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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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357/930

その356 繋ぎ

「聖女の面倒を見ろだぁ?」


 ギルドの応接室で対面に座るオベイルが顔を(しか)める。

 リプトゥア国との戦争のため、リーガル国軍に同行していた剣鬼オベイルがミナジリ共和国に戻ってきた。

 俺は冒険者ギルドを介し、オベイルに依頼を出しのだ。


「指導ですよ、オベイルさん」

「そこのつるつる爺と一緒にか?」


 脇に控えたニコルにだらしない顔を向けているのは魔帝グラムス。


「近接戦闘技術と魔法戦闘技術に長けたお二人なら適役かと」

「俺に何の得がある?」

「向こう五十年、オベイルさんの生存確率が上がります」

「……お前が言うと否定出来ないのが、お前のムカつくところだ」

「当然、別途報酬は出しますよ。私が法王国に行き、本格的に活動するまでの繋ぎです」

「期間は?」

「聖騎士学校への冒険者招致が大々的に告知されるまでの間です」

「一ヶ月はねぇだろ」

「えぇ、なので繋ぎです」

「繋ぎ……ね。聖女の実力向上はまぁわかる。だが、今オリハルコンズには緋焔も加入してるんだろ? 何故やつらを使った?」

「実績と実力向上のためです」

「答えになってねぇな」


 オベイルがソファに寄りかかりこちらを睨む。


「出来れば彼らをね、聖騎士学校に入れてあげたいんですよ」

「つまり、今のままじゃ落ちるって事だな?」

「聖女アリスはコネクションでどうとでもなるかもしれませんが、あの三人は別です。名実共に揃ってはいる。しかしまだ弱いんです」

「何故そこまで緋焔を気にかける?」


 オベイルが(いぶかし)しむのもわかる。

 緋焔は新進気鋭のパーティだが、言ってしまえばそれだけだ。


「……勇者エメリーをよく知り、共に研鑽した仲。バランスがよく、正義感もあり闇ギルドに加入する可能性も低い。エメリー、アリス、ラッツ、キッカ、ハン。この五人がパーティを組めば、高みへ行けると思いまして」

「ミック、お前、一緒に魔王討伐するって聖女に言ったんだろ?」

「勿論。ただ、今この段階で私とアリスさんがパーティを組んでも、アリスさんにメリットがありません」

「よく言うぜ」

「勿論、アリスさんの気持ちを考慮せずに言ってる自覚はありますよ」

「尚の事、たちが悪いな」


 渋面(しぶづら)を見せるオベイルが、小さく息を漏らす


「お願い出来ませんかね?」

「報酬次第だ」

「金払いはいい方ですよ?」

「そうじゃねぇ。報酬は別のものをもらう」

「……聞きましょう」

「ジェイル、リィたん、ミケラルド。ミナジリ共和国最強のこの三人と全力で戦う許可をもらいたい」


 なるほど、オベイルクラスになると、余生を生きるだけの金銭はもう持っている。ならば金で買えない経験を選ぶのもわかる……か。


「いいでしょう。ニコルさん、今の条件で依頼作成をお願いします。ギルドへの依頼料はSS(ダブル)の規定金額で問題ありません」

「かしこまりました」


 ニコルが頭を下げると、オベイルがジトりとこちらを見る。


「またその目だ」

「はて?」

「お前……俺がこの条件を出すってわかってたな?」

「はて?」

「けっ、一生とぼけてろ」


 オベイルが俺への追求を諦めると、部屋からニコルの背中というか尻を見送ったグラムスが、気持ち悪い笑みをしながらこちらに振り返った。


「坊主、【緋焔】の女子(おなご)はどうなんじゃ?」

「……どうとは?」

「美人かと聞いている」

「まだ若いですが将来有望かと」

「ふむ、聖女は前に見たが、緋焔のキッカか……楽しみじゃの」


 あそこまでオープンだと呆れる気にもならないな。

 まぁ、俺じゃなくてもオベイルが呆れるけどな。


「本当にこのつるつる爺で大丈夫かよ?」

「ふん、こちらとしては剣鬼がオリハルコンズの娘を殺さぬか不安じゃな」

「あ?」


 おぉ、強者同士の睨み合い。正に一触即発って感じだな。


「「…………」」


 この二人は、睨み合いで一体どんなやり取りをしているのだろう。


「……いや、止めろよミック」

「タイミングを見失うな、坊主」


 台無しだよ。

 ならばこちらがキッカケになればいいだけ。


戦闘開始(ファイッ)!」

「何でそうなるんじゃ!?」

「ギルドがぶっ壊れちまうじゃねぇか!」


 こういう風に良識がある強者、おじさん大好きです。


 ◇◆◇ ◆◇◆


 その後、俺は法王国に転移して行った二人を見送り、ミケラルド商店の一号(ミナジリ)店へやって来た。

 地下に降りると、そこには多くの顔見知りが待っていた。


「「久しぶりにございます、ミケラルド様」」


 最初に俺を出迎え頭を下げたのは二人の豪商。

 ドマーク商会のドマークと、バルト商会のバルトだった。

 そして、奥に見える定位置に座る三人は、この世界で初めての俺の仲間たち。

 ナタリー、ジェイル、リィたん。

 会議室の議長席に座った俺は、彼の到着を待った。

 しんと静まる中、扉がギイと開く。

 先のオベイル同様、リプトゥア国への侵攻に参加した冒険者。ブライアン王の話では、我先にと無数の敵を倒したそうだ。

 それもそのはずで、彼はいち早くこのミナジリ共和国に戻って来たかったのだから。


「ボン、待たせたか」


 現れたのは、冒険者ギルドの(いただき)


「いえ、どうぞおかけください」


 SSS(トリプル)の称号を有し、勇者パーティ【聖なる翼】の(かなめ)だった大人物――剣神イヅナ。

 椅子に腰を下ろしたイヅナが見据える先は、ミナジリ共和国最強の剣士――リザードマンのジェイル。


「さぁ、聞こうではないか……真実を」

以上、運転免許センター講習待ちの壱弐参でした。


次回:「その357 真実」

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