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半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第一部

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344/917

◆その343 勝利

 ミケラルドが地上に降り立ち、リィたんの場所へ戻ると、そこにはオベイルとイヅナもやって来ていた。


「皆さん、ジェイルさんの援護をお願いします!」


 すると、リィたんが先に行動を起こす。リィたんが消えると同時にミケラルドが零すように「十ポイント」と言って口を尖らせる。


「おう! ミックの言った通りだったな!」


 オベイルがニカリと笑い大剣(バスタードソード)を担ぎながら騎士団の中に飛び込んで行く。


「見事と言う他ないな、ボン」

「ありがとうございまーす」


 ミケラルドが二人に礼を述べると、ミケラルドが行動を起こす。


「……さて」


 ミケラルドが跳躍し、やって来たのはイヅナが拳神ナガレと戦っていた地。

 そこに残されたのは……ナガレの左腕(、、、、、、)

 勿論、ミケラルドが必要なのは腕ではない、その腕に付着する血液である。


「よし、イヅナさんに百ポイント」


 ナガレの血液をペロリと舐めたミケラルドが次に向かう先は、やはり、オベイルが戦っていた地だった。


「オベイルさんに百ポイント」


 これにより、ミケラルドは大きな手札(カード)を得た。

 そして、それに付随(ふずい)する能力向上。

 立ち上がったミケラルドが皆が戦う場所へと戻る。

 拳をつくり、開き、くすりと笑うミケラルド。


「うん、いい感じ……」


 直後、ミケラルドは、皆に向かってテレフォンで伝える。


「合図したら退避をお願いします」


 ◇◆◇ ◆◇◆


 その少し前、リプトゥア軍の長たるゲオルグ王が騎士ホネスティに詰め寄っていた。


「どういう事だ、事と次第によってはその首、身体に別れを告げる事になるぞ」


 怒気と殺意が交じった強い視線。

 だが、ホネスティは冷ややかな表情でそれを迎えた。


「何も? 我らとの契約を忘れた訳ではありますまい? 『相互に利益がある限り、関係を維持する』。それが我らと貴方で結ばれた契約。リプトゥア国が負けたのならば、これを維持する理由はどこにもない。それだけの事です」

「まだ負けておらぬ」

「はっ、こちらの戦争を見ればそうでしょう。それも時間の問題ですが」


 鼻で笑いながら言ったホネスティを前に、ゲオルグ王の目が血走る。


「どうやらその首いらぬようだな……」


 漂う殺気と重厚な魔力。それを前にしてもホネスティの顔は(いささ)かも揺るがなかった。ゲオルグ王は腰元の剣を引き抜き、ホネスティに向ける。


「これで我らが引く理由は明確になったようです」


 ホネスティの言葉は、まるで言質(げんち)をとったかのような物言いだった。

 ゲオルグ王が斬りかかると同時に、ホネスティが後方へ跳ぶ。


(速い……!)


 それは、ゲオルグ王の知っているホネスティの動きではなかった。


「流石闇ギルドとの連絡役を担うだけはある。我に実力を隠していたか」

「当然です。騎士ホネスティとしての実力であれば、当方では草がせいぜい。それよりよろしいのですか? このような醜態を晒して?」

「……? 何を言っている、我が軍はまだ負けておらん」

「では、あの攻撃をどのように防ぐおつもりで?」


 ホネスティがちらりと見た先には、ミナジリ共和国の元首――ミケラルド・オード・ミナジリがいた。両手を前に突き出したミケラルドが叫ぶ。


「今です!」


 リィたん、ジェイル、オベイル、イヅナがその場から離れ、ホネスティもゲオルグ王から離れる。


「では、ご武運を」


 風のように消えたホネスティ。

 同時に、騎士団を包む巨大な土壁。


「くっ!」


 騎士団を巻き込んだそれは、そのまま後方のリプトゥア軍へ向かい、ゲオルグ王の眼前には、扇状の巨大なトンネルが迫っていた。


「お、おぉおおおおおおおおっ!?」


 リプトゥア全軍を巻き込んだトンネル。

 ミケラルドはトンネルの上を走り、鼻歌を奏でながらリーガル国の国境へと向かった。退避を命じられたオベイルがトンネルの外壁を中指でコツコツと叩く。


「これ、ただの土塊操作だよな?」

「……どれ」


 イヅナが壁に向かって剣を振る。

 丸まった外壁の先端部分を薄く斬ったイヅナ。その感触に目を見開く。


「ほっ! 凄いな、ミスリル並みの硬度だぞ」

「あぁ!? そりゃマジかよ!?」


 言いながらオベイルが鬼剣を振る。

 ずしりと剣がめり込むものの、それが破壊される事はなかったのだ。


「ふむ、つまりこれは……」

「一方通行の強制国外退去、だな」


 イヅナとオベイルがそう結論付けたミケラルドの土塊トンネル。

 中から聞こえるのは、暗闇の恐怖に怯えた騎士団の嘆き。


『誰か出してくれぇえええええ!!』

『隊長! ビクともしません!』

『助けてくれぇっ!!』

『えぇい! 中を照らせ! 出口を探すんだ!』


 その出口は……ミナジリ共和国とリーガル国の国境を越え、遥かリーガル国境とリプトゥア国の国境の先。

 リプトゥア軍がそのトンネルを脱した時、再度ミナジリ共和国に攻め込む気力と武力は皆残していなかった。

 トンネルの出口でゲオルグ王を待っていたのは、ミナジリ共和国の元首。

 ゲオルグ王が睨むも、ミケラルドの笑顔が絶える事はない。


「もう二度と我が国へ来ないで頂きたい」

「……覚えていろ。この借り、いつか必ず返してやる」

「えぇ、利息を付けて返してください。(もっと)も、そんな国力がリプトゥア国に残っていれば……ですけど」

「何っ?」


 ゲオルグ王が聞くが、以降ミケラルドは無言を貫いた。

 その時、ゲオルグ王はホネスティが言った言葉を思い出したのだ。


 ――――それよりよろしいのですか? このような醜態を晒して?


 瞬間、ゲオルグ王が目を見開く。

 馬を叩き、首都リプトゥアに舵をとったのだ。


「皆の者、走れぃ!」


 駆けるゲオルグ王。


(本国で……一体何が起こっているっ!?)


 焦燥露わにするゲオルグ王に、慌てて付いて行く騎士団。

 そんな彼らを、ミケラルドは白いハンカチをひらひらとさせ見送った。

 そう、いつも通り胡散臭(うさんくさ)い笑みを浮かべながら。

次回:「◆その344 渦中」

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