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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第二部

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399/917

◆その398 Z区分

 嵐のような魔力の暴風。

 ナイフを突き立てられるような感覚に、ナタリーが自身の肩を抱く。


「うぅ……」


 そんなナタリーの頭にポンと手をのせるジェイル。

 ジェイルの手から、ナタリーを包むのは温かき炎の魔力壁。


「こちらに殺意を向けないにしても、リィたんの本気がビシビシと伝わってくるな」

「うん、ミック大丈夫かなぁ……」

「心配するなナタリー。アイツの目を見てみろ」


 優しく言ったジェイルだったが、


「……凄く、怖がってるね」


 ジェイルは憶測でモノを語ってしまったようだ。


「………………そうだな」

「残念なミック」

「まぁ、いつも通りとも言える」

「だよね、ここで強く(たくま)しい目を見せてたらミックじゃないもん」


 と、ナタリーの指摘が【超聴覚】を発動していたミックの耳に届く。


(あの二人め、言いたい放題だな? こんな魔力を前に強く逞しい目をしている方がおかしいだろ。……まぁ、リィたんを前に土下座決め込んだあの時(、、、)よりかはマシになったか)


 地上に降下したミケラルドが、リィたんを見る。

 リィたんがハルバードを構えると、ミケラルドは自分の爪を鋭利に伸ばし腰を落とした。


「ふっ!」


 同時にリィたんが駆けた。

 その速度は、ミケラルドにかつての雷龍シュガリオンを思わせた。

 だが、ミケラルドはリィたんを見失わなかった。


「はぁ!」


 リィたんの攻撃を、爪を交叉(こうさ)させ受けたミケラルドの顔が歪む。


「ぐぅ!」


 なんとかリィたんの本気を受け切ったミケラルドだが、攻撃がそれで終わるはずがなかった。


「はぁあああああっ!」


 幾度も撃ち込まれる強烈な一撃。

 爪の先に込めた魔力は、その一撃毎に霧散する。


「どうした、ミック! それでは私を倒す事など出来ないぞ!」

(だよね、全能力が向上したと言っても、これまでと同じでリィたんを倒せるはずがない。なら、これで……どうだ!)

「っ!?」


 直後、リィたんの足が止まる。

 ミケラルドがリィたんのハルバードを片手で掴んだからだ。


「……まるで魔力の海だな。静かだがそれは嵐の前の静けさ。私の攻撃により乱れていた魔力が嘘のようだ。これは……ダブルヘッドセンチピードの【超調整(バランス)】か」

「正解」

「そして私の力を片手で抑えるその膂力は……ゴブリンチャンピオンの【超怪力】といったところか」

「それと、マスターゴブリンの【鋼拳(こうけん)】も使ってる」

「道理でビクともしない訳だ」


 と、リィたんがハルバードを持つ手から力を抜くと、それは大きく甲高い音を立てて割れ、飛散してしまったのだ。


「そのハルバードを砕かれたのは地龍テルース以来だな」

「オリハルコンより硬い素材、見つけなくちゃね」

「人の身ではオリハルコンで十分なんだがな」

Z区分(ゼットくぶん)だとそうもいかないでしょう」

「なるほど、ミックもこちら側に足を踏み入れたか」

「いやー、ここまで長かった……」

「一年だぞ?」

「めでたく四歳になりました」

「子供の成長は早いとエメラが言ってたが、ミックが異常だという事は私も気付いてたところだ」

「私も、って他に誰が?」

「ミナジリ国民の総意だと思え」

「はははは」


 乾いた笑いを見せたミケラルドが、リィたんを前に手を開く。


「受けてくれるかい?」

「初撃はな――っ!?」


 直後、リィたんの身体が後方へ吹き飛ぶ。

 宙で体勢を立て直したものの、リィたんがミケラルドを見る目は驚きに満ちていた。


(エルデッドウィザードの【魔法強化】を施し放った風魔法【突風】。まるでオリハルコンの板を叩きつけられたかのような衝撃だ)


 着地したリィたんがミケラルドを睨む。


「もう絶対に受けん!」


 無数の大地を踏み抜き、ミケラルドの背後へと移動したリィたん。

 後頭部に向かって放たれた一撃は、ミケラルドの後ろ手によって受けられてしまう。


「っ! ムシュフシュの【死角の瞳】か!?」

「よっと!」


 リィたんの手を受けたミケラルドは、そのままその手を掴み、リィたんを背負い投げる。


「いやぁ、ランクSダンジョンのモンスターはくれる固有能力が一つな分、強力なのが多くてさ。使いどころに困るよね」

「確かにその通りだ。だが、ランクSダンジョンは全部で十一階層。七階層の【ジャミングバード】、八階層の【ヌエ】、九階層の【キングスケルトン】、十階層はモンスターが混合で出現するが、十一階層の【ヒドラ】がいるだろう? これらの能力を見せずに私に勝つつもりか?」


 するとミケラルドは頭を掻き、思い出すように言う。


「七階層から下は能力が地味なんだよね。まぁ、まずは【ジャミングバード】の【ジャミングビート】から」

「っ!」


 驚きを見せたリィたんがミケラルドを見つつも、周囲に警戒を敷く。


(確かにミックは正面にいる。だが、周りからもミックの気配がするのは【ジャミングビート】の能力のせい。ジャミングバードの児戯を、ミックが使うとここまで厄介になるのか。魔力で動きを追えば、それはミックの狙い通りの動きとなってしまう。視認のみとは、制限を掛けられたものだ……!)

「で、これがヌエの【神速】」

「なっ!?」


 振り返るリィたん。

 そこにいたのは、今の今まで正面にいたはずのミケラルドだった。


「【ジャミングビート】と併用するとかなり有効でしょう?」

「どこが地味な能力だ……?」

「キングスケルトンの【骨強化】はただの骨太能力だし、ヒドラの【(きわみ)回復】はダメージ喰らわないと発動しないしね」

「ミックの爪は骨だぞ? 防御力も攻撃力も上がり、更には回復能力だ。どこが地味なのか私には見当がつかないな」

「あ、ならこれはどう?」


 ニコリと笑うミックに、リィたんが鼻息を吐く。


「これ以上何があると?」

「これこれ」


 瞬間、ミケラルドの身体が発光する。

 身体から溢れるこの光を、リィたんは以前目撃していた。


「神聖騎士の秘技【光の羽衣】!? っ! いや、これは違う……?」

「そうそう、俺は神聖騎士の血は吸ってないからね。これは【光の羽衣】になる前の能力だよ」

「…………なるほど、先のリプトゥア国との戦争時、イヅナ(、、、)あんな事(、、、、)を言っていたのはこういう理由か」


 そう、ミケラルドが見せたのは(まさ)しく剣神イヅナが持つ秘技――【剣神化】だったのだ。

調べるとわかると思うので、先に書いておきます。

リィたんの言う「あんな事」ってのは「◆その339 詰めの一手」の中でイヅナが言ってますね。


次回:「◆その399 ミナジリの王」

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