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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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360/917

その359 ルナ王女

「これはこれはルナ王女、遠路はるばるようこそミナジリ共和国へ」


 茶のポニーテール。目は大きく、気品溢れる正に王女様。

 だが、王女がポニーテール? これは俺の中で違和感を覚えた。

 しかし、その疑問はルナの軽やかな下馬ですぐに解けたのだった。

 なるほど、悪くない動きをしている。身分以上にじゃじゃ馬娘の気配ビンビンである。


「ミケラルド様とお見受けする。私はルナ・フォン・リーガル。調査中の事件の事でお伺いしたい事がございます」


 言葉は丁寧だが、やや粗雑(そざつ)な言い回し。

 どうやら形式上仕方なく……というよりは俺と似て効率至上主義か。


「ミケラルド様!」


 背後から馬を駆けて来たのはギュスターブ辺境伯の息子であり子爵。そして、このミナジリ共和国のリーガル大使であるアンドリュー。


「ルナ王女!? これは一体どういう事でしょう……?」


 当然、子爵であるアンドリューはルナ王女を知っているが、


「貴方がギュスターブ卿か。大使館まで私を案内して頂きたい」


 子爵とは言ってしまえば木っ端貴族。いくら辺境伯の子といえど、王女と顔見知りのはずがないのだ。歳の頃合いは十三、四。ナタリーとエメリーの間くらいだろうか。お供の兵の苦労が(うかが)える。

 とは言え、今回の目的は盗賊調査。はたして彼女がどうしてこの国に行き着いたか、確かにそれは知りたいところである。

 大使館に向かう道中、前を歩くアンドリューが小声で俺に話しかけて来た。


「一体どういったご用なんでしょう。こちらの【テレフォン】には何の連絡もありませんでした」

「ナタリーが言うには、格安になったギルド通信を早速使っての連絡だという事です。もしかして【テレフォン】の存在を知らなかったのでは?」

「確かに、リーガル国の宝とは言え、ミナジリ共和国から提供されたもの。たとえ娘と言えど、陛下も開示しなかったのかもしれません。それにしても一体何の用で」

「彼女、調査団のリーダーらしいですよ」

「調査団?」

「この前、ドマーク商会の輸送隊が襲われたでしょう。アレですよアレ」

「確かに報告を受けていますが何故ミナジリ共和国へ?」

「ブライアン殿の協力により、私が頂戴したからですよ」


 直後、アンドリューがピシリと凍り付いたように止まった。


「どうした、アンドリュー殿?」


 ルナ王女が固まったアンドリューを気に掛けるも、彼が動く事はなかった。

 まぁ、既に大使館の敷地内。彼が動かなくても彼の配下がルナ王女をもてなすだろう。

 アンドリューの執事により貴賓室へ連れられた俺とルナ王女。

 互いに腰かけるなり、ルナ王女は俺に言った。


「ミケラルド様、単刀直入にお伺いしたい。ドマークおじさんの輸送隊を襲ったのは、ミケラルド様でしょうか?」


 この清々しさは尊敬に値するが、一国の元首に対してこういった言葉を使うのは危ういな。


違います(、、、、)


 この返答にムッとした表情をするルナ王女。


「それは、ミナジリ共和国の総意ととってもよろしいでしょうか?」

「結構です」


 さて、時間を掛けて調査をし、行き着いたミナジリ共和国で収穫がない場合、彼女は一体どんな反応を示すのか。


「こちらに証拠がある、と言えばどうでしょう?」


 おぉ、それは凄いな。


「参考までに、その証拠とやらは何でしょう?」

「ドマーク商会の積荷と馬車の(わだち)です。シェンドにいたリプトゥア軍への大規模輸送。積荷の中身には彼らを助ける物資や食料です。これが綺麗に盗みとられていた。争った形跡もなく(、、、、、、、、)

(わだち)というのは?」

「それだけの積荷を盗むのに、盗難の現場にはドマーク商会の馬車の車輪痕しか見つかりませんでした。これには理由があります」

「どのような?」

「闇魔法【闇空間】」


 おぉ、凄いな。そこまで行き着いていたか。


「【闇空間】は特殊な魔法です。特殊故に希少。だからこそ、ミケラルド様が第一容疑者として浮上しました。よもや【闇空間】が使えないとは申されますまい?」

「確かに、私は【闇空間】を使えますね」


 ニヤリと笑ったルナ王女のドヤ顔。きっと俺を追い込んでいるつもりなのだろう。だが、そうは問屋が卸さないのだ。


「それで、証拠というのは?」

「は?」

「いえ、ですから私が犯人だという証拠は?」

「たった今、【闇空間】を使えると自白なさったではありませんかっ?」

「【闇空間】を使える、だけでは証拠にはなりません」

「ですが貴方には動機があります!」

「ありますね。何といっても敵国への支援物資ですから」

「なら――」

「――ですから証拠を」

「苦し紛れの言い逃れにしか聞こえません!」

「……ふむ、では少し歩きましょうか」

「……はい?」


 大使館に来て早々だったが、俺たちはミナジリ領を歩いて回る事になった。

 ムスっとするルナ王女が何とも可愛らしい。でも、きっとアレを見たらその顔も歪んでしまうのだろうな。


「あらミケラルドさん、そちらの方は?」

「リーガル国の姫君、ルナ王女です。ルナ王女、こちらミケラルド商店の代理店長の一人、エメラさんです」


 やって来たのはミケラルド商店。


「ルナ王女殿下、遠路はるばるようこそおいでくださいました」


 エメラの丁寧な対応も、


「ふんっ」


 今のルナ王女には何も響かない。


「エメラさん、彼女に裏倉庫チェックを見せてあげたいのですが、皆さんお手すきで?」

「かしこまりました。すぐに皆さんをお呼びします」


 エメラが連れて来たのは、ミケラルド商店の従業員。

 本店だけに務めている人数も多く、この時間帯は十五人の従業員が集まった。


「これは一体?」


 ルナ王女の疑問も次の瞬間には消えていた。


「裏倉庫チェック開始!」


 エメラの号令により、皆が発動するのは――【闇空間】。


「なっ!?」

「聖薬草、在庫良しです!」

「聖水、在庫良しです!」

「木材、発注お願いします!」

「吸魔のダガー、在庫切れですが発注済みです」


 などなど、従業員全てが闇空間を使える状況を見せられては、ルナ王女も黙るしかない。


「あ、(ちな)みに、闇空間の魔法所持者はミナジリ共和国だけで三百はいます。申し訳ありません、当国においては、そこまで希少という訳でもないんですよ」

「う、嘘ぉお~っ!?」


 ようやくルナ王女から年相応の少女らしい声が聞こえたな。

 嘆きの声だけどな。

次回:「その360 ご帰宅」

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― 新着の感想 ―
[一言] なんだこの中身のないやりとり 闇空間で出来るとしてもそれが使われたなんて立証されてねえし、闇空間だという話だとしてこの国で使える奴が多いなんて、この国がやったという主張にしかならんし何が言い…
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