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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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390/917

その389 水龍と神聖騎士

 ◇◆◇ アリスの場合 ◆◇◆


「考えたな、アイビス(、、、、)


 最初にそう言ったのはリィたんさんでした。

 私たち【オリハルコンズ】が、まさかアイビス様と一緒にお茶を楽しむ日が来るとは思いませんでした。


「ほ、本日はお日柄もよく~……」


 キッカさんのカップを持つ手が震えています。

 零れてます。お茶が零れていますよ、キッカさん……!


「はははは、キッカ。風邪でも引いたのか? 震えてるぞー?」


 余裕そうに見えるハンさんですが、ハンさんが飲もうとしているのはお茶ではなくミルクです。……一気にいきましたね。


「無作法申し訳ありません、アイビス様。我々は元は【緋焔(ひえん)】という名で活動していたパーティで、あぁ、パーティと言えばアイビス様も【聖なる翼】で活動されていた時期がありますね。聖なる翼と言えば十代前半の四人で構成されたランクSパーティ。あぁ、パーティと言えばアイビス様も【聖なる翼】で活動されていた時期がありますね。聖なる翼と言えば十代前半の四人で構成されたランクSパーティ――――」


 おかしいです。ラッツさんは同じ言葉を延々喋ってます。


「「はははははは」」


 皆さん、声も顔も笑ってません。


「アリス」

「は、はい! 何でしょうアイビス様!」

「面白きパーティじゃな」


 と言いつつもアイビス様は真顔です。

 何をお考えなのかサッパリです。


「お前たちはアイビスの隠れ蓑(、、、)だ」


 リィたんさんが切り出すと、三人はピタリと止まりました。

 あ、でもまたキッカさんは震え始め、ハンさんは砂糖を代わりに舐め始め、ラッツさんは最初の挨拶からやり直し始めました。


「アイビスが闇に狙われる可能性がある」


 が、リィたんさんは気にせず進めます。私もこの方の強さを見習いたいものです。


リィたん(ソフィア)殿、性急過ぎるのでは?」

「可能性の話しかしていない。それとも否定出来るか?」

「……いえ」

「であろう?」


 凄いです。

 アイビス様が低い立場となるとは意外です。

 しかし仕方ありません。相手は世界有数の実力者。

 その気になれば法王国を呑み込む事の出来る御方。


「よって、お前たちにはクルスがいない間、アイビスと交流してもらいたい」

「お日柄もよく~」

「このお茶は甘ぇな!」

「初めましてラッツです」


 全員がブレません……!


「アリス、説明は任せた」

「ソフィアさん、それは横暴ではっ?」

「横暴とは――」


 直後、リィたんさんが視線に強い殺気を込めました。

 すると、ラッツさんたち三人は警戒しながらもスッと立ち上がり、アイビス様の周りを囲んだのです。凄い、緊張していても自分たちの役割をちゃんとわかってる。


「――こういう事だぞ?」


 ニヤリと笑うリィたんさん。

 何故これ程の方が、ミケラルドさんに付き従うのか。

 リィたんさんの身の上話を聞いた上でも信じられません。

 舌先三寸(したさきさんずん)でリィたんさんの前から生き残ったミケラルドさんも流石ですけど。いえ、まぁ生き残りたかったのは事実でしょうけど。


「っ! 私は一体……!?」

「っ! 俺は一体……!?」

「この殺気は……!」


 キッカさん、ハンさん、ラッツさんが覚醒しました。


「おはよう諸君」


 ようやくちゃんとした話が出来そうですね。

 お三方は朝から気が気じゃない様子でしたから。


「あなたはもしや……!」


 そういえば、ラッツさんは武闘大会でリィたんさんと戦っていました。

 今の殺気でリィたんさんの正体がわかったのかもしれません。


「久しいな、ラッツ」

「やはり……」


 その後何故か私が、彼等に同じ説明をしました。

 私にも無垢な時代がありました。けど、今はわかります。

 子供が憧れている聖女のお仕事。その実、こんな仕事内容とは思いもしない事でしょう。


「という訳だ。アリスを気に掛けるアイビスが、アリスが加入するパーティを知っておきたいのは必然。周りには交友を深めているようにしか見えない」

「それが闇への牽制、という訳ですね」


 リィたんさんの補足に対し、ラッツさんの呑み込み速度は流石ですね。


「ふむ、ちょうどいい時間のようだ」


 と、リィたんさんが言ったところで、貴賓室の扉からノック音が響きました。

 嘘、接近に気付けなかった……!


『アイビス様、お呼びでしょうか』


 この声は……!


「すまぬの、【シギュン(、、、、)】。入っておくれ」

「「なっ!?」」


 今度は驚きの余り私も立ち上がってしまいました。

 アイビス様に招かれ、入ってくるのは神聖騎士シギュン様。

 法王国に二人しかいない最強の一角。

 長い紫の髪と、大きな瞳。瑞々しい唇を引き立たせる白い肌。

 口元の黒子(ほくろ)が彼女の魅力を更に引き出している気がします。

 女の私でさえも、目を奪われるような妖しく美しい女性。それがシギュン様です。


「これはこれは……オリハルコンズの方々とお見受けします」


 (つや)のある色っぽい声。

 けれど、我々に対する驚きは低いモノ。

 どうやら私たちの登城は既にご存知だったようですね。


「……そちらの方は?」


 リィたんさんの存在は初めて知るみたいですね。


「お初にお目にかかる。我が名はソフィア。冒険者ギルドから派遣された――アイビス様の護衛(、、)だ」


 まさか、護衛と明言するとは思いませんでした。

 その一言は、完全なる聖騎士団との対立を意味するモノ。

 陰ながら動く話だったのに、急展開です。

次回:「その390 神聖騎士シギュン」

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