ、ここでルークとリィたんが知り合いってのは無理があるから、学校内で交友を深めていくという設定にしたのだが、どうもリィたんはさっさといつもみたいに喋りたいようだ。


「あ、あっちの方に薬草があったぞ。うん」


 何だこの可愛い生き物は?


「それはありがとうございます。殿下、お嬢様、早速向かいましょう」

「「はいっ」」

「あ、ちょっと待て!」


 と、リィたんが俺を呼び止める。


「……礼をされてやってもいいぞ」


 交友関係の構築が三段飛ばしくらいの勢いだな。


「では、今度学食でもご一緒に」

「ふっ、食べるのは得意だ」


 特異な存在ですからね。

 嬉しそうなリィたんを見て俺も嬉しくなる。

 あんなリィたんも悪くないもんだ。

 ほっこり顔のミケラルド君に、ルナ王女が声を掛ける。


「ルーク、彼女はやはり?」

「えぇ、既に集め終えて帰る途中ですよ。まだ始めてもいない人がいるというのに、凄いですね」

「で、ルークがその手に持っているのは?」

「薬草一キロです」

「…………我らからいつ離れたと言うのです?」

「離れてませんよ。これはミナジリ産の薬草です。以前採取して溜めていたのを【闇空間】から取り出しただけです。安心してください、任務内容から逸脱していませんので」

「まったく、貴方は違った意味で規格外ですね」

「ルークとお呼びください、殿下」

「そうでしたね、ルーク」


 だがしかし、ルナ王女もレティシアもしっかりしている。

 この任務の肝を理解しているようだ。

 並みの貴族ならば、俺に対し「薬草をよこせ」だの「とってこい」だの言いそうなものだが、この二人は、自分でやるという事に意識を向けている。入学と同時に王族、貴族という驕りを捨てたのか。はたまた割り切っているのかはわからないが、リーガル国の将来はしばらく安心出来そうだな。

 だからこそ、しっかりとした護衛をしなくてはいけない。

次回:「その406 絶望の初日」

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