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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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375/917

その374 午後の予定2

 ◇◆◇ クレアの場合 ◆◇◆


 午前の疲れを癒そうと、町中の甘味処に入った時の事だった。


「け、結婚ですかっ?」


 それは、余りにも突然なご申告だった。


「そうです。私もそろそろ結婚を考える時期だと思いました」


 シェルフの姫であり、ミナジリ共和国のシェルフ大使であるメアリィ様の、強い意思表示。


「メ、メアリィ様にはまだ早いのかと……」

「あらどうして? お母様は十三の時、既にお父様との婚約をしていたと聞きました。私もナタリーと同じ十二。可能性はゼロではないでしょう?」


 こういった色恋沙汰や政治の話になると、普段のあどけなさが消えるところがメアリィ様の怖いところだ。

 確かにディーン様とアイリス様は、お若い頃から相思相愛だった。


「けれどメアリィ様。メアリィ様には意中の方はいらっしゃるので? 長らく側仕えを務めておりますが、そういった印象はあまりないような」

「問題なのはそれなんです」


 ぷくりと膨れるメアリィ様は何と可愛らしい。

 やはり、まだそういう事には早いのでしょう。


「私、シェルフの族長継がなくちゃ駄目かな?」

「っ!? い、いきなり何を仰るのですか!? コホッコホッ!」


 思わず焼き菓子を噴き出すところだった。

 一体全体何故そんな話になったのか。これは問いたださなければならない。

 これはそう、シェルフの命運がかかっていると言っても過言ではないのだから。


「……一体何をお考えで?」

「ミナジリ共和国の(きさき)なんてどうかな?」


 予想を遥かに上回るとんでもない発言だった。


「ミケラルド様は魔族ですよっ」


 それは既に各国の周知の事実ではあるけれど、声を落としてしまった。

 仕方がありません。これはそれだけ重大な問題なのだから。


「それって障害?」


 何故ここだけはあどけなさ全開で来るのだろう。


「とてつもなく」

「でも、ミケラルドさん以外に誰かいますか?」

「シェルフは小さな国といえど多くの民がおります。その中からゆっくりと探すのも一つの手ではないでしょうか……」


 というか、それが最善手であり、唯一の道とも言える。


「シェルフでは今、ミケラルドさんが何と呼ばれているか知っていますか?」

「救世主……ですね」


 シェルフの存亡のかかったダークマーダラー討伐をし、龍の血を使いアイリス様のご病気を治し、果ては各国にミナジリ共和国の戦争を見せた。

 最早(もはや)ミケラルド様は赤子でさえも知っている程、有名な御方。


「そもそも、何故ミケラルド様なのですか?」

「ん~、最初は素敵な人って印象だったんですけど、ミナジリ共和国の大使をやってから、それ以上の事がわかりました」

「それ以上?」

「あの人程、皆の気持ちをワクワクドキドキさせてくれる方はいません」


 一国の元首なのに冒険者をやりつつ、やり手の商人。

 既に数えきれない程の功績。ヒップウォッシュを売り出したのが遠い昔のよう。

 それなのに、ミナジリ共和国には多くの娯楽が生まれた。

 温泉、賭場、冷菓、カード、ボードゲーム。エルフの中には既にミナジリ共和国の永住を宣言する者もいる。

 ダドリーもローディ族長の護衛がなければこちらに来たいと言ってるくらいだ。確かに、ミケラルド様は皆の心を掻き立てる。


「ね?」


 何が「ね?」なのかわかりません。

 感性は独特ですが、メアリィ様はメアリィ様でシェルフの事を考えている。

 族長を継ぐにしても、相手が国家の元首ともなれば結婚する事は難しい。

 けれど、エルフの中にはメアリィ様のお眼鏡にかなう者はいない。

 なるほど、だからこその「私、シェルフの族長継がなくちゃ駄目かな?」なのか。


「妙案が浮かびました!」


 バッと立ち上がるメアリィ様。

 とても良い笑顔でいらっしゃる。えぇ、嫌な予感しかしないけれど。


「ミナジリ共和国に戻ったらシェルフに連絡をとります」

「して、それはどのようなご連絡を?」

「お父様とお母様にお願いをするのです!」

「どのようなお願いを?」

「弟か妹を強請(ねだ)るのです!」


 嫌な予感、大当たりです。

 確かに、もう一人お世継ぎが生まれれば、メアリィ様も族長の継承権を放棄する事も可能……なんでしょうか?

 ですが、不可能という訳でもないかもしれません。

 けれど解せない点があります。こうして色々な算段を企てていらっしゃるメアリィ様に、ミケラルド様への好意は存在するのだろうか。


「こうしてはいられません! 早速、今日の夕食からアプローチです!」


 いえ、もし新たな世継ぎが生まれたとしたら、別に早急に結婚相手を決める必要もないのでは?


「ライバルは多そうですからね! 善は急げとも言います。早目早目がいいでしょうね!」


 なるほど。そういう事でしたか。

 問題だったのは理由探し。他国の元首との結婚(ソレ)を肯定出来るだけの材料探しだったという訳ですね。

 私とした事が、本質を見失ってしまうところでした。

 メアリィ様はまだ十二。順序が逆になろうと、そこに好意は確かに存在していたのです。

 まったく、困った方です。


「クレア! 早速おめかしの準備です! 付き合ってください!」

「かしこまりました、メアリィ様」


 付き合いましょう、どこまでも。

次回:「その375 午後の予定3」

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