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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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その378 世界一の幸せ者

「……リィたん?」

「何だデューク、私の事を忘れた訳ではあるまい?」


 ニヤリと笑うリィたんは、黒のマーメイドドレスを着ていた。レミリアと同じく大人の女性感溢れるオフショルダー。しかも、スリット付きである。

 馬鹿な? 何だこの完璧美女は? ウェイターの男まで頬を赤らめているぞ?


「あ、はい。とても、いいと、思います、はい」

「ふふふふ、では少しだけ優越感に浸らせてもらおう」


 と言ったリィたんは、すっと手を差し出した。

 それは、先程、エメリーにしたエスコートの催促だった。

 この手をとったら世界が滅ぶと言われても、俺はこの手をとるだろう。

 それだけの美的魔力が、リィたんにはあった。

 気を抜けば顔がニヤケついてしまう。

 この緊張感は生前味わった事のないものだ。(むし)ろ、味わう程充実していたら、俺はこの世界に転生していなかったのだから。


「感謝する、デューク」


「それはこちらの台詞だ」、なんて言えば、場の空気を壊してしまう。

 いや、壊すのが俺の仕事(しめい)なのだが、それはこのタイミングではないと、俺の本能が言っていた。

 何故なら最後にやって来たナタリーに、目を奪われたのだから。

 刺繍鮮やかな白いシャツと、ロールアップされたストレートパンツ。サスペンダーと蝶ネクタイを着ければ、ボーイッシュナタリーの完成である。

 流石エメラさんだ。これまで彩られてきたのは全てドレス。そこにこういったスタイルがいれば、嫌でも目に付く。まぁ全然嫌ではないのだが。

 編み込まれた髪の毛でお団子を作り、うなじを見せてしっかりアピール。

 ギャップもあるが、これは凄い爆弾がきた。


「ふふん、どう?」


 今日ばかりはこのドヤ顔も許されるだろう。

 元は究極にいいのだ、どんな格好だって映えるのだ。

 がしかし、この様相は想像していなかった。

 今日はやはり俺の命日に違いない。これから厨房に行って茹でられてこよう。そしたら固有の【旨味成分】を発動して今宵の晩餐に一味加えられるのではなかろうか。


「全員揃ったな」


 リィたんの一言によりハッと我に返る俺。

 しかし、見渡せば桃源郷。

 俺は世界一の幸せ者かもしれない。

 今日のこの日は、多分生涯忘れない事だろう。

 世界を相手どり世界一の強者を目指す道程の、ほんの少しの息抜き。

 たまにはいいじゃないか。

 たまにあってもいいじゃないか。

 他愛もない話、時折交ざるジョーク、国の事、友人の事、これからの事。

 あっという間に過ぎた夢のような時間。

 多分、俺は「またこんな時を楽しむ」ために頑張るのだろう。その時はそうだ、聖女アリスも誘おう。

 彼女はきっと、俺の事を疑いながらも来るのだろう。

 だから頑張るのだ。この時、こんな状況、楽しく美味しい食事を皆と共にとるために。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「ミケラルドさんですよね?」

「デュークです」

「ミケラルドさんですよね?」

「デューク・スイカ・ウォーカーですよ、アリスさん」

「この前は気付きませんでしたけど、人前に立った姿ですぐわかりました。ミケラルドさん」


 人前とは(すなわ)ち、査定官のお仕事でオリハルコンズの前に立ったという事。


「何で別人の格好してるんですか?」

「デュークです」

「……あぁ、有名になりましたからね。わかりました、世を偲ぶ姿という事で納得します」

「ありがとうございます、アリスさん」

「やっぱりミケラルドさんじゃないですか!」

「ありがとうございます、アリスさん」


 察してくれたと思ったのに、実は察する気がないな?


「まぁまぁアリス。ミケラルドさんにも色々あるのよ。でしょ?」

「初めましてキッカさん」

「はい、初めまして〜」


 ぬぅ、アリスの言葉をそのまま受け入れるくらいにはキッカもアリスの事を信用しているようだ。

 良い傾向だとは思うが、少しは疑ってくれてもいいのに。


「デューク殿、本日はよろしくお願いします」


 ラッツと握手をかわし、


「ハンだ、よろしくな」


 ハンともガッチリ握手。


「絶対変な事企んでますね?」


 酷い言われようである。

 魔力も口調も声も姿も変えたのに、まさかバレるとは思わなった。

 オベイルとグラムスにはバレなかったのに。アリスだけ特別なのだろうか。

 まぁ、自分から肯定しない内は大丈夫だろう。

 とはいえ、緊張感が緩むのはここまでだ。

 何故ならこれからオリハルコンズの審査なのだから。

 さてさて、オベイルとグラムスは彼等にどこまで仕込んだのか。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「マスターゴブリン、チェック!」

「任せろ、ハン! 猛剣(もうけん)獣斬(じゅうざん)っ!」

「「プロテクション!」」


 キッカとアリスは光の魔法使いだ。

 同系統の魔法使いが同じパーティにいると不便を感じるのかとも思っていたが、先のガーディアンズのナタリーとメアリィもそうだったが、二人いる事を逆手にとれば、パーティワークも上手くいくものだ。

 ここまでは予想通り。

 問題はこのマスターゴブリンたちの襲来にどれだけ対処出来るかだ。

 わらわらと集まってくるマスターゴブリン。一匹だけの対処ならば出来て当たり前。しかし、相手が群れともなるとそうもいかない。

 さて、四人の成長を見せてもらおう。


「アリス、今!」


 キッカの合図と共に、アリスが杖を掲げる。


「神の光を……!」


 周囲を照らす光。

 ラッツとハンの武器が神々しく光る。


「マジか」


 そう呟いてしまったのも無理はないだろう。

 アリスが放ったソレは、正に【聖加護】なのだから。

次回:「その379 アリスの成長」

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