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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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365/917

その364 青雷

「初めまして、リーダーのエイジスです」


 爽やかイケメンは滅べばいいのだ。

 まぁ、相手が礼儀正しいのだ。こちらからあえて何かをする必要もないけどな。

 エイジスの手を取り握手を交わす。


「デューク・スイカ・ウォーカーです」

「ウルトだ」


 ウルトは強めに握ってきた。

 こちらの力を試そうとしているが、その誘いに乗る訳にはいかない。

 俺が優しく握り返すと、ウルトの目が丸くなる。


「ちっ」

「今の舌打ちは聞こえなかった事にします」


 ダンジョン内でやられたら査定に響かせるけどな。


「くそ……」

「今の悪態も聞こえなかった事にします」


 俺が続けざまにそう言うと、エイジスがウルトを睨む。


「ウルト! やめないか!」

「わ、わかったよ……」

「デューク殿、仲間が申し訳ない事をした」


 と言いつつも、エイジス君の目は謝っていない。

 本当に査定を受ける気あるのか、こいつら?


「失礼、アッシュだ」

「初めまして」


 細剣使いのアッシュか。世渡りは上手そうだな。


「タヒムです。宜しくお願い致します」

「これはこれはご丁寧に」


 十年間ランクAを続けランクSに上がった光魔法使いタヒム。

 物凄く好感触ではあるが、いかんせんコイツ……闇人(やみうど)である。

 最初見た時は「おや?」と思ったのだが、正面から【看破】で見れば納得の悪意。

 そうか、青雷は元々四人パーティ。それにアリスが入る事によって五人パーティになるはずだった。しかし、そこに横入りしたのがこのタヒムという訳だ。

 なるほど、聖女の成長すら拒んでいる闇ギルドのやりそうな事である。

 他に【看破】で悪意を感じ取れないところを見るに、青雷は基準を満たしていると言えよう。勿論、タヒム以外な。

 最後に細く綺麗な手が俺の前に出される。


「ホルンです」

「あ、ども」


 二回目の挨拶は不意打ちなのでは?

 まぁ、彼女も打算があってやってる訳だ、悪い判断ではないだろう。

 色を使って査定官を落とす。やれるものならやってみろという感じだ。いや、(むし)ろ是非やって欲しいものだが、この世界の年齢制限(レイティング)が俺に合わせてくれない。

 コロっと落ちるんだけどな、ホント。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「はい、ダブルヘッドセンチピードはこうですねー」


 俺がキュッとダブルヘッドセンチピードを倒すと、エイジスが興奮しながら前に出た。


「素晴らしい! 流石は査定官を任されるだけはありますね! これは負けてられません!」


 気合いの入ったであろう青雷のリーダーが次の気配に気づくと、一瞬のアイコンタクトの後、壁役(タンク)のウルトが巨大な盾を前に構えソレを待った。

 やがて現れるダブルヘッドセンチピード。

 ここで魔法使いのホルンとタヒムは腰を落とすのみだった。

 ウルトがダブルヘッドセンチピードの突進を盾で受け止め、衝撃とほぼ同じタイミングで盾を斜めに構えた。

 なるほど、衝撃を上手く流してダブルヘッドセンチピードの進む方向を制限したのか。盾の下に潜り込んだウルトと、盾の坂を上るダブルヘッドセンチピード。

 盾が射出台のような働きをし、その後ろで構えていたエイジスが無数の突きを放つ。不規則に見える突きだが、その実、狙いはダブルヘッドセンチピードの頭部。まるでミシン目を入れるように放たれた突きは、一瞬でダブルヘッドセンチピードの動きを殺す。

 エイジスの突きが止んだ時、その槍を踏み台にし、細剣使いのアッシュが、そのミシン目を細剣でなぞれば……、


「とてもいい連携ですね」


 たった三人でダブルヘッドセンチピードを倒してしまった。

 ホルンとタヒムは完全に仕留めそこなった際の援護要員。だが、それもこの洗練された動きの前には不必要である。

 ダブルヘッドセンチピードを前衛だけで対処出来るという事は、それだけ後衛の二人が魔力を温存出来るという事。

 総じて素晴らしいの一言だ。ランクSパーティと言うだけはある。


「気は抜けないですね。冷静に行きましょう」

「因みに最終到達階層は?」

「いつも五階層で引き上げるようにしています。六階層は難度が高く、大きなリスクがありますから」

「へぇ、それは素晴らしい」


 ◇◆◇ ◆◇◆


 三階層。


「ホルン、後方に【フレイムピラー】!」

「任せて!」

「タヒム、ウルトに【プロテクション】だ!」

「【プロテクション!】」

「ウルト! 今だ!」

「おうらぁ!」


 マスターゴブリンの群れを前に、的確に対処を続ける青雷。

 ホルンが後方に【フレイムピラー】を置く事で、通路後方からのマスターゴブリンの侵入を防ぐ。

 タヒムの魔法によって防御能力を向上させたウルトが、敵の注目を集めマスターゴブリンを抱える。そこからあぶれたマスターゴブリンを、エイジスとアッシュが捌き、


「「【ライトシュート】!」」


 ウルトに群がっていたマスターゴブリンを、ホルン、タヒム二人の魔法使いが間引き、


「うらぁ!」


 盾を強引に壁に押し込み、間にいたマスターゴブリンを圧死に追い込む。

 パーティプレイの教科書とも言える第三階層の対処は、俺も見習うべき点があるのだろう。

 ウルトのドヤ顔は、おそらく先程の仕返しなのだろうが、俺にとってはどうでもいい事である。

 死を回避し、着実で堅実な冒険。ここまで成長し、生き抜いただけはある。

 なるほど、確かにこのパーティならば五階層まで行けるな。

 さて、次は四階層だな。

次回:「その365 四階層」

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