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その38 競争

本日二話目の投稿です。ご注意ください。

 翌朝、ジェイルとナタリーが頑張っている中、開拓地に山から流れる川の水を水路として流した。

 因みに、リィたんはクロード家の方に水路を引いていた。

 これで、この家族が水に困る事はないだろう。


「やったぁ! 念願の畑が作れるよ!」

「おぉ、美味しい野菜期待してるからな、ナタリー!」


 ナタリーは堆肥などの農業技術を知っているのだろうか。あとでテレパシーで聞いてみるか。

 何故ここで聞かないか。それは、時間が有限だからである。

 事の始まりはリィたんの提案から。


「ミック。どうやらここらでミックの手に余る事態は少ないようだ。そこで、私から一つ提案がある」

「ん?」

「競争しよう!」

「……へぇ、面白そうじゃん」


 という簡単な流れで、どちらが早くランクA(、、、、)になれるか、勝負が始まったのだ。

 競争は既に始まっている。

 それは、各自水路を引き終わった段階でスタートなのだ。


「それじゃあ行ってくる!」

「うむ、精進しろ」

「行ってらっしゃい! ミック頑張ってねー!」


 ジェイルとナタリーに見送られ、俺は早速シェンドの町に着いた。


「何っ!?」


 俺の隣を通り過ぎる美女。

 巨大な麻袋を片手に、俺を横目で見ながらニヤリと笑う。

 くそ、リィたんに先を越されたか!


「なんだ、あの二人、パーティ解散したのか!?」

「ならあのイケメンは私のパーティに!」

「お、おい、リィたんを誘ってみようぜ!」


 とか言われてるが、そんな訳ないだろう。

 しかし、今は競争の時。外野に構ってる暇はない。

 俺はランクCの適当な依頼をとり、受付に持って行く。


「あ、ミケラルドさんちょうどよかった!」

「へ?」


 俺の登場に、何故かギルド受付嬢のネムが喜んで迎えたのだ。


「リィたんさんは聞く耳もってくれるような状況じゃなかったので、ミケラルドさんにお願いしちゃおうかな~?」


 少し遠回しに話すネム。

 おそらくこれがリィたんの「聞く耳もたなかった」理由なのではないだろうか?


「急いでランクAに上がる必要があるんです。時間かかるようでしたら別の人にお願いします」


 おそらく、ネムが提案しようとしているのは、ギルド受付嬢が、その特権で選ぶ【特殊依頼】。

 これは、信頼出来る冒険者をギルド側が選んで依頼するといった、重要な依頼という事だ。つまり、言い換えれば、絶対に失敗出来ない、もしくは失敗して欲しくない依頼なのだ。


「わわわっ! すみません。って、ミケラルドさんランクCですよね? ランクB通り越してランクAって……一体どういう事なんです?」

「リィたんとの勝負です。負けたら俺が罰ゲームなんです」

「……あぁ~、道理で」


 リィたんが強引にとった依頼の原因と、俺たちがソロで動いている理由を察したようで、ネムは呆れながら納得したようだ。


「依頼というのは、実はこれなんです」


 受付側に置いてあった依頼書の一枚を俺に見せるネム。

 特殊依頼案件――西の山を根城にする盗賊の討伐、か。

 黙読する俺を窺うネム。


「いいですよ。報酬も金貨三十枚と、悪くなさそうな案件です」

「やったぁ~♪ それじゃあ受理しちゃいますね!」

「あ、受理する前に確認したい事があります」

「はい? 何でしょう?」

「盗賊の生死、奪われた物の所有権、人質がいた場合の対応についてです」

「生死は問いません。生け捕りに出来るのであればそれに越した事はありませんが、これまで成功したケースは限りなく少ないです。あくまで冒険者の生存が大前提です。そして、盗品に関してはミケラルドさんの所有物としてもらって結構です。依頼内容が盗品の奪還などでしたら話は別ですが、今回そういった特殊事項はございません。最後に、人質や捕虜がいた場合ですが、これも出来る限り救って下さい。先に述べた、あくまで冒険者の生存が前提ですが、人質を無視して行動するような事は可能な限り避けてください」


 盗賊は殺して構わない。盗品の所有権は手に入れた場合俺の物。人質優先の行動……か。


「わかりました。手続きをお願いします」

「はい、宜しくお願い致します」

「あ、ついでにこれも」

「え?」


 ランクCになった事で、一人が受けられる最大依頼数は三件となったのだ。利用しない手はないだろう?

 俺が受けた依頼は「盗賊討伐」、「キラーウルフ討伐」、「ゴブリン集落の破壊」だ。

 正直、北西の山を根城にする、ゴブリン集落の破壊が一番大変なんじゃないかって思うあたり、俺はまだ人界に慣れていないのだろう。

 ギルドが盗賊討伐を特殊依頼にしたのは、人間の知恵故だろうな。ゴブリンも頭が回るが、人間には及ばない。群れを作った場合、どちらが怖くなるのかは瞭然(りょうぜん)だ。

 北西の草原に出現するキラーウルフは、ダイアウルフの上位種で、人間を常食とする狼だ。ダイアウルフと同じで大きな牙を持ち帰れば問題ないだろう。

 どれも西に集中する依頼だ。クロード家に近い依頼は、安全のため出来るだけ消化しておきたい。


「よし! それじゃあ早速とりかかるか!」

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