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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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383/917

その382 報酬

「なるほど、ミックの思惑(おもわく)通りになったという事か」


 書類の束をトンと机の上でまとめたアーダインが言う。


「はて? 思惑とは?」

「アリスの力をここまで解放したのはお前だ」

緋焔(ひえん)の皆のお力があってこそですよ」

「その緋焔(ひえん)に出した依頼がふざけている。『法王国の闇を探れ』だと?」

「私からの依頼を覗き見る事が出来るのは、ギルド本部長特権ですね」

「否定するつもりはない」


 なるほど、引くつもりはないという事か。


「緋焔がオリハルコンズに加入したところで、彼等が闇ギルドに迫るにはいかんせん実力が伴っていない。闇ギルドの金策を利用し、商人ギルドを利用し、オリハルコンズの向上心を利用し、オベイルとグラムスをオリハルコンズに付けた」

「はて?」

「オリハルコンズの結束には十分と言える材料だ。そして、【聖加護】の力の解放にもな」


 まったく、どこまで見抜いているのやら。


「【聖加護】の能力解放には聖女自身の人類への愛が必要だ。これまでアリスが【聖加護】を使いこなせなかったのは、単純にその逆だったからだ。我々大人の都合で子供のアリスが戦場へと引っ張られる。嫌いになって当然だ。だが、それに我々が気付いた時にはもう遅かった。アリスの大人への疑心暗鬼は凝り固まっていた。どうしようもない程にな。しかし――」


 すんごい見られてる。


「ミック、アリスはお前と出会った」

「出会った? ランクSダンジョンへの強制同行の件ですか?」


 すると、アーダインは俺の言葉を鼻で笑った。


「はっ、ぬかせ。アリスがミックをここへ連れてくれば、そうなる事くらいわかっただろう? しかし、お前はアリスの手を振り解かなかった」


 女の子の手が柔らかかったから、なんて言えないからな。


「どんな経緯だろうと、結果としてアリスは人類ではなく一個の存在を信じる事は出来た。それがアリスにとっての大きな一歩だった。人類の中にも信じる事の出来る者がいると、お前はアリスに教えたんだ」

「魔族ですけどね」

「それはアリスにとって関係ない」

「でしょうね」


 俺は肩を(すく)め、アーダインの言葉に同意せざるを得なかった。


「更にはあの戦争だ」

「どの戦争でしょうね」

「人間の(みにく)い部分を世界に見せると同時に、魔族の良い部分を見せた。それが結果としてアリスに理解させた。己の判断は間違いではないと。個を重んじる事が決して悪い事ではないとアリスに教えたんだ」

「はははは」

「わかるか、ミック? 【聖加護】の能力解放の陰には、常にお前がいるんだよ」

「凄いですね、まるで私がヒーローみたいじゃないですか」

「道化の間違いだろう」


 まぁ、個人的にはそちらのが好きだな。

 何で現代地球のなりたい職業ランキングに「道化」が入っていないのか、ミケラルド君は(はなは)だ疑問である。


「まぁ、これでオリハルコンズが選考から漏れる事はないだろう」

「それは何よりです」

「人選に間違いはなかったようだな」


 ニヤリと笑うアーダインに、俺はそれは見事な作り笑顔を返した。


「報酬の法王白金貨三千枚は応接室に用意している。この後寄って持って行くといい」


 俺は真の笑顔を見せた。


「マジすか」

「大事な国家事業だ、失敗する訳にはいかないだろう。安心しろ、クルスからちゃんと手数料込みで貰っている」


 やっべぇな。一個に渡される額じゃないだろうに。

 がしかし、SS(ダブル)の依頼でほぼ一ヶ月拘束されたと考えると、そう高くもないような気がする。


「で、次の依頼だ」


 歩いていないのに転ぶ。こんな事が自身の身に起きるとは思わなかった。


「え、正気ですか? 【真・世界協定】間近だってのに?」

「安心しろ、その話だ」

「自分は中枢人物だったと思うんですけど?」

「法王白金貨、もう三千枚だ」

「やります。やらせてください。おや、こんなところに(ほこり)が? 掃除しておきますね、舌で」

「それはやめろ」

「あ、はい。それで、どんな依頼なんです?」

「知れた事。法王クルスの警護(、、、、、、、、)だ」

「え、それって聖騎士団が請け負うって話じゃないんですか?」

「クルスからの伝言をそのまま伝えよう。『(まこと)に信のある者にしか頼めない仕事だ』と」

「そりゃ有難い事で」


 がしかし、法王クルスがそう言うって事は、信の置けない者も同行するという事だ。それはつまり……聖騎士の中に? 何それ、法王国怖い。


「無論、私も付く。ミックはその能力を活かし、陰ながらクルスを守って欲しい」

「わかりました。あ、けどホーリーキャッスルに残るアイビス様(、、、、、)はどうするので?」

「無論、護衛の依頼を出した」

「イヅナさんですか?」

「イヅナはガンドフのウェイド王の護衛だ」

「じゃあ誰が?」

「ランクSの冒険者だ」

「それは心もとないですね」

「名をリィたん」

「前言撤回します。え、リィたんですか?」

「依頼額を提示したら快く受けてくれたぞ、お前程じゃないがな」


 確かに、リィたんは埃なんか舐めない。

 白金貨三千枚って調味料を加えれば大抵の人は舐めるだろう。

 俺は大抵の中にいるから問題ない。


「けど、そうなると聖騎士の面子を潰す事になるのでは?」

「当然、先程言ったように頭に「陰ながら」が付く」

「確かに、リィたんなら出来る……か」

「私は名目上、クルスのアドバイザーだ。まぁ、これもクルスが強引にねじ込んだんだがな」


 なるほど、だがそうなるとデュークの顔でも、ミケラルドの顔でもやりにくいな。となると、第三の顔が必要になる……か。


「問題なければ後程、日時と集合場所の連絡を入れる」

「わかりました」


 着実に進んではいるが、どこもかしこも危険だらけとは、まったく困った世界である。

次回;「その383 クルスの護衛」

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