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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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356/917

その355 白き魔女

 ◇◆◇ アリスの場合 ◆◇◆


 少々驚いたラッツさんでしたが、相手は商人ギルドの長。こと情報収集能力に関して、彼女の右に出る者は……多分あの人しかいない。


「今の話を聞くに、既に闇の襲来を予期されているとの事。我らで何か役に立てる事があればと」

「ふむ……確かに何の情報もなくここまでやって来たと考えれば君たちが優秀だという事はわかる。流石は緋焔。いや、今はオリハルコンズか」


 言いながらリルハさんはちらりと私を見た。

 彼女の考えはよくわからないけれど、これだけはわかる。リルハさんの私を見る目は、他の冒険者や商人とは違う。羨む訳でも、見下す訳でもない。この色は一体? ……警戒?


「……しかし、残念ながら君たちを雇うつもりはない。君たちは我々の管理する金庫を任せられるレベルにいない」


 その言葉に刺激されたのはキッカさんだった。

 ムッとした様子のキッカさんが一歩前に出るも、その肩を掴んで止めたのはハンさんでした。

 彼の目も強く鋭い。けれど、自制するしかない。

 何故ならリルハさんが言っている事は事実だからだ。

 ここにいる五つの魔力は確かに私たち以上。

 冒険者としての格が一つ違う。ならば、リルハさんの言葉は正しいのだろう。

 けれど、それを受け入れられるかは別なのです。


「……わかりました。ではご武運を」


 ラッツさんも少しだけ歯痒そうだった。

 短い、本当に短い商人ギルドのギルドマスターとの面会が終わった。ペインさんに見送られ、応接室を出た時、キッカさんが限界を迎えた。


「何よあの態度! もう少しこっちを尊重してくれてもいいんじゃない!? ハン、飲むわよ!」

「おうよ!!」


 奇声を上げたキッカさんに付き従うハンさん。

 また冒険者ギルドに向かうのだろう。見合う私とラッツさんが苦笑する。まだギルド内だというのに、キッカさんは全開だった。

 すると、キッカさんとハンさんの前に五人の冒険者が現れたのだ。


「……あれは!」


 私が彼らに気付いた時、既にキッカさんとハンさんは彼らに話しかけていた。


「何よあなたたち?」

「あんまり睨むんじゃねぇよ。ウチのキッカは今ご機嫌ななめだ」


 二人の前にいた集団はあの時、あの場で私を切った存在(、、、、、)


「すまない、騒ぎが聞こえたものでね。駆けつけたに過ぎない」


 青い髪に端正かつすました顔。レミリアが剣聖と呼ばれる前、青い雷と称された槍の達人――法王国でも指折りの冒険者パーティ【青雷】を率いるリーダー【エイジス】。三年前の武闘大会覇者だ。

 ラッツさんが前に出ると、エイジスさんはすっと右手を差し出した。


「リプトゥアで名高き緋焔のリーダーに会えるとは光栄だ」

「なるほど、青雷がこちらの警護に当たっていたか。リルハ殿の言葉にも得心がいった。騒ぎについては謝罪する」


 両者共に握手を交わすものの、ラッツさんはともかくエイジスさんは完全に私たちを威嚇している。

 言葉上ではラッツさんたちを持ち上げているけど、内心は完全に見下している。事実、格下である事は否めない。

 だから三人とも何も言えないのだ。

 巨大な壁役(タンク)の男、ウルト。

 ウィザードハットを被った赤髪の美女、ホルン。

 長身細身の細剣使い、アッシュ。

 そしてエイジスは、三年前の武闘大会優秀成績者。

 その後意気投合してパーティを組み、瞬く間に有名になったランクSのパーティ【青雷】。

 五人目の男は、ランクAになり、堅実に時を重ね、十年の(のち)ランクSとなった光魔法使いタヒム。中年ながらも、身に纏う魔力は非常に強力。

 最近の噂で聞いた事がある。

 青雷ならば総合力で剣鬼を上回ると。

 だからこそ、彼らはランクSダンジョンに潜れるのだ。

 キッカさんとハンさんは、終始青雷を強い視線で見ていた。けれどそれは仕方ない。彼らの視線がそうさせていたのだから。

 ラッツさんが「失礼する」と述べた後、私たちは商人ギルド本部を出た。

 直後、キッカさんが爆発した。


「むっかぁああああああ! 何よアレ! 完全に私たちを見下して! あのお呼びじゃないんだよ的な(くさ)(まなこ)!」


 正直、その表現はどうかと思うけど、青雷はそれだけの事をしたのだ。


「そりゃお呼びじゃないし?! 私たちのが格下よ!? わかってるのよそんな事! でもね! 最低限の礼儀ってもんがあるでしょう!」

「わかるぜキッカ!」


 二人とも悔しいのだ。

 勿論、私も悔しい。だけど、それが世界の評価。

 それがもどかしいからこそ、ラッツさんも押し黙っているのだ。

 簡単な話だ。強くなればいい。

 けれど、それを簡単に口に出せない事実がもどかしい。誰か私たちを導いてくれるような、ミケラルドさんのような存在が欲しい。でも、それもわがままだってわかっている。

 俯く私は、皆の憤りを肌に感じながら杖を強く握った。


「なるほどのう。確かに逸材揃いじゃ」

「へ?」


 背後から聞こえた声に振り返る私。


「つるつる爺、目つきがいやらしいんだよ」


 もう一人の声に皆が振り返る。

 豊かな白鬚(しらひげ)、皺の多い顔と鋭く……ないいやらしい目つき。


「ま、魔帝(まてい)グラムス……!?」


 ハンさんの言葉により気付く。彼がこの場にいる異常を。

 そしてもう一人、ラッツさんですら見上げる巨躯。不敵な顔をし、その背には身の丈程の大剣(バスタードソード)


「剣鬼オベイル!? 何でこの人がここにいるのよ!?」


 正に百戦錬磨。そんな風貌をした二人が、私たちオリハルコンズの前にいる異常。私たちの時は完全に止まっていた。

 だからこそ、それを打ち砕いたのは彼らだった。


坊主(、、)からの依頼でな」

「んま、助っ人ってやつだな」


 ニヤリと笑った魔帝と、ニカリと笑った剣鬼。

 二人の言葉はすぐに理解出来なかった。

 けど、グラムスさんの言う「坊主」が誰なのかは、不思議と理解が出来た。

 ……ミケラルドさんは一体、私たちに何をさせようっていうの?

次回:「その356 繋ぎ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 力不足です→じゃあ助っ人ブーストしますね [気になる点] 資金源潰し、アジト潰し、人質の情報収集とやることがまだまだ多いですね
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