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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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376/917

その375 午後の予定3

 ◇◆◇ リィたんの場合 ◆◇◆


「目標視認した。あれが聖女アリスだな」

「うわぁ、すっごーい」


 ナタリーが見据える先には魔帝の二つ名を持つグラムスと、アリス、そしてもう一人は……あの時の娘か。


「ミックの情報によると、あれがキッカさんね」


 アリスとキッカ、二人が放った魔法をグラムスが同じ威力、速度で発動し相殺させている。どのような魔法であろうと関係なく、だ。

 なるほど、これまでグラムスの才を見る機会は少なかったが、確かに優秀な魔法使いだ。

 無数の魔法が飛び交う中、涼しい顔で対応している。

 魔法の妙手と言うべきか、遠距離戦のみで言うならば、グラムスもまたSS(ダブル)と言える。そういえば、彼がミナジリ共和国に来てから、冒険者ギルドの依頼を受けた様子はなかった。やはり弟子の破壊魔(はかいま)パーシバルが気になるのか。

 取り逃がした事をミックは謝っていたな。しかし言ってみれば、私が地龍(テルース)を逃がさなければ捕えられたのだ。後で私も謝るべきだろうか。


「オベイルもつっよーい!」


 オベイルと訓練しているのは二人の男の冒険者。

 ラッツ……記憶に新しいな。武闘大会では私の心を熱くさせてくれた。

 もう一人は確かハン……と言ったか。

 魔界から出た後、最初に出くわしたパーティ【緋焔(ひえん)】。

 ハン、キッカ、そしてラッツか。

 オベイルはオリハルコンの大剣(バスタードソード)を小枝の如く片手で扱っている。ラッツの猛剣も、ハンの双猛剣もオベイルには響かない。

 ふむ、戦争(あれ)から更に腕を上げたようだ。

 法王国では過去攻略出来なかったランクSダンジョンに潜ると言っていたが、結果はどうなったのだろうか。


「おうし、二分休憩!」

「はぁはぁ……クソ行ってパンツ下ろしてる間に二分なんて経っちまうだろうが」

「ぜぇぜぇ……ハン、下品だぞ」


 大の字になって空を仰ぐ彼等もまた、成長している。


「こちらも休憩じゃ」

「だぁああああ~っ!! しんどっ!」

「うぅ……かすり傷一つ付けられなかった……」


 キッカは草原に突っ伏し、アリスは四つん這いになって己を嘆いている。

 相手が相手だ、仕方ないとも言える。

 彼等はランクAになったばかり。しかし、相手のオベイルとグラムスは、ランクSとなってから日も深い。

 そういえばミックが言っていたな。オベイルの依頼消化も早い事から、そう遠くない日にSSS(トリプル)に上がるのではないか、と。

 無論、SS(ダブル)の冒険者が魔皇(まこう)ヒルダのみとなってしまい、冒険者ギルドの戦力バランスが保てなくなる可能性もある事から、ランクSの実力者の中からSS(ダブル)になる者もいるだろうとも言っていた。

 ならば、近いうちにSS(ダブル)に上がるのは、魔帝グラムス、剣聖レミリア、勇者エメリー……あたりだろうか。

 勇者エメリーはランクSになってから依頼の消化をほぼしていない。だが、冒険者ギルドとしては長い目で見る事は難しいのではないのだろうか。

 魔王の復活……か、余り考えたくないものだ。

 いや、まずは闇ギルドよりテルースとその子供を救い出す事が先決か。

 彼女がいれば、雷龍シュガリオンがまたやってきた時に戦力となってくれるはずだ。その時までにはきっと、私の力も……!


「ふむ、相変わらず良い身体をしておる」


 と、私をジロジロと見ながら言ったのは魔帝グラムスだった。


「うわっ!? いつの間に!?」


 と、驚いたのは接近に気付けなかったナタリーだった。


「何でこんなところにいるんだ?」


 疑問に首を傾げるオベイル。


「こっちにもぉ!?」

「これだけ近づいて気取らせないなんて、無理があるだろうが」

「あ、あははは。こんにちは」

「ま、そこのリィたんは全然気取らせなかったけどな」


 オベイルめ、持ち上げるではないか。


「うむ、嬢ちゃんに気付いたから近付いてみればリィたんもいた。それだけの事じゃ」

「ん~、もうちょっと体術も磨かなくちゃ」

「んや、その年を考えりゃ十分だろ」

「本当ですか、オベイルさん!」

「おう、十分天才だ。ははははは」


 快活に笑うオベイルを、グラムスがじとりと見る。


「うちのパーシバルは神童と呼ばれていたぞ」

「いつまで経っても子供だからそれでいいんじゃねぇか?」

「ふん、煽りよる」

「それで、今日は何の用だ?」


 オベイルに悪気はなかったのだろう。何故なら彼はいつも通りだから。


「あぁ、噂の聖女を見に来た。今後世界の重責を担う者だ。早目に顔を知っておいて損はあるまい?」

「そういう事か。どうだ? ちょっくら(ひと)勝負していくか?」

「それは後日するという約束だ。今戦えば、少なからず近郊に被害が出る」

「まぁ確かにな」


 オベイルが納得すると、


「勝敗は火を見るより明らかじゃがの」


 グラムスが先の仕返しとばかりにオベイルを煽った。


「んな事ぁわかってんだよ。ただ俺は知りたいだけさ。俺と、リィたん、ジェイル、そしてミックとの距離をな」

「ミナジリ共和国の三強って言われてるんでしょう? ミックも出世したね、あははは」


 ナタリーがニコリと笑う。


「ありゃ規格外もいいところだぜ。不気味さで言ったらリィたんを超えてる」

「気づかぬ内にまた実力を上げたじゃろ」


 今日会って私も気付いた。既にミックの実力はあの戦争の時を上回り始めている。確か、闇人(やみうど)相手に吸血を繰り返していると言っていたな。

 高ランクに近い人間が集った組織だ、必然的に力も魔力も増大する……か。

 あの戦争でさえミックは全力を出さなかった。まるで、これから起こる全てを見越すかのように静かに魔力を研ぎ澄ましているかのようだ。

 狙いは当然……雷龍シュガリオンなのだろう。

 私も負けてはいられないな。

次回:「その376 午後の予定4」

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