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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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387/917

その386 アイビス皇后の護衛

 ◇◆◇ リィたんの場合 ◆◇◆


 冒険者ギルドからの依頼は至極単純なものだった。

 アイビスの護衛。元聖女といえど戦闘能力が高いとは言い難い。

 魔法の扱いこそ巧みなものの、人間にしてはもう高齢。

 ミックが言うには、アイビスは冒険者換算で言えばSS(ダブル)程だとの事だ。年齢により衰える力。それが自然の摂理(せつり)とは言え、何とも虚しいものだ。

 アイビスと会うのはこれで二度目。

 一度目はガンドフで会った事があった。ミナジリ共和国がまだリーガル国のミナジリ領だった頃、魔族四天王【スパニッシュ・ヴァンプ・ワラキエル】率いる魔族の軍と、ガンドフとの間に起きた戦争時に会った時以来である。

 その時からは想像出来なかった今回の依頼。

 まさかアイビスがこう出て来るとは思わなかった。


「何のマネだ?」


 眼前で(ひざまず)くアイビスに私はそう言った。


「水龍リバイアタン様、此度(こたび)(わらわ)我儘(わがまま)にお付き合い頂き、ありがとうございます」

「私は依頼を受け、それをこなすだけだ。それにお前がそうしていると……その、体裁が悪いだろう」

「お気遣い痛み入ります。皆の手前、不遜な態度があるやもしれませぬ」

「構わん。態度如きで気分を害したりはしない」


 アイビスの自室での、アイビスと私による事前打ち合わせといったところか。

 私の気分を害すれば、国の存亡にかかわる。未だそう思われているとは心外ではあるが、人間からしたらこの態度は当たり前なのかもしれない。

 そんなやり取りの後、アイビスがすっと立ち上がると同時、部屋にノック音が響く。

 ……この魔力はもしかして?


『アイビス様、アリスです』


 私とアイビスが見合う。

 私が一つ頷き、部屋の扉を開けると、そこにはやはり聖女アリスがいた。

 すると、アリスは私の顔を見るなり目を丸くした。


「す!?」


 とても口がとがっている。


「すすすすっ!?」


 まったく、何が言いたいのやら。


「水龍リバイアタンッ!?」

「何だ、私の名前を言うのにそんなに時間が掛かったのか」


 先日、ナタリーと一緒に、グラムスと訓練をしているアリスを見たが、あの時は気付かなかったのか。まぁ、訓練でそれどころではなかったと見るべきか。


「アリス、中へ」

「は、はいっ」


 アイビスがアリスを自室の中へ(いざな)う。


「安心しろ、聞いていた者はいない」


 私がそう言うと、アイビスが頷きアリスを見る。


「ア、アイビス様、何故水龍リバイアタン様がここへ……?」

「リィたんだ。二人共、今後私をそう呼べ」

「え、あ……はい」


 皆して私を「水龍水龍」と呼ぶのは理解し(がた)い。

 私には、ナタリーから貰った「リィたん」という名前があるのだ。


「クルスが【真・世界協定】に際してしばらく法王国を留守にする。クルスがおらぬ間に、この法王国で何が起きるかわからぬ。冒険者ギルドが各国の要人に護衛を付けただけの事。無論、ミナジリ共和国の防衛力も懸念事項故……リィたん殿」

「うむ」

「……わぁ、【歪曲の変化】ですね。確かにリィたんさんの魔力なら、護衛がリィたんさんってわからないです。……まぁ、実力でわかっちゃうかもですけど」

「案ずるな。いざという時にしか力は使わん」


 私がそう言うと、アリスは「ですね」とほほ笑んだ。


「そうだ、これからは何とお呼びすればいいですか?」

「偽名というやつだな。安心しろ、ミックからとっておきの名前を貰った」


 と言ったところで、アリスがピクリと反応した。

 もしやミックの名前で? ふっ、懐かれているではないか、我が(あるじ)よ。


「【ソフィア】と呼べ」


 確か、勇者エメリーがリプトゥア国に隠れてミナジリ共和国で活動してた時、ミックから同じ名前を貰っていた。二人に名付けるという事は、ミックお気に入りの名前という事だ。ふふふ、どんな想いが込められているのだろうか。


「ではソフィア殿、この部屋を出る前に一つだけお伺いしたい事があります」

「ほぉ、聖女が私に質問を?」


 やけに神妙な面持ちだ。

 何か思い悩む事でもあるのだろうか。


「何故、貴方はミケラルドさんに付き従うのですか?」


 何とも予想外の質問だった。

 確かに、外から見れば私がミックに従う理由が見えないのだろう。

 アリスの疑問は(もっと)もではある。……アイビスも気になるようだな。


「ふむ、では私とミックの出会いから話すべきか」


 瞬間、アイビスの耳がピクリと動いた。


「これは、腰を落ち着けて話を聞くべきであろう、アリス?」

「ですね! お茶入れて来ます!」


 さてどこから話したものか。

 私が、怯えるミックをからかっているところからか?

 それとも、対峙したところからか。

 もしくはミックが大地に額を擦り付けてるところからか。


「あ、先に聞いておきますけど」


 部屋を出る前、アリスが言った。


「何だ?」

「弱味を握られているとかじゃないですよね?」


 ……まぁ、常日頃のミックを見ていればそう思うのも無理はないか。


「ミケラルドさんなら(ある)いは……」


 変な懐かれ方をしているな、我が(あるじ)よ。

 だが、ミックは私の大事なパートナーだ。少しばかり嫌味でも言ってやるか。


「……お前が信じた男は、そのような男だったのか?」


 と私が言うと、しばらく考えたであろうアリスが、言葉を選ぶように言った。


「……ちょっとだけ」


 なるほど、選んでソレだったか。

次回:「その387 ギュスターブ辺境伯領」

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