表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

393/917

◆その392 秘技

 怒りと共に発光するシギュンの身体。

 そんなシギュンを見てキッカが指差す。


「……あれ何?」


 すると、その言葉にアイビスが答えた。


「あれが神聖騎士の真骨頂(しんこっちょう)。【光の羽衣(はごろも)】。まさか冒険者相手に聖騎士団の秘技を見せるとはな」

「光の羽衣……!」


 アリスが神々しく光るシギュンに目を奪われる。

 しかし、戦闘を続けるリィたんの目にはそんなモノはなかった。

 確かに【光の羽衣】の力もあり、リィたんの攻撃は止まった。

 シギュンの【光の羽衣】の発動と同時に、リィたんを攻撃と共に吹き飛ばしたからである。当のリィたんにダメージはない。

 涼しい顔でシギュンの動きを待っているのだ。


(さ、流石リィたんさんです……!)


 アリスはリィたんの異常な強さに畏敬の念を覚え、戦闘を見守る。

 すると、アリスの隣に座っていたラッツがアイビスに聞いた。


「あの【光の羽衣】には一体どのような効果があるのでしょうか?」

「特殊能力の【身体能力向上】。効果としてはそれと大差ない。しかし強化は【身体能力向上】の比ではない。更に武器に【退魔】の力を宿し、微量ながら【聖加護】の真似事も可能だ。とはいえ、これは【聖加護】の足下にも及ばぬがな。【光の羽衣】などと呼ばれているが、神聖騎士にそれを教えたのは他でもない剣神イヅナよ」

「っ! ではあれは、噂に名高き【剣神化】!?」

「技の伝授以降、神聖騎士により改良が加えられておる。同じとは言わぬが、原理は気脈の操作。さて、リィたん(ソフィア)相手に通じるのやら」


 直後、ハンが目を見開く。


「仕掛けたっ!」


 練武場の中心で動いたのはシギュンだった。

 真っ直ぐにリィたんに向かい、高速の突きを放つ。

 これを大剣の切っ先で受けたリィたんだったが、既に眼前にシギュンの姿はなかった。

 一瞬の内にリィたんの背後に回ったシギュンがニヤリと笑う。


(死ね……!)


 冒険者相手に神聖騎士の切り札――【光の羽衣】を発動した。

 多くの部下たちを前に、醜態(しゅうたい)を晒したと言っても過言ではない。

 その一撃は、リィたんを絶命至らしめる一撃であると、シギュンは確信していた。

 歓喜に満ちた表情を見せるのも(つか)の間――リィたんの後頭部に突き放った一撃は空を裂く。


「……ぇ? ど、どこ!?」


 目を丸くし、キョロキョロと見渡すも、リィたんの姿はない。

 それは、大地に何かが突き刺さるような音だった。

 バッと振り返るシギュン。

 そこには、リィたんが持っていた大剣が地面に突き刺さっていたのだ。

 その奥から聞こえるコツコツという足音。

 呆気にとられるオリハルコンズが、足音の接近と共に顔を上げる。

 見上げた先にあったのは、これまでと何ら変わらぬリィたんの不敵な表情。

 すんと鼻息を吸ったアイビスが、驚きを隠しながら落ち着いた声でリィたんに言った。


「もう、よいのかえ?」

「違約金は払わなくてよさそうだが?」


 返す言葉は、(あるじ)の命を全うしたであろう、試合終了を告げる言葉。


「確かに、【光の羽衣】を使った神聖騎士相手に、傷一つ負っていないのであれば、妾の護衛としては申し分ない。其方(そなた)たちも勉強になったであろう?」


 アイビスがオリハルコンズに聞く。


「まぁ、新世界は見られたよね……」


 ハンに同意を求めるように言うキッカ。


「俺が見てたのは人じゃなく線か点だったな」


 肩を(すく)めながら言うハン。


「貴重な体験をさせて頂きました」


 総括するラッツと、


「も、物凄かったですっ!」


 立ち上がって目を輝かせるアリス。

 アイビスが立ち上がり、練武場でポカンと口を開けているシギュンを見下ろす。


「シギュン」

「は、はっ!」


 ハッと我に返りアイビスに(ひざまず)くシギュン。


「見事であった。今後も鍛錬を続け、(わらわ)()いてはクルス陛下を安心させておくれ?」

「ははっ!」

「そろそろ夕餉(ゆうげ)じゃな。では皆の者、邪魔したのう」


 という言葉と共に、アイビスはオリハルコンズとリィたんを連れ、練武場を去る。

 その背を見送った騎士ストラッグが、ふっと視線を練武場へ戻す。


「っ!?」


 そこにあったのは、顔をヒクつかせ俯く――怒りに満ちたシギュンの顔だったのだ。


 ◇◆◇ ◆◇◆


『ミック、あのシギュンという女。かなり強いぞ』

『それは、龍族としての言葉かい? リィたん』

『水龍リバイアタンとしての言葉だ』

『へぇ、神聖騎士はイヅナさんに迫る強さって聞いてたけど、そんなにか』

『あの場であれ以上シギュンに力を出させる訳にはいかなかった。私の【歪曲の変化】を見破られてしまうし、何より皆が危ないからな』

『お、さっすが~』

『ふっ、もっと褒めてもいいんだぞ、ミック』

『偉い偉い』

『ふふふふふ』


 ミケラルドとの【テレパシー】で、シギュンとの一戦を伝えたリィたん。

 ミックの労いの言葉により微笑むリィたんに、ミケラルドが質問する。


『でも、という事は、更なる力を隠しているって事だよね』

『うむ、そういう事だ。私の見立てではあの女、イヅナ以上に強い』

『それってつまり……ジェイルさんに近いって事じゃ?』

『余り自分の師を軽く見るものではないぞ、ミック』

『へ?』

『ナタリーもそうだが、ジェイルも先の戦争の後、更に己を追い込んでいる。何たって弟子が優秀だからな』

『はははは、そりゃ光栄だね』

『それに、イヅナも今のままでいる訳でもない。先はわからぬが、現状の私が報告出来る事はそれだけだ』

『うん、ありがとう。悪かったね、無理言っちゃってさ』

『ミック以上に泥を(すす)っている者を私は知らん。構わんさ』

『こっちは間もなくミナジリ共和国だよ。胃がキリキリする』

『苦労をかけるな、ミック』

『まぁ、壊れない程度に頑張ります』


 アイビスの自室前で、ミックとの【テレパシー】を終えたリィたん。

 廊下の窓から覗く月を見上げ、リィたんが小さく零す。


「まったく……人材不足にも困ったものだな」


 ミナジリ共和国の人材不足を嘆きながら、リィたんは深い溜め息を吐くのだった。

次回:「その393 真・世界協定1」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
[気になる点] 立ち上がって目を耀かせるのアリスでは?リィたんになってますよ。 [一言] いつも更新楽しみにしてます!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ