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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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364/917

その363 二つ名

 その後、【剣弓斧魔(けんきゅうふま)】のメンバーを安全にダンジョンの外まで送った。

 リーダーのダインは物凄く悔しがると共に、俺に感謝を述べていた。

 ランクAパーティがランクSダンジョンに挑んでいるのだ。攻略出来なくて当然ではあるが、それでもやはり悔しいという気持ちは抑えられないだろう。

 彼らは別れ際、再度俺に礼を述べ消えて行った。

 明日からは一日二パーティの査定なのだが、今日は初日という事もあり、一パーティのみの査定である。

 どこか美味い店でも探そうと町中を練り歩いていると、誰もが目を引くパーティを見つけた。


「すっげー、剣鬼だ……」

「見ろよ、魔帝がいるぞ」

「あれが聖女で、あっちの三人が緋焔か」


 大通りを歩いていたせいか、オリハルコンズを見つけてしまったのだ。

 まぁ、幸い俺は姿を変え、とある能力(、、、、、)を使って魔力も隠している。彼らに俺がミケラルドだとバレる事はないだろう。


「あの」


 そう思っていた時期が俺にもありました。

 話しかけて来たのは、剣鬼オベイルでも魔帝グラムスでもなく……聖女アリスだった。

 目を丸くした俺に近づき……というか回り込んで来た。

 聖女(アリス)が俺の顔を見て小首を傾げる。


「あれ、やっぱり違いました。おかしいですね、てっきりあの人かと……」


 俺としてはその感性がおかしいと言わざるを得ない。

 姿も変え、魔力も隠しているというのに。


「こ、これはアリス様。この私にどのようなご用でしょうか」


 当然、声すらも。


「あぁいえ、知り合いに雰囲気が似ていたもので、つい声を掛けてしまいました」


 現代日本でやったら不審者認定される行動じゃないか、ソレ。

 大丈夫、ここはソレが許される世界で、許される聖女(あいて)だ。

 一般人を装う俺に羨望の眼差しが集まっているのは、きっと最近の彼女の功績によるものだろう。


「知り合い……ですか?」

「えぇ、今では【咬王(こうおう)】なんて呼ばれてるミナジリ共和国の元首です」


 ナニソレオレシラナイ。


「咬王……ですか」

「咬みつくような目つきと吸血鬼というところを掛けたのでしょう。私としては狡王(こうおう)の方が似合うと思ったのですが」


 アリスが言わんとしている文字がわかってしまう自分が憎い。

 咬みつきよりも狡猾(こうかつ)さね。何ともアリスらしい。


「お時間をとってしまい、すみません。それでは失礼致します。貴方に神のご加護を……」


 言いながらアリスは俺に手を掲げ、くすりと笑ってからパーティへと戻って行った。

 俺はそれを微笑みながら見送り、彼らが見えなくなると共に、路地裏へと入った。


「ぐっ! し、死ぬかと思った……」


 俺は胸を押さえ、路地裏の建物――その外壁へともたれかかる。

 顔から滲み出る脂汗と、激しい動悸。何より体中を駆け巡る電流の如き痛み。

 アリスのヤツまた【聖加護】の力を上げたな。あんなのはアクションだけで、実際に力を使わなくてもいいって事を、今度教えてやろう。

 ミナジリ共和国でやられたら大惨事である。

 なるほど、緋焔を送り込んだのは間違いじゃなかったな。

 彼女は着実に成長している。世界が認める聖女へと。


「ふぅ……」


 何とか持ち直したものの、アリスのおかげで散策どころではなくなってしまった。正に興が逸れたといったところか。

 アーダインに報告だけして今日は休もう。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「ほぉ、剣弓斧魔(けんきゅうふま)が第三階層に? 悪くないじゃないか」


 アーダインは顎を揉みながら紹介したパーティを称賛した。


「対応は出来なかったので第二階層レベルかと」

「ほぉ、その表現はいいな。二階層レベル……と」


 ちゃっかりしてるよな、この爺さん。


「それで、剣弓斧魔の中に闇人(やみうど)はいたのか?」

「いえ、確認出来ませんでした」

「そうか。それでは明日からの日程だ」


 一枚の紙を手渡したアーダイン。

 それを覗き込んだ瞬間、俺の顔から幸せが逃げていった気がした。


「ハードスケジュールですねぇ……」

「報酬は期待しろ」


 ちゃんと【真・世界協定】の日程を考慮している過密さだ。

 肝心の【オリハルコンズ】は……十日後か。

 それまでに剣弓斧魔(けんきゅうふま)クラスは抜けてもらいたいものだが、オベイルたちの訓練は上手くいってるのだろうか。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「ふーん、お兄さんデキるんだ?」


 朝、待ち合わせの時間ピッタリだった。

 ランクSダンジョン前にいた俺の背後から声を掛けたのは、気の強そうなお姉さんだった。ウィザードハットを被り、赤の長髪(ロング)。涼しそうな豊かな胸元をアピールし、俺の鼻の下もロングである。


「えーっと、ホルン(、、、)さん?」

「やっぱりアナタが査定官なのね」

「初めまして、デューク・スイカ・ウォーカーです」

「あら、貴族の方?」

「頭に貧乏田舎の、が付きます」

「そう、それにしては出世ね。冒険者をやっているところを見ると数合わせの末子ってところでしょう」

「そういう事です。ところで他の皆さんは?」

「もう来るわ~」


 ホルンがウィンクしながら親指で指差すと、その奥から強い魔力を感じ取った。

 オベイル並みにデカいスキンヘッドの男はウルト。

 一回り小さいものの長身で身のこなしが軽そうな細剣使い、アッシュ。

 魔力を抑えつつもその溢れる魔力が漏れているのは、タヒムという魔法使いか。

 そして、パーティの()である青い稲妻、ランクSパーティ【青雷(せいらい)】のリーダー、エイジス。

 以前、聖女アリスと一緒にいた連中。

 まさか二日目から当たるとはな。

 まぁ、いつかはやらなくちゃいけないんだ。

 彼らの実力、しっかりと見極めさせてもらおうじゃないか。

次回:「その364 青雷」

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