その366 ご報告
午後受け持ったパーティはランクAだった。
そもそもランクSのパーティがそんなにゴロゴロしていたら問題なのだが、彼らは剣弓斧魔とは縁遠いレベルと言えた。
第一階層のダブルヘッドセンチピードを二、三匹倒したところで全てを使い切ってしまったのだ。ランク内格差があるのは勿論なのだが、このクラスまで俺が見る事になると、体力的にかなり堪える。
まぁ、それ込みの報酬を期待するしかないか。
「本日の報告です」
「聞こう」
一日の業務報告をしにギルド本部へやって来た俺は、アーダインの前に立っていた。
「まず、ランクSパーティの青雷。結果を見れば五階層レベル。しかし、それ以上も狙えたと思います。更に、青雷に途中参加した光魔法使いのタヒム。闇人の可能性が非常に高いと思われます」
ピクリと反応するアーダイン。
「タヒムか……」
「ところで、聖騎士学校への入学審査って私も口を出してもいいので?」
「……何が言いたい?」
「少々思うところがありまして」
「ふむ、聞こう」
「ランクSの青雷ですが、実力、パーティワーク共に申し分ないと思います。がしかし、向上心が低いと感じざるを得ませんでした。まるでこれ以上を望むつもりはないような」
「具体的には?」
「五階層時点で、彼らに目立った傷はありませんでした。しかし、彼らはそれ以上を望まなかった。聖騎士学校入学が掛かっているのにも拘わらず、です」
すると、アーダインが手元の資料に目を通した。
おそらくそれは青雷に関する資料なのだろう。
「……確かに、これまで青雷がランクSダンジョンに潜り、六階層まで達したのは二回。いずれも早期撤退を選んでいる。以降は全て五階層で引き返しているな」
「戦略的撤退と言えば聞こえはいいですが、六階層へ進むか聞いた時、悩みすらしなかったのが気になりました」
「つまりミックはこう言いたいのか? 『冒険者ではない』と」
「正確には『冒険者ではなくなった』といったところでしょうか」
「ふむ、守りに入った冒険者は往々にして成長が止まる……か」
「因みに、私の進言なくこのまま時が進めば、彼らは?」
「タヒム以外、問題なく入学が決まるだろうな」
つまり、貴重な聖騎士学校の入学枠が四枠埋まる訳だ。
冒険者ギルドや法王クルスがいくら間口を広げようとも、どうしても制限がある。
だからこそ俺は【緋焔】含むオリハルコンズを応援しているのだ。
「ミックはどう思う?」
「言ってもよろしいので?」
「そのための査定官だ」
「…………枠に入れればそれでいいといった判断は、余り好きではありませんね。勿論、平和ならばそれでいいのです。しかし、栄誉ばかりを求めても、それが戦場で発揮出来るかは別です。闇ギルドや魔族と戦う際、役に立つのはソレよりもそれまでの向上心と努力ですから」
「なるほどな。わかった、一考の余地ありだな」
アーダインと法王クルスがどういう判断を下すのかはわからないが、言いたい事は言えたしそれで選考に残るのであれば仕方ないだろう。事実青雷の実力は他と比べ飛び抜けている。
「午後に引き受けたランクAパーティ【ラディアント・ヒーローズ】ですが――」
その後、俺はもう一つのパーティの報告を済ませた。
と言っても、早々にリタイアしたので報告する事はあまりなかった。
「他には何かあるか?」
まぁ、これも報告しない訳にもいかないよな。
「これからタヒムさんとお食事なんですよ」
「っ! ……おい、ミック」
「事を荒立てるような事をするつもりはありませんが、つまりはそういう事です」
「闇ギルドに近づくというのか?」
「地龍さんがね、ウチの守護神と友達なんですよ。助けてあげたいじゃないですか?」
「Z区分を取り戻そうとして本当に荒立たないのか?」
ニヤリと笑うアーダイン。
「少なくとも、今回の選考に響くような真似はしませんよ」
「ならいいが、一つだけ言っておく」
「わかってますよ、潜入する時は報告します」
「……一つも言えなくなったな」
目を丸くしたアーダインはすんと鼻息を吐いてから苦笑したのであった。
◇◆◇ ◆◇◆
夜、冒険者ギルドでは俺の噂で持ち切りだった。
俺とは【デューク・スイカ・ウォーカー】の事だ。
これはおそらく剣弓斧魔や青雷、更にはラディアント・ヒーローズが俺の噂を広めたのだろう。
選考三日目を前にしてこれだけ広まってくれれば、明日以降の選考も非常にやりやすくなるだろう。
だが、俺の実力が広まったとて人となりが広まる訳ではない。
カウンターに座り、デュークなる男の創作武勇伝に聞き耳を立てていると、隣に座る男が一人。
青雷のパーティメンバーの【タヒム】だった。
「後ろから聞こえる天を割ったという話は事実ですかな?」
初手は俺への懐柔からか、タヒムは冗談交じりに聞いてきた。
「大地だったらあるんですけどね」
「ふふふふ、それは素晴らしい」
視界に見えるのは、かつて俺が血を吸った闇人たち。
そう、アリスを狙っていた者たちだ。
男が四人、そしてカウンター越しに仕事をする女が一人。
左右、後ろに二人ずつ。そして前か。
なるほど、他の人間たちに会話が届かないような良い配置である。
さて、タヒムはどんな話をしてくるのか。
次回:「その367 勧誘」




