表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

389/917

その388 聖騎士団長オルグ

『失礼します』


 ノックの前に響いてきた野太い声。

 法王クルスが頷くと共に、俺は扉へ手を掛けた。

 開けた扉の奥にあったのは、(いか)つくガタイのいい、浅黒い肌の男だった。

 彫りが深い濃い顔付き。一度会ったら忘れられなさそうなタイプの男である。

 鋭い目つきと物静かな佇まい。

 なるほど、神聖騎士(しんせいきし)の称号は伊達(だて)じゃないという事か。


「……イイ」


 神聖騎士も男だという事に、変わりはないという事か。

 だがオルグはディックとは違いすぐに職務へと戻った。

 ギンと目を光らせ、俺を威嚇するように見、そして法王クルスへ視線をやったのだ。


「陛下、オルグにございます。御用と聞き参上致しました」

「うむ、ご苦労。今しがた冒険者ギルドを介しアーダインの下へ情報が入った」


 オルグがアーダインをちらりと見る。

 その目には、敵意こそないものの対抗心のようなモノが見える。


「……と、仰いますと?」

「休みを与えられたお前の部下が、魔力を解放し町中を歩いているとな」

「何と、そのような事がっ!?」


 ふむ、この反応からするに、オルグも把握していなかった様子だ。

 という事は、オルグの配下が怪しいな。


「部下の取りまとめも大変だろうが、他国の民に迷惑をかけるのは感心しないな」

「はっ! すぐに原因を究明しご報告に上がります!」

「うむ、下がってよろしい」

「はっ! 失礼致します!」


 と、聖騎士団長とのやり取りは一瞬で終わってしまった。


「驚いたか、ミィたん?」


 法王クルスが聞く。


「えぇ、クルス殿がまるで王様でした……」

「そうだろうそうだろう……ん? そ、そうではない! オルグの実直さにだ!」

「あぁ、確かにそうかもしれません。問題のあった聖騎士だからこそ、もっとこう……――」

「――問題のありそうな聖騎士団長だと?」

「そう、それです。ですが、そうではなかった。ちょっと意外でした」

「そうだとも。オルグはこちら(、、、)側だからな。聖騎士学校への冒険者招致に乗ったのも彼だ」

「という事はやはり別の者が?」


 そう聞いたところでアーダインが言った。


「オルグは真面目過ぎてな。ヤツは知らない事だろうが、ハリボテ団長なんて揶揄(やゆ)される事もあるそうだ」

「それは……凄いですね。法王国に二人いる神聖騎士に対してそんな事言うなん……て? っ! そうか、もう一人……!」


 アーダインが頷く。


「神聖騎士【シギュン】。大半の聖騎士はシギュンの命令しかきかん。今回の騒ぎもおそらく」

「アーダイン」


 と、法王クルスがアーダインの口を(つぐ)ませた。


「悪い」


 まぁ、証拠もなくこれ以上言うのは(はばか)られるのだろう。

 神聖騎士【シギュン】――名前からして女だろうか。


「シギュンさんは今回の護衛に?」


 そう俺が聞くと、


「いや、いない」


 法王クルスが答えてくれた。


「とすると法王国ですか」

「うむ、今回はオルグに一任している」

「それで、オルグさんとシギュンさんの力関係は?」

「言わずともわかるだろう。聖騎士団内は二つの派閥がある。一つはオルグ。もう一つは当然シギュンだ。がしかし、シギュンの求心力が異常でな。勝負にすらならない」

九対一(きゅういち)ってところですか」

「それ以下だ」


 わお。


「それでよくオルグさんは聖騎士団長を続けられますね」

「当のシギュンがオルグを立てているからだ」


 何それ、怖い。


「そして、オルグはそのシギュンにご執心(しゅうしん)って訳だ」


 アーダインの言葉により、段々と聖騎士内部の相関図がわかってきたな。


「……つまり、オルグさんはシギュンさんに強く言えない」

「そういう事だ」


 肩を(すく)めて言ったアーダイン。

 そして、法王クルスが続けた。


「聖騎士学校の管轄は聖騎士団長のオルグのものだ。私とアーダインはシギュンの留守を狙い、オルグにこれを伝え、認可を出させた。少なからず邪魔が入ると思ったからな」

「だが、ここまでとは思わなかった。という事でしょうか」


 二人が頷く。


「……仕方ないですね」

「何がだ? ん?」


 法王クルスの言葉と共に、俺は自分の頭をトンと指差した。


『お二人に【テレパシー】を使うのは初めてですね』

『これは……【テレパシー】か!』

『ほぉ、これは面白い。吸血鬼の【超能力】か』


 アーダインと法王クルスが驚きを見せた後、俺は先程法王クルスがアーダインを止めた先を……いや、核心について聞いたのだ。


『それで、そのシギュンさんが闇ギルド員という可能性はあるのでしょうか?』

『……なるほど、そのための【テレパシー】か。……法王としては信じたくないところだな。お前はどうだ、アーダイン?』

『ふむ、聖騎士学校招致の妨害については、聖騎士のプライドを盾に冒険者を毛嫌いしているとも考えられる。オルグからはきっと『厳重注意した』って報告しか入らないだろうしな。シギュンが闇ギルド員かどうかはわからんが、これで終わるとも思えないな』


 だよな、誰だって身内の中に、それも法王国の象徴とも言える神聖騎士に闇ギルド員がいるとは考えたくはない。

 こちらの事はこちらで対処するとして、法王国にいるシギュンを気にしない訳にもいかないのだ。

 一旦話を終えた俺たち。

 俺は紅茶をすすりながら、再度【テレパシー】を発動したのだ。


『あ、リィたん? ミケラルドだけど』

『む、どうしたミック?』

『ちょっと調べてもらいたい事があるんだよね。実は――――』


 そう、俺たちは後手に回る訳にはいかないのだ。


『――――ほぉ、それは面白い』


 だからこそ、出来る事はやっておかないとね。

次回:「その389 水龍と神聖騎士」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ