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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第二部

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398/917

◆その397 あれから……

第二部開始です。

 ◇◆◇ ミナジリ暦二年 四月一日 ◆◇◆


【真・世界協定】が結ばれてから半年。

 勇者エメリーは各国へ自由に行ける事になった。

 これにより、勇者エメリーは聖騎士学校入学までの間、剣神イヅナと共に武者修行の旅へと出た。当然、勇者襲撃の可能性は捨てきれなかったため、二人にはミナジリ共和国の元首ミケラルドより緊急脱出用の【テレポート・ポイント】を手渡された。

 また、剣聖レミリアと剣鬼オベイルもまた、各々修練を積み、レミリアは冒険者ランクSS(ダブル)となり、剣鬼オベイルに至ってはソロでランクSダンジョンを攻略。

 力を付けたと確信したオベイルは、聖女アリスの指導の報酬として、ミナジリの三強であるジェイル、リィたん、ミケラルドに対し決闘を挑み、見事三連敗を喫した。

 対ジェイル戦では、ジェイルの圧倒的な剣技を前に成す術なく敗退。

 対リィたん戦では、リィたんの右拳一撃の下ダウン。

 対ミケラルド戦では、リィたんを真似したミケラルドの右拳一撃の下ダウン。

 強さに驕らぬ三者に対し、オベイルは更なる修練を積んだ。SSS(トリプル)の称号を得た今となっても、ミナジリ三強を目指し続けている。

 また、聖女アリス率いるオリハルコンズは多くの依頼をこなし、今では法王国でその名を知らない者がいない程有名になった。アリスの【聖加護】の力は益々強くなり、覚醒まで後一歩という段階にまで入った。

 キッカの魔法技術も向上し、魔帝グラムスの第二の弟子として日夜修練を積んでいる。

 更にラッツとハンは、互いに研鑽を続け、来期の武闘大会優勝候補とまで言われるようになった。

 そして、ミナジリ共和国では――。


「ギャラリーがこれだけとはな、いいのかミック?」

「始まりの四人って感じがしていいでしょう、リィたん?」


 リィたんと日々続けているミケラルドの鍛錬。それが最終段階へと入った。

 応援に駆け付けたのはミケラルド最古の仲間ナタリー。


「ミックー! 負けたらご飯抜きっ!」


 そして、ミケラルドの師匠ジェイルだった。


「ナタリー、私の後ろから見るように」


 修練場として使っている荒地に集まったのは、ミナジリの名を冠するこの四人。その中で異様な魔力に包まれ対峙するのはミケラルドとリィたんだった。

 そう、本日はリィたんによるミケラルドの最後の試練。

 とんとんと跳躍し、身体から緊張を逃がすミケラルド。

 対し、腕を組み不動を貫くリィたん。

 腰を落とし、構えを見せたミケラルドを前にリィたんが笑う。


「ついにここまで来たか、ミック」

「どうだろうね」

「まぁそうだな。『ミックの踏ん切りがつくまでに時間が掛かっただけだ』とナタリーは言ってたからな」

「流石ナタリー、俺の事をよくわかってる」

「わ、私もわかっていたぞっ」

(何を張り合っているのだろう……?)


 反応に困ったミケラルドが、それを誤魔化すようにくすりと笑う。

 直後、リィたんから強烈な魔力が吹き荒れる。


「今、誤魔化しただろう?」

「さ、流石リィたん、俺の事をよくわかってる」

「であろう。まぁこの際だ、このままいくぞ」

「おっしゃ、こい!」


 リィたんがミケラルドに向かって手をかざす。

 放たれた魔法は無数の水魔法【金剛斬(こんごうざん)】。鋼鉄すらも簡単に切り裂く強力な魔法である。


「よっと」


 対し、ミケラルドが地面に手をかざし放ったのは、土魔法【土塊(つちくれ)操作】。と同時に発動する超能力【サイコキネシス】

 ミケラルドを囲み浮遊する土の壁が、リィたんの【金剛斬】を受ける。

 土壁に阻まれた【金剛斬】は、その耐久力に勝てず、ぱしゃんと水音を立てて消えていく。


「我が【金剛斬】はミスリル程度なら簡単に切り裂くんだがな?」

「じゃあこっちの【金剛斬】どうかな?」


 攻守交替。今度はミケラルドが【金剛斬】を放った。


「っ!」


 リィたんがそれをミケラルド特製のハルバードで受け掻き消すも、


(……なるほど、ミックの【金剛斬】はオリハルコンの武具を刃毀(はこぼ)れさせる程にまで達したか。我が(あるじ)ながら恐ろしいものだ……!)


 オリハルコンのハルバードが損傷する。

 異様な出来事にナタリーが驚きを露わにする。


「うっそー!? ね、ね、見たっ? ジェイル!」

「見てる。というか、見えてるナタリーにも驚いてる」

「ふふん、何たってもうすぐ聖騎士学校の学生だからね!」

「私は講師として招かれてる」

「よく法王国が許したよね」

「ミックのおかげだろう」

「うん、そうだね。あ、あれってもしかして!」


 ナタリーが目を見開き、リィたんを見る。

 大地が揺れ、リィたんの背から出現した巨大な波。

 それこそが水龍リバイアタン最強の魔法【大津波】であった。


「うへぇ、二番目に出す魔法じゃないでしょう……」

「あぁ、最初に(、、、)出すべきだった!」


 物凄い勢いで向かってくる水の圧。

 しかし、ミケラルドはこれを飛ぶ事でかわした。


「空に届かないのが弱点だよね、津波系の魔法は」

「甘い!」


 直後、リィたんは巨大な波を一か所へとまとめた。


「嘘ぉ!?」


 勢いはこれまで以上、巨大な水の槍となったソレは、空に浮かぶミケラルドに向かった。


「くっ!」


 かわすミケラルドだが、水の槍はうねるように旋回し、またもミケラルドへと向かう。


「仕方ない」


 ミケラルドが先の土壁を正面へと無数に重ね、盾とした。


「それで防げると思ったか!?」

「防げるんだなぁ、これが」

「なっ!?」


 水の槍は確かに土壁を貫いた。しかし、それは最初の数枚。

 徐々に勢いをなくしていった水の槍は、先程同様、最後には水音をぱしゃんと鳴らし消えていったのだ。


「驚いた?」


 ニカリと笑い言うミケラルド。


「……そうか、土壁一枚一枚の間にサイコキネシスの障壁を挟んだのか」

「ご明察……ん?」


 ミケラルドがこれまで感じた事のない静寂。

 リィたんは水龍リバイアタン、確かに強力である。

 しかしこれは、かつてのリィたんにはなかった強大な魔力。


「雷龍シュガリオン戦以降、私も鍛錬を重ねた。だからこれが、ミックに初めて見せる……私の【覚醒】だ!」


 それは、リィたんがミケラルドに向ける――初めての本気。

※わかりやすいように、年の切り替わりは一月としました。なので、建国満一年経ってなくとも暦は二年となります。


次回:「◆その398 Z区分」

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