表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

381/917

その380 オリハルコンズの真価

「キッカ、牽制頼む!」

「ライトシュート!」


 ラッツがゴブリンチャンピオンの攻撃範囲に入る事で、ムシュフシュもラッツへの警戒を見せる。しかし、そこへムシュフシュに対し、キッカの魔法を入れれば、ゴブリンチャンピオンまでの道が完成する。

 目の前に(ラッツ)が現れたゴブリンチャンピオンは、これに対応するしかない。ムシュフシュの尻尾の死角から意識が逸れた時、ハンが動く。


双猛剣(そうもうけん)双十斬(そうじゅうざん)っ!」

「ガァッ!?」


 そう、威力が変わろうと、やる事はかわらない。

 冒険者ギルドの総括ギルドマスター【アーダイン】が出した判断は間違いじゃない。たとえランクAパーティでも、ランクSダンジョンの低階層の攻略は可能である。命の危険がない限り、俺が動く事はない。

 だが、それが必要なのかそうでないのか、最終判断を査定官の俺が出すまでには、いくつものパーティ判断がある。

 攻撃に派手さはなくとも、やってる事はほぼ変わりないのだ。

 ならば、必然的に結果は見えてくる。


 ――あの時のアリスの判断は、確かに素晴らしかった。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「ラッツさん、一度三階層まで戻りましょう」

「……ふむ、なるほど作戦会議だな」


 進み続けるダンジョン、撤退ではなく一時撤退(、、、、)という判断。

 それは、進み続けるためのもの。攻略した階層ならば、モンスターの出現頻度もそこまで高くはないし、四階層の攻略情報を深く練るには悪い場所ではない。

 いいぞ、アリス。着実に成長しているじゃないか。

 俺も負けていられないな。


 ◇◆◇ ◆◇◆


 査定はたった一度しかない。

 だからこそ、限られた状況下での試行錯誤が求められる。

 だがまさか、そういった思い切った判断が出来るまでに成長しているとは俺も思わなかった。

 これは、俺から目が離れた後、アリス自身が経験し、学んだ事。

 学び、実践し、挫け、諦めずに何度も実践し、培った強い意思。

 子供だからではない。オリハルコンズのパーティの一員として、緋焔(ひえん)をまとめるラッツに進言し、勝ち取った決断。

【聖加護】という技術だけではない成長が、俺の目を通して、肌を通して感じられるというのは、何とも嬉しいものだ。


「何ですか、その目?」


 戦闘終了後、アリスは俺にそう言った。


「査定官の厳しい目つき、してません?」

「……厳しい?」


 駄目だ、欠片も思っちゃいないみたいだ。

 するとキッカが、くすりと笑ってから言った。


「今のは完全に子供の成長を喜ぶお父さんの目でしょう」


 三歳児ですけど?

 まぁ、俺の年齢を知ってる者はあまり多くない。

 デュークという姿だって、ミナジリ共和国の身内や、アーダイン、法王クルスとアイビス皇后くらいしか知らないのだ。

 ……このオリハルコンズには気付かれてしまったけどな。


「……お父さん?」


 駄目だ、微塵も思っちゃいないみたいだ。


「ないです」


 更なるダメ押し。


「絶対ありえません」


 最早(もはや)、死体蹴りと言っても過言じゃない。


「ないったらないです」


 墓まで暴きにきたぞ。


「……ないです」


 ホルマリン漬けにしたな。

 だが、最後の一言はどこかしおらしかった。何故かはわからないけどな。


「あははは、まぁそうだよねー。あ、ミケラルドさん」

「デュークです、キッカさん」

「いけないいけない。ミケラルドさん」


 正す気がない事がわかった。

 まぁ、外では気を付けてくれるんだろうけどな。

 俺は溜め息を吐いた後、キッカに聞く。


「デュークですが……何でしょう?」

「この後の五階層って、これまでのモンスターが襲ってくるところでしょう?」

「えぇ、そうですね」

「こういうところって結構あるじゃないですか。やっぱり理由ってあるんですかね?」

「そうですね……私はこの世界を管理している者からの挑戦、と思ってます」

「挑戦?」


 とキッカが小首を傾げたところでアリスが前に出てくる。


「管理している者って、もしかして神様の事でしょうか?」

「もしくは、それに準ずる何者か……ですね」

「そ、それは余りにも怖い発言だと思います」


 天啓(てんけい)天恵(てんけい)を受けたであろう勇者エメリー。

 それと時代を同じくして現れる新たな聖女。

 更には余りにも人工的なダンジョン――各階での功績に応じて現れる宝箱、攻略毎に現れる攻略報酬、攻略毎にリセットされるようにモンスターが湧くゲーム的仕様。

 頭が正常であれば、誰かしらの仕業であるという判断は間違いじゃないはずだ。


「人為的、(ある)いは作為的な世界からの挑戦。つまり、ダンジョンはある意味では高度な冒険者養成所と言えます」

「ダンジョンが養成所……?」


 ラッツがそう聞きながらハンと見合う。


「冒険者が裕福になるためだけじゃなく、しっかりと成長出来るようになってるんですよね。報酬で強くなれるし、階層報酬でも同じ事が言えます。まるでいつかやってくるであろう災厄に備えて、戦える人材の質を上げるために」

「それは……やっぱり魔王という事でしょうか」


 アリスの質問する声には震えも交じっていた。

 だが、そう結論付けるにはまだ早いとも言えた。

 俺は首を横に振ってから肩を(すく)めた。


「ま、一介(いっかい)の冒険者が全てを知るには情報が足りないですからね。まだ何とも言えません」


 そう言いながら苦笑した後、アリスが先程まで見ていた目を再び俺に向けた。


「……一介の冒険者?」


 どうやら彼女は、俺をミケラルドと信じてやまないようだ。

次回:「その381 好成績」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ